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注:2013年中は更新ありませんでした。申し訳ないですー。
10/15 2012
「再び、あなたの選ぶ短編ベスト3」にご回答いただいた皆様、そして京フェス合宿企画「ラファティ部屋」にご参加いただいた皆様、どうも有難うございました。Twitter、メール、SNS等あわせて55名ものご回答をいただきました。また、Twitterなどで企画の宣伝にご協力いただいた皆様にも感謝いたします。さて、結果といただいたコメントをまとめましたので、上記リンクよりご参照くださいね。
9/1 2012
また1年も放置しておりましたが、久しぶりに企画を立てます。ラファティ関連で素晴らしいニュースが飛び交ったこの夏を個人的にインディアン・サマーならぬラファティアン・サマー、すなわちいずれ名だたるラファティアンたちが神様から勝ち取ってきた計算外の夏、と勝手に命名しました。この9月21日には待望の短篇集「昔には帰れない」が刊行されます。(ハヤカワ・オンライン新刊案内)。「ファン待望の傑作短篇集最新刊!SF界のホラ吹きおじさんの異名を持つ鬼才ラファティの魅力あふれる中短篇15篇を収録」とのことで、SFマガジンなどに載ったっきりの短篇が収録されるものと思います。短編集未収録の邦訳短編リストをみながら、どれが収録されるのか楽しみに予想しております。また、延び延びになっていますが「第四の館」もそろそろ出るものと思います……たぶん。そして思わぬ隠し球、ラファティ後期の集大成的な長篇"Serpent's Egg"が井上央さんの翻訳で青心社から出る予定! 早ければ年内に出るかも、というところだそう。井上央さんのお言葉によれば、「本作はラファティが諸作でこだわってきた様々なテーマを、集大成のごとく一つのコンパクトな長編の中に投げ込んだかのような趣さえあります。『悪魔は死んだ』に代表される旧人類・新人類テーマ、『トマス・モアの大冒険:パーストマスター』のユートピア・終末論テーマ、『イースターワインに到着』の機械知性テーマ、『地球の礁脈』の恐るべき子どもテーマ(ついでに言えば『宇宙舟歌』の船乗りテーマ?)などなど。そのすべてが一堂に会しているだけでなく、それぞれの関係、ラファティ世界全体の中でどんな位置にあるかが俯瞰できるかのような仕上がりです。ただそれだけでなく、私がこの一作に強く惹かれるのは、ダークな面が強調される作品も多い中、本作では明るい詩情が基調になって全体を覆っているからかもしれません」とのこと。これは楽しみですね。あまりに嬉しいので、本作の紹介も兼ねてアンサンブル会誌に「らっぱ亭とおる・ている」シリーズの新作「ラファティアンの夏」を寄稿しました。京フェスくらいに出たらいいなあ。
さて、前置きはさておき、企画です。題して「再び、あなたの選ぶ短編ベスト3」。10年前にSFマガジン8月号(2002)の追悼特集で掲載された作家・翻訳家・評論家による「短編ベスト3」に勝手に連動企画として「あなたの選ぶ短編ベスト3」というものを行ったのですが、再びこれをやってみようと思い立ちました。この10年の間に新たなラファティアンな方々の台頭目覚ましく(たぶん)、「翼の贈りもの」も出たこともあり、ベスト3に変動があるやもしれません。ちなみに前回の結果はこちら。一位は「スロー・チューズデー・ナイト」(7票)、二位は「他人の目」(4票)、三位は3票で7作が並びました。前回はメールで投票いただいたのですが、今回はtwitter、mixi、google+でも受付けます。
〆切は9月30日です。一人三篇まで、一篇につき一律一点で集計します。Twitterではハッシュタグ「#ラファティベスト3」を付けて呟くか、「@RappaTei」に呟いていただければ取得できると思います。コメントを付けていただければより嬉しいです。ちなみに前回のコメントはこちら。なお、複数のツイートにまたがってもOKです。また、DMでもOKですよ。mixiとgoogle+へコメントいただいてもOKです。。前回同様に、直接メールで応募いただいてもOKです。みなさん、たくさんのご応募お待ちしてますよー。
(9/2追記) 先ほどTwitterで告知されましたが、今年の京都SFフェスティバルの本会企画でラファティ企画が予定されており、井上央さん、牧眞司さん、柳下毅一郎さんが登壇されるとのこと。楽しみですねー。詳細は京フェスのサイトで近日公開とのこと。
9/19 2011
いくつかリンクを。ラファティ関連のツイートをまとめたトゥギャッターまとめ「ラファティ関連まとめ」のまとめ。元々は「翼の贈りもの」出版に併せた京フェス2010の合宿企画「ラファティの次に読む100冊」関連のツイートをまとめたものだったのですが、ラファティ関連(あんまり関係ない話題も含めてますが)のツイートをまとめて、いまだ継続中。現在はラファティ関連のまとめ3となっています。京フェス2010の合宿企画「ラファティの次に読む100冊」については、京フェス2010サイトの合宿のページ「ラファティの次に読む100冊を考えよう」から資料(PDF)がDLできます。企画の雰囲気はラファティ関連まとめ1-12あたりで。また、大野万紀さんのレポートでも写真つきで触れられています。続いて、SFセミナー2011合宿では「三十年目のラファティ」が企画され、企画者の牧眞司さんにより配布の資料として豪華ファンジン『長い火曜の夜だった』が作成されました。詳細は表紙イラストも担当された牧みいめさんのブログのこちらを参照。この合宿企画はSFファン交流会のご尽力でustで公開され、参加できなかった私も堪能できました。また、『長い火曜の夜だった』に寄稿いただいた新進気鋭のラファティ研究者アンドリュー・ファーガスンにもツイートで参加してもらい、ラファティ関連まとめ1-8で雰囲気が味わえると思います。
9/18 2011
テクニカルな問題もあり長らく放置しておりましたが、「第四の館」刊行もせまってきましたので、一念発起して再開を試みることにしました。とりあえず、テスト更新してみます。
5/10 2009
その存在は知っていたのですが、現物(正確にはスキャンデータですが)を眼にするのははじめてでした。何かと言えば、10部!限定のラファティ"Serpent's Egg"と"East of Laughter"のレタード・エディションです。牧眞司さんが本棚を整理されていて、ずっと昔に手に入れたのを発掘されたとのこと。 「こんなものを羨ましがってくれる人は、あなたぐらいだと思い...」と、データを送っていただきました。 拙サイトでの紹介を快くご許諾いただきましたので、原書リストに書影をアップしました。
"Serpent's Egg"は初版1010部。260部に"Gray Ghost; A Reminiscence"が収録されています。この260部のうち、10部は革装・サインつきのレタード・エディション、250部は特別装丁・サインつきのナンバード・エディションです。特別装丁といってもカバーは同じで、布張りのスリップケースに入っているだけですが。 10部のレタード・エディションは"private distribution"とあり、一般販売されていなかったものですね。 レタード(lettered)とは、通しナンバーのかわりに通し文字としてアルファベットの一文字が割り当てられており、牧さんの所持されている版ではラファティのサインとともに"D"とあります。(書影ページ参照)なお、 その昔はじめて"lettered edition"という表記を眼にして、手紙付き版って何だろう? と頭を悩ませたのは秘密です。"East of Laughter"も同じく250部はサインつきのナンバード・エディションで、10部がレタード・エディション。 こちらも書影ページに画像をアップしましたが、"G"とあり、ラファティとジーン・ウルフのサインがあります。 これは、限定版には"The Story of Little Briar-Rose, A Scholarly Study"とともにジーン・ウルフによる後書き(Scribbling Giant)が収録されているからです。 いや、目の保養になりますねえ。 私以外にも、全国に何名かは羨ましがる方がおいでそうな。
ついでと言ってはなんですが、先日ポンド安につられて、cold tonnage booksより購入した英国版(Dobson)のラファティ・ハードカバーの書影も併せてアップしました。cold tonnage booksは、奇しくも牧さんがその昔に上記限定版を買われた英国の古書店で、スモール・プレスの限定版とかコレクターが喜びそうなアイテムとかを揃えており、安くはないけどまあ妥当な値付けだとのこと。私もちょくちょく利用していますが、店主のAndy Richardsさん(牧さんはサンフランシスコの世界SF大会で会われたことがあるそうな)から毎月1-2通は新入荷リストのメルマガが届き、値段を見つつ頭を悩ませることもしばしばです。Dobson版Space Chanteyは以前に柳下毅一郎さんに見せていただき、気になっていたもの。なお、Dobson版は柳下さんがはじめて買われたラファティ洋書とのこと。今回はFourth Mansions、The Reefs of Earth、Arrive at Easterwineを入手しました。
柳下さんと言えば、映画評論家緊張日記よりラファティ関連のエントリをひとつ。「アラン・ムーア、ラファティを剽窃する」
もうひとつ、柳下さんと言えばジーン・ウルフ訳者としても高名ですが、先日、Torから出た"The Best of Gene Wolfe: A Definitive Retrospective of His Finest Short Fiction"を入手しました。480ページの分厚いハードカバーですが、紙質がけっこう軽いのは有り難いです。ケルベロスやらデス博士やら、名作31編がてんこもりのお徳用版ですね。 各作品末に短いウルフのコメントつき(これしか読まないかも) 例えば、デス博士では、ネビュラ賞の受賞発表でアシモフが間違って「受賞作はデス博士ー」とアナウンスしてしまった件の顛末とか。で、ウルフはこれで安心と思いきや。 なんとPS Publishingより32編収録の"The Very Best of Gene Wolfe"が今年の中頃に出るそうな。Tor版より一編多いのはわざとかなあ。収録作はかなりかぶっているようですが。 こちらの記事でも、「Tor版とどこが違うんだろう? おそらく限定版で高価ってことと、Kim Stanley Robinsonの序文がついて、JK Potterの装画がつくことかなあ」ってありますね。限定300部で50ポンド($75)は高いなあ。この作品集のみに収録のノヴェレット"Christmas Inn"が売りのようです。 私は、やっぱり買ってしまうんでしょうか。
2/1 2009
"文学少女"と寡作な科幻名匠(SFマイスター)
こんな遠子先輩を見た。
いつものように部室の椅子に体育座りをして、青い背表紙の文庫本を読んでいる。
大好きな本を読んでいるはずなのに、なんか様子が変だ。
きゅっと眉をひそめてみたり、細い首をひねってみたり。
やがて、ぼくに気がつくと、にっこりと顔をほころばせた。
「ああ、心葉くん。ずうーっと、待ってたのよ」
少し、どぎまぎする。
「どうしたんです。おなかが空いておやつを待ちきれないんですか」
わきおこりかけたおかしな感情に気づかないふりをして、ぼくはわざとぶっきらぼうに応えた。
「心葉くんって、理数系が得意だったわよね」
なんだ、数学か物理の問題でも教えてもらいたかったのか。
しかし、遠子先輩は読んでいた本のあるページを開け、続けた。
「変分原理って、何かしら」
開いた本には、水面に入射する光の模式図らしきものが描いてあった。
え? まさか理数系壊滅の遠子先輩が、いまさら理系の入門書でも読んでいるのだろうか?
でも、ハヤカワの青背みたいに見えたのだけれど。
「"あなたの人生の物語"というお話を読んでいるの。変分原理がアイディアの中核となっているのよ」
やっぱりハヤカワSFか。いくらなんでも遠子先輩に理系のハードSFは無理だと思う。
でも、変分原理をもとに小説を書くなんてっ! SFをよくは知らないけれど、ガチガチの理系作家が書いたのかな。
「変分原理というのは、一言でいえばある物理量の積分値が理論的に最も小さな値をとるような現象が、実際に運動として観察されることです。最も知られているのは光が水面に入射するときに、屈折した光は必ず最短の距離をとるというフェルマーの原理です」
「すうすう」
早っ! ぼくの説明の「積分値」あたりで挫折したようだ。
「あら、ごめんなさい。心葉くんの説明って、ちょっと難しすぎるわよ」
「まだ説明に入るとことまで至っていませんが。だいたい、何でそんな理解できそうもないSFを読んでいるんですか」
「あら、違うのよ。これは単なるアイディア・ストーリーじゃなくって、現代SF文学の最高峰なのよ。"文学少女"としてはけっして見過ごしにはできないわ。
テッド・チャンは1967年に生まれた中国系アメリカ人のSF作家よ。1990年にデビューして以来たった10編あまりの中短編しか発表していないのだけれど、そのほとんどが数々のSF賞を受賞したり年刊傑作選に選ばれたりしている高水準の作品ばかりなの。
チャンの作品はいずれも最高のSFであり最高の文学でもあって、不可分なの。奇想ともいえるSF的アイディアをもとに緻密でロジカルに作品世界を構築していく、あたかも超一流のパティシエが思いもかけない材料から唯一無二の美味の結晶を創り出すようなもの。
一見伝統的なプティ・フールと思わせておいて、中に潜ませてあるのはあっさりと舌先でとろける風味深い和三盆と丹波大納言をあわせた粒あんと、ねっとりと舌にまとわりつく胡桃と干果実を練り込んだ中華餡。土台となるさっくりとした焼き菓子が口の中でほろほろとくずれるのを、フランス直輸入の濃厚な生クリームのホイップとマロンクリームがまとめ上げて小宇宙(ミクロコスモス)を形成しているの。天才の発想を達人の技を併せ持ってのみ完成する小さな芸術作品っ!
でも、でもね。心葉くん。ときどき、なんとかの原理とか数式とかが出てくると、くらくらとしてしまうのよ」
そういえば、"文学少女"に数学の教科書を食べさせたらどうなるんだろう。そうだ、こんど「おやつ」にこっそり数式を潜ませてみよう。
「"あなたの人生の物語"の主人公ルイーズは女性の言語学者なの。ヘプタポッドという異星人とコミュニケーションをとるためかれらの言語を学んでいく過程で、ルイーズはまったく人類と異なった世界観を身につけてしまう。
作中ではルイーズが未来形で娘に語りかける部分が挿入されているのに、その内容はすでに起こってしまった過去の体験のようなの。それは、因果律によって人生を線形に認識する人類に対し、変分原理によって人生の全体を俯瞰するヘプタポッドの世界観がルイーズに影響を与えたから。過去と未来の記憶が一望されるため、自分と自分の人生に含まれる娘の人生をすべて知ってしまい、来るべき喜びと悲しみをすべて"ある"ものとして受けとることになったルイーズにとって、それでも娘に対する愛情のありかたは不変であるということが大きな感動を生み出すの。
これは言語による世界認識の変容という奇想溢れるSF的アイディアに、愛の不変という文学的テーマを見事に重ね合わせた第一級のSF文学よ」
なるほど。"文学少女"は苦手な理数系のパーツをあくまでも「文学的」に理解することによって、SF文学をも読みこなしているのか。
「えへん。わたしは文学のためならルイーズのようにあらゆる言語を習得できる"文学少女"だから、先日出たばっかりの新作"Exhalation"も原書で読んだのよ。これがまた、新作を待望する世界中のファンの期待を裏切らない傑作なのっ!
異世界を舞台としたたった15ページの短編なのだけれど、最高級の食材をことことと三日三晩煮詰めて世界中から集め厳選したスパイスで調味した見事な黄金色のコンソメ・スープのように、奇想と科学がロジカルに融合した緻密な世界構築、メタファーとユーモラスなカリカチュア、そして旧き良きSFへのオマージュと、チャンのすべての要素がぎゅっと詰まっているの。そして読み終えたときには震えるような哀切の念とともに、「いのち」というものについての大きな感動が湧き起こってくるの。
アルゴンの大気が満ちた何処ともしれない世界で暮らす金属人たち。素朴でおおらかな彼らは、定期的に圧縮空気を満たした金属の肺を交換することにより生命を保っている。金属人たちの生活の描写は、まるで手塚治虫の描いた未来のロボット社会に出てくるキャラたちみたいになんとも可愛らしいのっ! 主人公は解剖学者で、何とか自分たちの生命活動の謎を解き明かそうととんでもない実験に着手するの。そして、平和な世界におとずれる未曾有の大危機に気がついてしまう...。これは、まぎれもないSF文学、SFでしかなし得ない文学作品なの。また次の作品が読めるまで何年も待たされそうだけれど、待つ価値は十分にあると思うわ」
「待っている間に物理と数学を勉強したら、もっと楽しめると思いますよ」
「ううん、心葉くんの意地悪っ」
「そうそう、さっきの続きですが、まずラグランジュの運動方程式から説明しますね。一般化座標をqとして...」
「あうう、ゲシュタルトがわたしを呼んでいるう。心葉くん、続きはまた今度ね」
遠子先輩は、「理解」できないことを口走ると、逃げるように部室を出ていった。
11/15 2008
10/17 2008
先週末は京都SFファスティバル2008(京フェス)に参加。都合により合宿のみとなりました。本会では、ディッシュ追悼企画で「歌の翼に」復刊(国書刊行会から)のアナウンスがあったとのこと。柳下毅一郎さんのブログ参照。大好きな作品ですが、当時は「ゲイ小説」とな思いもしなかったなあ。
企画1は細井威男さんの「海外SF情報収集法概説」。 プレゼンはパワーポイント60枚近い労作。(リンク先からファイルは入手可)。英語圏SF読み必読のLocusを買ってるひとは挙手! って購読してないことがばれてしまった。オンライン・リファレンスは正確性に欠ける、とのご意見は重要。たしかに、Wikiをはじめとして、海外のラファティ・リファレンスは間違いと抜けがいっぱいだ。Locus onlineのもけっこう抜けがあるし。紙リファが大事とのことで、円高でもありホテルに戻って早速おすすめの本を何冊か注文しました。それから、「リスト者」が育たない、という話。これは、リストの作成自体を楽しめるタイプじゃないと無理だろうなあ。一次資料にこだわると金も手間もかかるし。いずれ、SFセミナーあたりで牧眞司さんの企画がたつかも。あと、ジョン・クルートは読みにくいとのこと。やっぱり、そうだったのか。
企画2は「SF翻訳講座ライブ版」。大森望さんと創元の小浜徹也さんによるおなじみ企画。京大SF研のお二方が血祭りに(笑)。 いや、けっこう頑張って訳してると思いましたが、よりによってスラデックなんか選ぶから...。感想としては、やっぱり、大森さんは実践的だなあ、と思いました。 あと、小浜さんによる「結局は国語なんだよ」のご意見がすべてかなあ。
企画3は「ぶっとび海外奇想短編に酔う」。牧眞司さんと大森望さんによる、今回のお目当て企画です。勝手に協賛として、拙訳のラファティ「この予兆たる掻痒」を配らせていただきました。(企画2で出してたら、返す刀で血祭りになってたような)。企画がはじまる前に大森さんと柳下さんにお渡しして、「限定1000部の短篇集にのみ収録のレア作です」と言うと、おふたりとも「もってるよ」。
企画前に、牧さんと京大SF研の架空アンソロジー特集の話題で盛り上がる。ラファティを選ぶやつがこんなにいるんだねって、しきりに感心されてました。 なお、企画終了後に買いに行くも、売り切れで入手できず。牧さん効果かしら。魚さんによれば、増刷後に通販があるかもとのことですので、ご興味ある方は京大SF研の通販ページをチェック!
おすすめ奇想短編として、牧さんは「プロパーSF限定・印象度重視」の10作を。ディッシュ、ラファティ、ライバー、スタージョンなど。 大森さんはミルハウザーにマコーマック、ボルヘスって、ぱっと見は上記のしばりを外した牧さんのセレクションみたいだけど、イーリイ「タイムアウト」が入っているところが、らしいかな、と。「スカット・フォーカスと魔性のマライア」は柳下さんが激賞されていました。
9/17 2008
Lafferty Devotional Pageの掲示板に、 Luluのサイトで"More than Melchisedech"通販終了しているよ、との書き込みが。 みてみると、"not available"となっています。
もう販売終了ですか。 初版より売れた部数が少ないんじゃないでしょうか。 保存用にもう一冊買っておけばよかったかな。
すっかりチェス・プロブレムのサイトとなっていた若島正さんのHPですが、「ほんわかを夢見て」と題する読書日記のコンテンツがはじまっていました。アドレスに"mumblings"とあるように、「日記代わりに、つぶやきを」だそう。 なお、「過去ログは残さずにどんどん消していく予定」とのことです。 今回は清水正二郎によるハリエット・ダイムラーの『淫蕩な組織』の話題など。
超絶の虎。魚蹴さんによる、このエントリから。紹介が上手いですね、魚蹴さんに座布団一枚!
9/3 2008
職場の移転に伴いサーバーが消失しましたので、急遽生協のサーバーに移植しました。容量制限のため、とりあえずテキスト・コンテンツのみとなっております。画像ファイルはシェイプ・アップして順次アップしていく予定です。
コーニイのパラークシ連作ボックスセットを買ってしまいました。スリップケース入りのハードカバー2冊組、200セット限定で、ナンバー入り。序文執筆者とイラストレーター(Edward Miller)のサイン入り。 Amazon.co.jpで税込み11,604円でした。高いなあ。分冊では、サインなしの各500部限定だそうですが、バラで買っても安くはないです。PDFで読んでしまっているというのに、物好きなことですね(←自虐)。
"Hello Summer, Goodbye"は本文192ページで、ブライアン・W・オールディスの序文付き。2ページ足らずで、内容はコーニイの生涯をさっと紹介し、80年代の終わりにカナダのコーニイを訪ねたときの思い出など。
"I Remember Pallahaxi"は本文260ページで、5ページにわたるエリック・ブラウンの序文付き。また、本作がネット公開されていたときのコーニイのコメント(たぶん)も再録されています。ブラウンはコーニイと直接会ったことはなく、コーニイ作品との出会いからファンになったいきさつ、および主たる作品の紹介に次いで、メールを介したコーニイとの合作(遺作となった"The Trees of Terpsichore Three, 2002")の経験を通してのコーニイの創作技法についての考察があり、最後にパラークシ連作の解説が置かれています。
ブラウンによれば、コーニイをよりよく味わうには、再読が望まれるとのこと。たしかに、巧みな伏線の張り方とその回収、初読時の読者を混乱させる(helter-skelter!)説明なく出てくる様々なことがらがぴったりと填り込んでいく快感は、再読してこそ「コーニイ、うまいなあ」と唸ることができるのですね。いや、是非とも"I Remember Pallahaxi"の再読は山岸さん訳の「パラークシの記憶」でしてみたいものです。
という内容でmixiに書いていたのですが、その後朗報が。"I Remember Pallahaxi"、めでたく来年の秋くらいに刊行予定とのことです。山岸真さん訳で、河出文庫からとのこと。
7/23 2008
"文学少女"と粘流乗り(グルームライダー)の夏
マイクル・コーニイはイングランド生まれのSF作家で、40歳のときにカナダに移住し、森林局に勤務しながら20作以上の長編と数々の短編を書いたの。
コーニイの作品は英国作家らしく小説としての組み立てがとてもしっかりとしていて、練り込まれたストーリー展開に深みのあるキャラクター造形、数々のSF的アイディアと趣味のアウトドア・ライフが活かされた自然の描写、甘い恋愛的要素と人生に対するシニカルな洞察が解け合って、SFを読み慣れていないひとでも楽しめるのに、すれっからしのSF者にもファンが多いという希有な作家なの。
先日新訳が刊行された「ハローサマー、グッドバイ」は著者もお気に入りの青春恋愛SFで、この夏必読の一冊よ。
茶色の瞳とえくぼの素敵なブラウンアイズの可愛さったら!
そして、世界中のたくさんのファンの強い要望から、後年になって続編「パラークシの記憶」が書かれたの。
残念ながらコーニイは最近に亡くなってしまったけれど、「ハローサマー、グッドバイ」は夏SFの定番として、また青春恋愛SFの最高峰として、これからもずっと読み継がれていくのは間違いないことよっ。
つるつると喉ごし爽やかな素麺のおつゆのなかに、甘酸っぱい柑橘系の絞り汁と微かに苦みのあるハーブが忍ばせてあって、さらに不思議な隠し味となる氷魔(アイスデビル)が出汁に潜んでいるの。病みつきになるコーニイ風味には、リピーターが続出よっ。
えへん。わたしは原書もばりばりの"文学少女"だから、ちゃんと続編も読んでるわ。
舞台は数十世代後の世界で、ブラウンアイズは遠い昔の伝説となっているの。
でも安心して、心葉くん。やっぱり茶色の瞳とえくぼの素敵なチャームがヒロインとして登場するのよ。
偉いお父さんに連れられて海辺の町ノスにやってきた語り手のハーディ君は17歳。
しょっぱなからダメっぷりを発揮して溺れかけていたところを助けたのがチャームだったの。
ところが、チャームのお母さんはノスの女族長で、惹かれあうふたりはまるでロメオとジュリエットのように祝福されない立場なの。
そして、ハーディは殺人事件に巻き込まれ、謎を解こうとするうちに自らも命を狙われる。
若さゆえにいろいろと突っ走っては、チャームや、お母さんのスプリングに助けられるハーディ。
やっぱり、男の子っていつの時代、どこの世界でも同じね。心葉くんも、わたしやななせちゃんがいなかったら、すぐにマザコンやロリコンややおいの世界に引っ張り込まれてしまうんだから。
ともかくも、前作に引き続いての青春恋愛SFにミステリ風味がたっぷりと加わって、ますますリーダビリティが高く、翻訳が待ちこがれる一品なのよっ。
さて、いよいよ本編の最終となる「文学少女と神に臨む作家」が8月末に発売となる野村美月の"文学少女"シリーズですが、FB onlineで連載中の番外編「"文学少女"の秘密の本棚」第二話「"文学少女"と扉のこちらの姫」では夏SFの定番ハインラインの「夏への扉」がモチーフとなっており、ブラッドベリにも言及がありますので、SF者はお見逃しなく。
話を戻して、コーニイの「ハローサマー、グッドバイ」の続編、"I Remember Pallahaxi"です。
ハロサマ読了の昂奮醒めやらぬまま、一気に読んでしまいました。しかし、これはじつに紹介するのが難しい。ハロサマのネタバレは必定としても、ハロサマ読了後に残る数々の謎が見事に解き明かされていく展開は、(必ずや続編が刊行されると信じる者としては)、できるだけ事前情報なしで読んでいただきたいと思うのです。
なお、ハロサマのラストがよくわからなかった方は、魚さんのこのエントリを。
まあ、せっかくですので、少しだけ。
まずは、前作同様に青春恋愛SFで、バカップル度も10倍増し(笑)
また、フーダニット・ホワイダニット・解決編のすべてがSF設定と密接に関連した、良質なSFミステリ。
これは、数十世代後の物語。
ドローブとブラウンアイズは遠い昔の伝説で、極寒の地獄からみんなを救ったという。
いまは廃墟となったパラークシは、巡礼者が絶え間なく訪れる聖地だ。
この時代、人々は狩猟や漁業、原始的な農業で糧を得ている。前作で栄えていたテクノロジーは絶え果て、族長の自動車がほぼ唯一の文明の残滓だ。
そして、ふたたび訪れる、40年間のラックスが支配する冬。
果たして、人々はまた生き延びることができるのか?
前作ファンが気になることとして、
あのあと、ドローヴとブラウンアイズがどうなったのか?
そして、フェンスの中と外の人々の運命は?
なぜ、人々は寒さを極端に恐れるのか?
ロリンの正体は? どうして親切なのか?
すべてが、明らかとなります。
ハロサマ執筆時には続編は考えていなかったとはコーニイの言ですが、とてもそうとは思えない、ある意味完璧な続編です。
コーニイが主人公たちを「ヒューマノイド」と設定した意味も明らかにされ、そしてまた、コーニイの別シリーズ"The Song of Earth"シリーズとも繋がっていきます。
ほら、読みたくなってきたでしょう。
みなさん、是非とも新訳ハロサマを買って、「パラークシの記憶」刊行を実現させましょう!
7/8 2008
さいのさんの「話さないと伝わらない日記」より、三省堂SFフォーラム R・A・ラファティ『宇宙舟歌』(国書刊行会)刊行記念 浅倉久志x柳下毅一郎トークショー「ラファティの魅力を語る」レポート。いや、これは大変な労作です。特に私のような地方在住者にとっては有り難いもの。2005年11月10日に大森望さんの司会により行われたものです。シャイな浅倉さん萌え続出(笑)の伝説のトークショー・レポをどうぞ。
もうネット上では情報が飛び交っておりますが、トマス・M・ディッシュが7月4日に亡くなったとのこと。エレン・ダトロウによる追悼文(抄訳)をご紹介します。
トム・ディッシュが7月4日にアパートで自殺した。
突然のことで、ショックだったが、驚きはしなかった。
ここ何年か、トムは鬱いでいた。特に長年のパートナーだったチャールズ・ネイラーを亡くしてからは。
また、40年も過ごしたアパートから追い立てをくらい、悩んでいた。
最後にトムを訪ねたのは、一月くらい前のことだ。
近くのマーケットでたまたま出くわして(トムは足を悪くしており、出歩くのはまれなことだった)、一緒にパンとチーズを買ってアパートに少しだけおじゃました。
トムは少なくとも、去年よりは仕事については楽観的だった。今後1年の内に、三冊の本が出る予定だったのだ。
トムは素晴らしい小説家だ。
(実は長編は1,2冊しか読んだことがないのだが、いつももっと読もうと思ってはいるのだ)
もし、短篇集"Getting into Death"、"Fundamental Disch"を読んだことがないのなら、探して読むべきだ。
トム。あなたは辛辣で、ときに意地悪で気難しいひとだったけれど。
あなたがいなくなると、寂しい。
残念なことです。今夜はエレン・ダトロウのお勧めに従って、"Getting into Death"を読みながら喪に服します。
Thornさんによる追悼記事はいろいろと考えさせられることがありますので、是非ともお読みください。
7/2 2008
まさかの品切れ状態が続いていた「九百人のお祖母さん」ですが、今年夏の早川書房「SF&ファンタジイ・フェア」でめでたく復刊となるそうです。くわしくはcocoさんのサイトから、SF&ファンタジイ・フェア 2008を。おなじみの早川さんたち5人による紹介で、各々5作品で計30作品がフェア対象となっており、「九百人のお祖母さん」は国生さんのおすすめ作品となっています。(ちなみに、あと4冊はイーガン「祈りの海」、チャン「あなたの人生の物語」、カルヴィーノ「レ・コスミコミケ」、スターリング「タクラマカン」)
Catalyさんが、『科幻世界』日本SF特集号の紹介をされていました。
そこで、ラファティも翻訳されている、との記載があり、リストをあたってみますと 「我?那条街」(In Our Block) R?A?拉夫蒂 「うちの町内」ですね。
わりととっつきやすいけどラファティ色がよく出ていて、ラファティ紹介にはいい選択と思います。 私がラファティにはまるきっかけとなった一編でもあるのですが、 「してくれるのことよ、マイフレンド」などと、女性キャラの怪しげな言葉遣いなども楽しい浅倉さんの翻訳も魅力となっていました。中国語訳ではどんなになっているのか興味深いです。ちなみに、中国アマゾンで「拉夫蒂」で検索をかけても出てきません。長編や短篇集は未訳なのでしょうか。「拉夫蒂」でぐぐってみても、"Eurema’s Dam"を紹介した文章が引っかかってくるくらい。ラファティの奇天烈さは、中国でもけっこう受けそうな気がするのですが。
前回紹介しました、「ゑいじうはSFでいっぱい」ですが、YOUCHANさんのサイトで詳細がアップされています。各画像および解説テキスト付き。どろぼう熊の惑星はこちら。
長らくサンリオ版が入手困難な名作として名高かったマイクル・コーニイ「ハローサマー、グッドバイ」が7/5発売とのことで、「売れれば未訳の続篇が出る可能性がある」と。これは是非とも売れて欲しいもの。
さて、未訳の続編"I Remember Pallahaxi"は生前には刊行されず、癌で死期が近いことを悟ったコーニイが自身のHPでpdf公開していました。死後、PS Publishingより刊行され、"Hello Summer, Goodbye"も併せて再発となり、pdf公開は中止されましたが、長編2作(唯一のミステリとSF)、短編5作は引き続き無料公開中です。
(以下は2005/7/12の拙サイト更新履歴より再録。ちょっと手直しあり)
コーニイのコメントによると、"ハローサマー・グッドバイ"はいろんな言語に翻訳され、長年にわたって驚くべき量のファンレターが届いているとのこと。また、British Science Fiction Associationでは70年代のベストに選ばれているそうな。(ちなみに1976年度のベストノベルは"ブロントメク!")
コーニイは当初は続編を書く予定はなかった(主人公たちについて、書くべきことは書き尽くしたつもりだったから)が、ファンレターには続編の要望が強く(これはわかる気がするなあ)、かなり年数が経ってから執筆したとのこと。じゃあ、なんで出版されなかったのか? それは、執筆活動を止めてからかなり時間が経っており、もはやコーニイの作品を出そうとする出版社がなかったこと、また、すでに自分の作品はメインストリームから外れてしまったんじゃないかってことを理由として挙げています。実際、"ハローサマー・グッドバイ"ですら、再版されなかったそうです。だから、サイトで無償のダウンロードに踏み切ったんでしょうか。
"ハローサマー・グッドバイ"も、"ブロントメク!"も読み継がれてよい秀作と思いますので是非とも日本での復刊を期待し、そこから続編の翻訳出版という流れができればなあ、と夢想する次第です。
ちなみに、冒頭の数ページをざっと眺めてみますと、"ハローサマー・グッドバイ"の主人公カップルはいまや遠い昔の伝説となっています。そこでは、まれに顕れる茶褐色の眼が賛美される特質となっており、おそらくは伝説のブラウンアイズを想起させるからだろう、とのこと。ブラウンアイズ萌えの方には残念ですが、いや、まだ先を読んでみないことにはわかりませんぞ。レッツ・トライ!(←いつもながら、無責任だなあ)
(再録はここまで)
というわけで、今回待望の再刊(しかも山岸真さんの新訳!)に感無量です。ああ、無理して"I Remember Pallahaxi"を読まなくてよかった...と言えるよう、是非とも「ハローサマー、グッドバイ」には売れてもらいたいものです。 サンリオ版を持っているかたも、是非買いましょう。 たとえ、片山若子さんによる表紙のブラウンアイズ目当てでも(笑)
ちなみに"Hello Summer, Goodbye"はタイトルが異なるアメリカ版"RAX"とカナダ版"Pallahaxi Tide"があります。続編と勘違いして、"Pallahaxi Tide"を買わないようにご注意下さい。
さて、ブラウンアイズ萌えのかたは、"I Remember Pallahaxi"に果たして再登場はあるのか、というところが気になるでしょう。私もついつい、pdfを全文サーチしてしまいました。その結果は...。
山岸さんによる続編の刊行を期待して、今回は秘密としておきましょう。
6/14 2008
TRPGデザイナーの朱鷺田祐介さんのサイト「黒い森の祠」で、「ラファティの酒」というエントリがアップされました。
縁あってラファティ作品に出てくる酒のレシピを幾つか教えてさしあげたのですが、なんと実際に再現されたとのこと。短編Mr. Hamadryadにでてくる"Stony Giant"というカクテルなのですが、レシピはこちらを。ああ、味わってみたいなあ。
先月、東京で「ゑいじうはSFでいっぱい」というSFをテーマとした個展があったようです。YOUCHANさんというイラストレーターのかたの作品ですが、転載させていただくと、スローターハウス5,ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを, タイムクエイク(ヴォネガット), 一角獣・多角獣(スタージョン), ジョナサンと宇宙クジラ(ヤング), アンドロイドは電気羊の夢を見るか(ディック), アイランド博士の死(ウルフ), どろぼう熊の惑星(ラファティ), 犬は勘定に入れません(ウィリス), マイナス・ゼロ(広瀬正), アインシュタイン交点(ディレイニー), 夏への扉(ハインライン), ドレイクの方程式に新しい光を(マクラウド), グラックの卵(ジェイコブズ), そして赤い薔薇一輪を忘れずに(デイヴィッドスン)。
ラインナップが、けっこう私のツボにはまりました。デイヴィッドスンが「そして赤い薔薇一輪を忘れずに」であることとか。サイトやmixiで一部閲覧できますが、「どろぼう熊の惑星」は是非とも大きなサイズでみてみたいものです。
5/12 2008
"文学少女"と虫喰いだらけの魔術師(マジシャン)
「ラファティの『草の日々、藁の日々』は、チョック・ビールで酔いろれるような味わいらわね」
呂律の回っていない遠子先輩の声に、ぼくはぎょっとして見返した。
「ああ、なんて素敵な酩酊感。がしがしと犬の肩肉を囓りながら、くぴくぴと喉元を流れ落ちる酵母とトウモロコシの芳香に身を任せるのは、草の日ならではお楽しみなの。ペカンとヒッコリーの木の灰をまぶした羚羊の焼き肉みたいに、鼻の奥をきりりと突き刺すような野趣溢れる風味と、血腥く身体を火照らす力に満ちた味わい。さすがは先祖返りのごとく現世に蘇った太古の語り部、ラファティの代表作ねっ!」
まさか、酔っぱらっているのか。だいたい、本しか食べられない妖怪のくせに、アルコールを受け付けるんだろうか。
「レイフェル=アロイシャス=ラファティは1914年生まれのアメリカの作家よ。アメリカ南部のとてつもないトールテールの伝統と、アイルランド移民の血に脈々と伝わる幻想性が、いつも酔っぱらってる冴えない太っちょのお爺さんのなかのどこかで絶妙にブレンドされ、ワン・アンド・オンリーの奇天烈なお話を続々と生み出したの。それらは一見ありそうで、一口啜ってみるとたちまち別世界にぶっ飛ばされるような味わいを秘めたカクテルみたいに、わたしたちを強烈な酔っぱらわせてくれるのよ。ひっく」
遠子先輩のほっぺたはほんのりと桜色に染まって、微かに潤んだ目の焦点もなんかぼやけてみえる。
「本当にアルコールを飲んでるわけじゃないんですね。いくら妖怪といっても社会的には未成年の女子高生なんですから、酔っぱらったら洒落ではすみませんよ」
「えへん。わたしはチャールズ・ブコウスキーの『酔いどれ紀行』も、中島らもの『今夜、すべてのバーで』も読んだ"文学少女"よ。お酒を飲んだことはなくっても、酒飲みの心地は完全にシミュレーションできるのよっ」
「いや、それみんな、酒飲みどころじゃなくってアル中の域に達していますから」
「ひっく」
長らくのご無沙汰でした。ラノベ・パスティーシュ・サイトとして再出発の「とりあえず、ラファティ」です。
......嘘です。
何度か更新をしようと書きためてはいたのですが、一年以上も放置していたので何がなにやら。とりあえず、ラファティ関係の話題から。
まずは、"More than Melchisedech"再販情報です。今やオンライン古書店でも幻の"More than Melchisedech"がまさかのオンデマンド再版とのこと。これはラファティの「悪魔は死んだ」三部作完結編で、1992年、U.M. pressより刊行されたもの。刊行時はTales of Chicago, Tales of Midnight, Argoの三分冊でした。三冊揃いを最後にネットでみかけたのは一昨年の5月で、価格はなんと$950!
バラ売りでも、たまにTales of Chicagoを見かけるくらいでしたが、R.A. Lafferty Devotional Forumで、"More Than Melchisedech available"とのトピックがたっていまして、Luluから全一巻・$26.1(hardcover), $15.63(paperback)で販売中とのこと。
早速、注文してみました。届いたのは555ページの分厚いペーパーバック。内容をざっと確認すると、元版の三分冊(Tales of Chicago, Tales of Midnight, Argo)を合本にしたもの。収録されているのは本文テキストのみであり、序文や挿画は除かれています。また、初版限定版付録のAnamnesisも残念ながら未収録。なお、なぜかArgo元版の前半部がTales of Midnightのパートに収録されており、Argoのパートがかなり短くなっています。
長らく幻となっていたMore than Melchisedech待望の再刊であり、三部作第一作のArchipelagoと第二作The devil is dead(悪魔は死んだ)はオンライン古書店でいつでも入手可能(と書いて検索してみると、Archipelagoは12854円〜87750円! なんだこの高騰は!)なので、これでやっと(少し手間と金はかかりますが)読みたいときに読めるようになったわけです。(いや、私は元版のMore than Melchisedech+AnamnesisもArchipelagoも所持してはいますが、まったく読んでないので、とやかく言う資格なしですね)
メルキセデクよりも、また。
さて、皆さんはご存じであろうか? この世界が兎角グラグラしながらも、うまく均衡を保っているのは如何なる技によるものかを。それは、ごく少数の桁外れに特別誂えの人びとが、その並外れた働きをもって為しているに他ならぬということを。かの人たちは魔術師或いは魔法遣い若しくは魔術博士などと呼ばれており、本篇はその日常を綴ったものである。
男の名はメルキセデク・ダフィと云う。魔術師たる者としての例に漏れず、ダフィもまた数多の魔術の帳を纏って颯爽と登場した。そしてこれもまた魔術師たる者としての例に漏れず、何れその大方を失くして仕舞った。その度に代償として受け取ってきたのは、ごく細やかなもの、若しくは取るに足らぬようなものばかり。
「おれが手放した飛っ切りのものの替わりが、なんでこんなガラクタなんだ!」とある魔術師が不満を口にしたことがある。
「おまえがホンモノの魔術師だったら、わかるはずだよ」より高位の魔術師が言った。
「それに、おれの人生はのべつ幕無しに暗殺の恐怖に晒され、数々の生命の危機に脅かされ続けてきたんだ」その魔術師は続けた。
「おまえがホンモノの魔術師だったら、そんな些細なことに悩まされる筈はないんだがなあ」高位の魔術師は言った。
ホンモノの魔術師たるメルキセデク・ダフィは『黄金の手』を所持していた。双手をぱちんと打ち鳴らすと、忽ち黄金の彫像や延べ棒や金貨が現れた。ダフィはまた他人の心中へつるりと入り込めた。気心の知れた相手であれば言う迄もなく、壊滅的に反りが合わぬ相手の心にも易々と出入りできたのだ。さらにダフィはごく限られた範囲とはいえ時間をも支配し、時の潮流を自在に行きつ戻りつしていた。目には視えぬ巨人の使役もまた、ダフィの能力のひとつである。
More than Melchisedech冒頭のくだりです。古沢嘉通さんのアイディアを拝借して森見登美彦風ラファティ訳を試みてみましたが、なかなか難しいですね。やたら漢語を増やせばいいってもんじゃないか。オモチロイけど、これをあと555ページ続けるのは辛いかな。
そういえば、久々にラファティ短編が訳されました。ミステリマガジン6月号のバカミス特集で、プロンジーニ&マルツバーグやファーマーとともに、「廃品置き場の裏面史」が載っています。小山正による特集解説によれば「バカ」の意味合いは
extravagant!, offbeat!, wonderful!, marvelous!, fantastic!, cool! とのこと。とすれば、ラファティらしいextravagantでoffbeatな本作を「バカミス」と認定するのに異存はないですね。
「廃品置き場の裏面史」は原題"Junkyard Thoughts"。Isaac Asimov's SF magazine, Feb/86'初出で、短編集"Mischief Malicious"に再録されたもの。初出時には、このようなキャプションが添えられていました。
ラファティ氏は語る。
作家たるものはみんな、おかしな風貌であるべき。そしてすべての物語は愉快であるべき。ここ四半世紀にわたって、わたしは忠実にこの信条を守ってきたんだ。この世の中の邪悪なるものは、ほとんどがハンサムな作家の気取った作品から生じているのだからね。だけど、時々読者はわたしの作品がまったく愉快じゃないって文句をつけてくるんだ。「待てよ、待ってくれよ」私は読者に言う。「あんたは本を上下逆さまに持ってるじゃないか。さあ、もう一度試してくれ」そう、正しく持って読みさえすれば、わたしの作品は愉快なはずなんだ。この警告は特に本作を読むときにもあてはまる。まずは上下逆さまになっていないかどうか、注意することだね。さもないと、まったく訳がわからなくなってしまうだろう。
いやはや。
さあ、みなさんも一通り読み終わったら、上下逆さまにしてもう一度試してみましょう。
前回の更新で途中まで紹介した、「シンドバッド13回目の航海」ですが、再びはじめから。
シンドバッド13回目の航海
「宇宙舟歌」ではオデッセイアを下敷きに縦横無尽のほら話を展開させたラファティだが、本編ではアラビアン・ナイトの世界を舞台にラファティ節が炸裂する。主な舞台はアラビアン・ナイトの時代のバグダッド。船乗りシンドバッドの正体はケンタウロン・ミクロンのスパイで、現代のシカゴから拉致されてきたのは語り部のシェヘラザードだ。おなじみのカミロイやアストローブから派遣されたスパイたち、終始悪ふざけを繰り返す七つの命を持った先代のカリフ・ハールーン・アッラシード、巨大化して皆既日蝕をおこすロック鳥、変幻自在のイフリートをはじめとする魔物たち、「どこでも航時機」で現代のシカゴから潜入した偽シンドバッドとその機械妻、地球の中心部に封じ込められた悪魔たちと門番のドラゴンたち。カリフの後継者争いの背後にある悪魔どもの陰謀を阻止せんとするシンドバッドと仲間たちに、賑やかなラファティ・キャラが絡んで織りなすのは、豪華絢爛なアラビアン・ナイトの一大絵巻。
こうやって煽っておくと、どこか出版に乗ってこないかしら。
いや、でもこれはいかにもラファティらしい作品だ。サンリオから出てた長編で挫折した方も、けっこう楽しめると思いますよ。
物語は、例によって登場人物たちの自己紹介(あまり紹介になっていないが)ではじまる。みんなが「わたしの主な任務は失敗に終わり、究極の邪悪なるものを地球とその他の居住惑星すべてに解き放ってしまった云々」で語りはじめる。そう、これはカミロイ、ダハエ、アストローブなどおなじみの居住惑星シリーズに属する長編(て言うか、長めの中編かな。全158ページ)だ。伝説のカリフたるハールーン・アッラシード (アラビアンナイトの主人公のひとりですね)の跡を継いだ息子のカリフ・マームーン。中世アラビア時代のボトル(中には何かいきものが封じ込められている)コレクターで知られるシェヘラザード。地球では船乗りシンドバッドとして知られるケンタウロン・ミクロンのエシンドバッド・カパーボトム。そして、シンドバッドの座をエシンドバッドから乗っ取ったらしいシカゴの高校生ジョン・スカラッティ・サンダースン。
ほかの作品ではあまり語られることのなかったケンタウロン・ミクロンだが、ひとことで言えば、快適な世界”World of the Amenities”だ。石の耳をもとろけさす、歌う鳥や魚や人びと。ケンタウロンの芳香に満ちた大気は瓶詰めにして輸出されている。ケンタウロンを訪れた画家は、その素晴らしき景色をどうしても画布に写しとることができず、ヒステリーをおこして筆をへし折る始末だ。ケンタウロンの羊歯や葉っぱや蕾はとびっきりの抗鬱剤としてあちこちの惑星で重宝がられているが、これは決して麻薬的な作用があるわけじゃない。ほかにも、頭のよくなる薬や、記憶増進剤も特産品だ。ともかくも、ケンタウロンは快適な世界なのだが、今日はいつもと違った。とびきりの中でもとびきりの快適な一日。ケンタウロンでは千日に一日、そんな日が訪れる。いや、今日の快適さはそれどころじゃない。ケンタウロンの気高く美しき人びとのひとりが言った。ハールーンが再生したぞ。再び、灯がともったんだ!
ハールーンは死の床で言い残していた。もし、わたしが再び生まれ変わることがあれば、ある言葉を最初に喋ると。その言葉は、「バグダッド」 それは所在が定かでなく、旅人たちの噂にたびたびのぼる蜃気楼の都市であり、またケンタウロンの古語では「魔法でつくられた最後の都市」を意味する言葉。そして、エシンドバッドは再生したハールーンを連れ帰るため、妻のタンブルホームとともに地球へと旅立った。これが、シンドバッド13回目の航海、そして最後の航海である。
地球に到着したエシンバッドとタンブルホームは、からんでくるイフリートたちをあしらいつつ、中空に浮かぶ幻の都バグダッドに辿り着く。このあたりの描写はWhere Have You Been, Sandaliotis? のサンダリーオティスと似た感じだ。やがて、エシンバッドや、アストローブ、カミロイ等からやってきたスパイたちは囚われの身となり、絞首刑の危機にさらされるも、口先八丁でうまくかわしていく。一方、「分析幾何学」(なんのことやら)の手法を駆使して「どこでも航時機」を発明した現代シカゴの高校生ジョン・サンダースンは、アラビアン・ナイトの時代のバグダッドに潜入し、エシンバッドから真のシンドバッドの人生をかすめ取る。ジョンが奴隷市場で一番の美女を競り勝って妻とするも(クレプシス年代記にも同じシチュエーションがありましたね)、実は魂を封じ込められた自動人形で、バグダッドで最近流行のパーティグッズだったとか、いまだ箱船に棲むミイラ化したノアの祖父が一年に一文字の超スローペースで「世界の秘密」を著している話(これは高橋源一郎の『文学王』で紹介されていました)とか、相変わらず奇天烈な挿話が満載だ。
父ハールーン・アッラシードの跡を継いでカリフとなったアル・アミンの命を受け、エシンバッドは地球の中心に封じ込められている悪魔たちの脱出を阻止しようと愛機で地底に向かう。ところが、タンブルホームは何か違和感を感じていた。実はかれらが乗り込んだのは、エシンバッドの愛機そっくりに化けたイフリートだったのだ。魔物どもに拘束され拷問にかけられるエシンバッドとタンブルホーム。やがて、地底にはシェヘラザードや偽シンドバッドのジョンと機械妻のブルームーンたちも集結し、ボトルの魔術を駆使したシェヘラザードにより魔物どもは一網打尽となった。戦闘のさなか鋼の手枷足枷で拘束されて身動きのとれないエシンバッド。タンブルホームにあんたが本当のヒーローなら引きちぎって活躍しなさいよって言われ、よーしみていろ...やっぱり無理だよってところで、あんた情けないわねえ、じゃああたしがって鋼の手枷足枷を引きちぎって暴れ出すタンブルホーム。とまあ、エシンバッドはこんな感じで全編にわたって口のわりに情けないシチュエーションが多いのだが、これがラストで陥る悲惨な境遇の伏線になっているようだ。ともあれ、一行は悪魔を封じた鋼鉄の扉が無事なことを確認し、門番たる300匹のドラゴンたちを引き連れてアル・アミンのカリフ就任パレードに合流する。だけど、なんでこのドラゴンたちみんな、あんなにものすごく腹をふくらませているんだろう?
カリフに就任して様々な改革を始めたアル・アミンだったが、即日に兄弟のマームーンとカリフの座をかけて対決することとなった。邪悪な力を身につけて、何度倒されても復活するマームーン。やがて訪れた皆既日蝕による暗黒のなかで、勝利したのはマームーンだった。そして、慌ただしいカリフ交代劇の裏では悪魔たちの陰謀が進行していた。実は悪魔たちは鋼鉄の扉の腐食した隙間から忍び出てドラゴンたちの腹中に潜み、いまやいっせいに世界へと解き放たれたのだ。さらに、アストローブ、カミロイのような別世界からやってきていたスパイたちの宇宙船を乗っ取って、いまやあらゆる居住世界へと拡がっていこうとしていた。ここで、冒頭の登場人物たちの科白「わたしの主な任務は失敗に終わり、究極の邪悪なるものを地球とその他の居住惑星すべてに解き放ってしまった云々」の意味が判明する。
まあ、それはそれとして(笑)、シェヘラザードは新たなカリフたるマームーンをボトルの魔術でひっかけて(マームーンには少しイフリートの血が混じっているのだ)、結婚の契約を交わす。ジョンと機械妻のブルームーンは現代のシカゴに戻って楽しくやっているようだ。そして、エシンバッドは...愛妻タンブルホームの罠にかかって悲惨な境遇に陥る(エシンバッドにも少しイフリートの血が混じっているのだって書いたらおわかりかな)。まあ、自業自得でしょう。
高橋源一郎の「文学王」によれば、ほぼ同時期に刊行されたジョン・バースの『船乗りサムボディ最後の船旅』とかなり似たテイストがあるそうな。探してみなきゃ。
また、2000年のSFセミナーで牧眞司さんがSF版の異色作家短編集候補(SF版魔法の本棚との説もあり)として、本作を宇宙舟歌とセットにして挙げられていたとのこと。
(林哲矢さんのレポート)
(安田ママさんのレポート)
ついでに、その他の作品も引用させていただくと、
デイヴィッド・R・バンチ『モデラン』
キース・ロバーツ『アニタ』
キャロル・エムシュウィラー『ザ・スタート・オヴ・ジ・エンド・オヴ・イット・オール』
オクテイヴィア・E・バトラー『ブラッド・チャイルド・アンド・アザー・ストーリーズ』
スタニスワフ・レム『サプルメント』
R・A・ラファティ『スペース・シャンティ/シンドバッド:ザ・サーティーンス・ヴォヤージ』
スペース・シャンティは宇宙舟歌として既訳。エムシュも収録内容は異なりますが、出ましたね。アニタは(出るとの噂もありましたが...)SFマガジンや古沢さんのファンジンでかなり訳出されました。結構、実現してきていますね。(ちなみに、レム以外は持ってるなあ。ちゃんと読んでないけど)
ほんと、どこか出版に乗ってこないかしら。
ラファティ・フォーラムで「七日間の恐怖」がCBCの短編ドラマ化された、という書き込みがありました。タイトルは 'Four Day Wonder'で、原作よりもややおとなしめだったとのこと。それで、添野知生さんに教えていただいたのですが、"Sunday at Nine" という日曜夜9時の1時間枠の単発ドラマ・シリーズで1971〜72年のシーズンに放送されたそうです。脚色はブルース・マーティン、監督はルネ・ボニエール(のちに新アウター・リミッツなども手がけたそう)。どこかのアーカイヴで保存されてないでしょうかねえ。
京大SF研の会誌「中間子」。「降誕編」にラファティ三編(憎々しきハイテク式扉、すると僕は死ぬ、ただ一つの旋律 あるいは、失われた要素とはなんだったのか?)、「陰陽編」にラファティ一編(貧者の災厄)、「開闘編」にラファティ一編(ジャック・バンの眼)が収録されています。「開闘編」は未入手ですので、それ以外について紹介・コメントします。(って言っても、ほとんど拙サイトの紹介文の使い回しですが)。通販ページはこちら。
憎々しきハイテク式扉(The Doggone Highly Scientific Door)
"Ringing changes"初出の小品。今年も遊園地の開園日がやってきた。毎年これを楽しみにしているハント氏にとって、今年は何か勝手が違った。新たに設置された自動ドアがなぜか彼の前でぴしゃりとしまるのだ。締め出しをくったのは彼と犬たちだけ。やがて、新条例により犬が入場禁止となったため高度な科学を用いた自動識別ドアが採用されたことが判ったのだが、何でハント氏も?コミカルな不条理劇をみているうちに、予想外の結末へと至る作品。訳題はお見事!ですね。
すると僕は死ぬ(I'll See It Done and Then I'll Die)
Drummのブックレット・シリーズの5冊目"The Man Who Made Models and Other Stories"に収録。'74-'75に商業誌に売れなかった作品を若干改稿したものだが、発行者のChris Drummは"看過された宝石"と、高く評価している。
ガイフォードは友人のランボーに不満があった。百万人にひとりの完璧な人物たるガイフォードにとって、ランボーが秀でた人物なのに幾つかの欠点があるところが気にくわない。それさえ矯正すればランボーもまた完璧となり、ガイフォードの人生は完全なものとなるのだ。ランボーの七つの欠点のうち、五つまではほぼ矯正可能だが、残りふたつ----ミス・ジョージアとの交際と、死に対する奇妙なジンクスに憑かれている点が問題だった。部屋中の壁をほぼ埋め尽くす写真の切り抜きを張り付ける場所がなくなって、ナツメグ・マンという本を読了し、部屋の中心に棲み着いた蜘蛛の巣が隅まで達して、弱小チームのカウ・ポークスがはじめてのシリーズ優勝を成し遂げ、クラック・ア・スタックのゲームで99999のスコアを挙げ、ミス・ジョージアと別れ、彼の名が記された特製の砂時計が最後の三分間を告げたとき、ランボーは死ぬというのだ。さあ、9月も終わり近くなって突如ガイフォードに、もうすぐ僕は死ぬよ、というランボーからの連絡があったのだが...。
ただ一つの旋律 あるいは、失われた要素とはなんだったのか?(The Only Tune That He Could Play(or Well, What Was the Missing Element?))
Orbit初出の一編。Orbit収録作はデーモン・ナイトの編集の影響(すなわち、没とリライトの嵐)もあり、けっこうレベルの高い作品が揃っていて、邦訳率も高い。訳者の魚さんによる特集解説も鋭いです。
トム・ハーフシェルはトランペットを達者に吹く少年だ。貝笛をはじめ、いろんな管楽器を上手に吹きこなすのだが、彼の演奏には何か欠けたところがあった。失われた何かを求めるような音色には、禁じられた"OTHAFA"の要素があるのだ。そして、トムは"憶えている最後の男"の祝祭日に栄えある12人のトランペッターのひとりとして抜擢されたのだが、そこには隠された意図があった...。本作品にはSF的アイディアと設定が満ちあふれ、謎めいた伏線の数々もラストに至るにつれ解き明かされていく。ラファティには珍しくも(理解しやすい)首尾一貫した構成のSF作品だが、細部の描写には紛れもないラファティらしさが宿っている。
貧者の災厄(Calamities of the Last Pauper)
初出はFantasy Book #6, '82/11。1988年にUnited Mithologies Pressより刊行された限定500部のブックレットThe Back Door of Historyに収録された。魚さんも紹介文で書かれていますが、『見事なまでに「典型的」なラファティ短編』。
世界の適正化は進み、今や"貧しき者"は消滅寸前となっていた。しかし、最後の貧者ジョン・ボクタンは、頑なに貧困からの脱出を拒む面倒な人物だった。彼を抹殺して貧困を世界からなくそうとする動きに、貧者の消滅は世界に災厄をもたらすという(フレイザーの金枝篇にも記載がある)伝承に依って反対する向きもあったのだ。そして、テレビ・ショウで公開されたボクタンと暗殺者ヘンソンの対決が終わったとき、世界にもたらされた災厄とは...? なお、災厄の先触れとしてアメリカで多毛のサイが発見されるのだが、実は不純粋科学研究所の一党がチベット高地から持ち込んだって。「あの研究所のいかれた奴らが...」なんて非道い言われようである。
いや、翻訳は頑張ってますね。「神空管」(numenous valves)「ブーブー天使」(plapper-angels)「盤古」(demiurges)などの訳語もいいし、"The Greenbaum-Brannagan Late Late Speak Your Mind Show"が「グリーンバウムとブラナガンの丑三つ時にぶっちゃけちゃいまショウ」となるセンスはけっこう好みです。魚さん、これからも頑張ってください。
"Sodom and Gomorrah, Texas"で英語を学ぼう!
ということで、最後に小ネタですが
ラファティ「テキサス州ソドムとゴモラ」が、webにて原文および音声で公開されており、ラファティで英語を学ぼうという奇特な方へ向けた情報です。
Project Gutenbergより、原文のダウンロード可能(HTML/text)
Manybooks.netより、mp3でダウンロード可能(i-Tunesで再生できます。全19分)
3/25 2007
みなさま、明けましておめでとうございますって、もう三月も終わりですよ。とりあえず、四ヶ月分の更新を。
12月はシカゴ出張の機中で、ラファティの「シンドバッド13回目の航海」に着手。序盤だけ読んだが、これは面白そうだ。高橋源一郎の『文学王』で紹介されていたのを読まれた方もおいでるかな。
物語は、例によって登場人物たちの自己紹介(あまり紹介になっていないが)ではじまる。みんなが「わたしの主な任務は失敗に終わり、究極の邪悪なるものを地球とその他の居住惑星すべてに解き放ってしまった云々」で語りはじめる。そう、これはカミロイ、ダハエ、アストローブなどおなじみの居住惑星シリーズに属する長編(て言うか、長めの中編かな。全158ページ)だ。伝説のカリフたるハールーン・アッラシード (アラビアンナイトの主人公のひとりですね)の跡を継いだ息子のカリフ・マームーン。中世アラビア時代のボトル(中には何かいきものが封じ込められている)コレクターで知られるシェヘラザード。地球では船乗りシンドバッドとして知られるケンタウロン・ミクロンのエシンドバッド・カパーボトム。そして、シンドバッドの座をエシンドバッドから乗っ取ったらしいシカゴの高校生ジョン・スカラッティ・サンダースン。
ほかの作品ではあまり語られることのなかったケンタウロン・ミクロンだが、ひとことで言えば、快適な世界”World of the Amenities”だ。石の耳をもとろけさす、歌う鳥や魚や人びと。ケンタウロンの芳香に満ちた大気は瓶詰めにして輸出されている。ケンタウロンを訪れた画家は、その素晴らしき景色をどうしても画布に写しとることができず、ヒステリーをおこして筆をへし折る始末だ。ケンタウロンの羊歯や葉っぱや蕾はとびっきりの抗鬱剤としてあちこちの惑星で重宝がられているが、これは決して麻薬的な作用があるわけじゃない。ほかにも、頭のよくなる薬や、記憶増進剤も特産品だ。ともかくも、ケンタウロンは快適な世界なのだが、今日はいつもと違った。とびきりの中でもとびきりの快適な一日。ケンタウロンでは千日に一日、そんな日が訪れる。いや、今日の快適さはそれどころじゃない。ケンタウロンの気高く美しき人びとのひとりが言った。ハールーンが再生したぞ。再び、灯がともったんだ!
ハールーンは死の床で言い残していた。もし、わたしが再び生まれ変わることがあれば、ある言葉を最初に喋ると。その言葉は、「バグダッド」 それは所在が定かでなく、旅人たちの噂にたびたびのぼる蜃気楼の都市であり、またケンタウロンの古語では「魔法でつくられた最後の都市」を意味する言葉。そして、エシンドバッドは再生したハールーンを連れ帰るため、妻のタンブルホームとともに地球へと旅立った。これが、シンドバッド13回目の航海、そして最後の航海である。
高橋源一郎の『文学王』では、抄訳も交えながら、かなり読みたくなる度をそそる紹介がなされている。いっそ、完訳してもらいたいと切に思う次第。
とはいえ、機中では途中までしか読めず、また積ん読に戻ってしまいました。続きはまた後日。
帰国すると、待望のアヴラム・デイヴィッドスン"Adventures in Unhistory"が届いていた。扉の惹句「ウォンバッドは現実に存在し、ドラゴンは存在しない。だが、ウォンバッドがどんなものか知るひとは少なく、ドラゴンの姿かたちはみんなが知っている」に示されるように、みんなが知っている不死鳥フェニックス、ドラゴン、人狼、一角獣、人魚などについて蘊蓄を傾けた一冊のようだ。「船乗りシンドバッドが航海したのはどこの海?」「不死鳥フェニックスを燃やしたのは誰?」など、興味深いタイトルが並ぶ。(一歩間違えば鯨統一朗だが) とりあえず、各章のタイトルを確認し、ぱらぱらとめくってイラストを眺め、巻末の索引で「黒契丹」「テクタイト」「ドードー」「性倒錯的人肉嗜食→カニバリズムを参照」など、目にとまる魅力的な語句をみつけてにっこりとし、本棚にしまう。また、少しずつ紹介したいとも思うが、基礎知識がないと大変そうだ。(どんがらがん解説で「うんちくと脱線だらけの澁澤龍彦・種村季弘風エッセイ」とあるので、そちら方面の読者を当て込んでの翻訳出版はいかがでしょうかねえ)
ジーン・ウルフ The Wizard Knight.出版時のインタビューより。
短編について、自分ではとても気に入っているのに、まったく無視されているのがある。たとえば、"The Wrapper"。セロハン製のキャンディの包み紙を通して、別世界を覗き見る男の話。いい作品と思うし、大好きなんだけどね。
ラファティの言葉を借りれば、短編小説を書くということは、グランド・キャニオンに薔薇の花びらを放り投げて、底に落ちた音に聞き耳をたてるようなものだ。
ごくごくまれに、こんなことがある。発表して20年もたってから、「やあ、いい作品を書いていたね」あるいは、「20年前に読んで、ずっと憶えている作品だ」みたいな。こいつは、とてもいい気分だ。でも、こんなこと、滅多にない。いや、まずないと思ったほうがいい。
"島の博士の死"という小品を書いたことがある 。大好きな作品だが、いまだかつて、誰も気にも留めなかったね。
今、三冊分の未収録短編があるよ。でも、短編集はあまり、売れないんだ。ハーラン・エリスンって名前じゃなくっちゃ、出版してもらえない。
本国でもなかなか出してもらえないようですね。国書刊行会に期待します。(しかし、日本ではエリスンより出やすいような。そういや、死の鳥ってどうなってるんだろう) とりあえず、"Innocence Abroad"収録の"The Wrapper"は読んでみよう。
このところ、英語版Wikipediaのラファティの項目が充実してきている。「影響を受けた人」としてゲイマン、ビッスン、ウルフ(単にラファティ・ファンの作家という気もするが)、そして「影響を与えた人」として"Teresa of Avila"が挙げられている。
誰だ、この人?
Wikipediaの"Teresa of Avila"をみると、聖アビラのテレサ。16世紀スペインの聖女で、神秘家だそう。さらに、ラファティが第四の館を書くときに、彼女の著作"El Castillo Interior "に強い影響を受け、チャプターのタイトルはテレサの著作から頻繁に引用されている、とあった。"Liar on the Mountain"とか、"Helical Passion and Saintly Sexpot"とか、"Are You Not of Flimsy Flesh To Be So Afraid?"とか、けったいなタイトルは元ネタがあったってことか?
"El Castillo Interior "の英訳は"The Interior Castle" or "The Mansions" おお、The Mansionsですよ。なんか"The First Mansions"から"The Seventh Mansions"までありますね。
こちらで読めるようです。とは言え、こんなの読む気力ないので、邦訳を探してみると、ありました。「霊魂の城」(聖母文庫)840円 アビラの聖女テレサ著 とりあえず、注文。ネットで書評を検索すると...。辛酸なめ子の開運日記 8月18日分 「修道女の教え」がヒット。「内容は、ジョン・C・リリィのアイソレーションタンク、ネイティブアメリカンの幻覚きのこ体験に匹敵するような、「念祷」(瞑想と祈りを合体させたような内省の時) による脳内麻薬分泌しまくりのインナートリップ体験について368pにわたって綴られていて、衝撃を受けました。」
おいおい。
別な意味でも、本が届くのが楽しみです。
新装版「子供たちの午後」が出ましたね。旧版と比べてみると、カバーイラストが変更され、ハードカバーとなっています。また、旧版の解説に加え、「再版あとがき」が追加されています。訳文は「究極の被造物」「トライ・トゥ・リメンバー」「子供たちの午後」「マクグルダーの奇跡」の四編を中心に手を入れたそう。
旧版の解説では、トマス・モアの大冒険、地球礁、宇宙舟歌、第四の館、イースターワインに到着、悪魔は死んだ、ローマの滅亡、炎は緑、オクラ・ハンナリ、駱駝のことを言うまでもなく、黙示録、島々の各長編について紹介がありました。当時この紹介文を読んでどうしても未訳作が読みたくてしかたなくなって、そのうちネット古書店で取り寄せをはじめたのが「とりあえず、ラファティ」をはじめるきっかけのひとつとなっているのですが、実際のところ完蒐した長編の大部分は積ん読状態となっているのは情けない限り。
今回、「ラファティと物語と世界」と題する再版あとがきが追加されており、主にコスキン年代記の二作目「半分しかない空」冒頭のエピソード紹介に費やされています。これは必読。
ダナ・コスキンがアムステルダムで出会った娘シェーラザードは、物語ることにより文字通り世界を作り出す。シェーラザードはダナに言う。あなたを作ったのも、わたしなのよ。そしてダナは、以前からふと感じることのあった「ニセモノ」じみた感覚、この世界はどこか不完全だという非現実感に不安を覚える。自分もまた、誰かが語った物語の不完全なキャラクターに過ぎないのではないだろうか......。
この、世界の「ニセモノ」感は、ラファティの作品に幾度となく繰り返されてきたモチーフです。このすべての世界は誰かの想像の産物にすぎないもので、どこかしら薄っぺらな感じを受けるのはそのためだってやつ。そこから、キリスト教的な解釈を踏まえて展開するラファティの物語論は、なかなか読み応えのあるものでした。
訳者の井上央は大阪キリスト教短期大学教授だそう。ふだん私なんかはよくわからないので避けている、ラファティ作品をキリスト教との関連で読み解くような論考をもっと期待してしまいます。
異色作家短編集別巻の若島アンソロジー第一弾、「狼の一族」が出ましたね。ラファティは「浜辺にて」私がらっぱ亭奇譚集その弐で訳した作品で、おお、なんと浅倉久志訳だっ。自分がてきとーに訳したものを、浅倉訳と読み比べられる恐怖におののく今日この頃です。みなさま、決して照らし合わせなどしないでくださいね。
などと言ってると、浅倉久志さんから「狼の一族」をご恵贈いただく。あたたかいメッセージが添えられており、非常に嬉しい気分になる。そして、やっぱり読み比べてしまい、誤訳(当然、拙訳のほう)をみつけては、机に突っ伏してしまう。いやあ、勉強になるなあ。「浜辺にて」の拙訳はかなりこねくりまわしている超訳みたいなものですので、かなり読後感が違うと思います。拙訳を既読の方も安心して、浅倉訳「浜辺にて」をお楽しみください。
それはさておき、アヴラム・デイヴィッドスンの収録作は「眠れる美女ポリー・チャームズ」これは殊能センセーが翻訳されていた作品です。
そういえば、どんがらがん・編者インタビュー@アニマ・ソラリスで「めでたく出版されたら、恥ずかしいから速攻で削除する予定です」とおっしゃっていたなあと思い、みてみると.... "Polly Charms, The Sleeping Woman"がめでたく翻訳されるらしいので、削除しちゃいました。(2006/6/12) す、素早い。半年以上前に情報を得て、削除していたとは。でも、「英国人魔術師スミート閣下」まで削除しなくてもいいのになあ。
さて、林哲矢さんと本の雑誌M村さんの結婚記念ファンジン「SF本の雑誌マガジン」(編集長は細井威男さん)に、ラファティの短編"Oh, Those Trepidatious Eyes!"の翻訳を寄稿しました。今回は、国書刊行会の"ラファティ編集者"樽本周馬さんに詳細な原文照合、訳語のチェックなどの編集作業をしていただき、ほとんど共訳と言っていいくらいです。いや、プロ編集者って、凄いなあ。訳題は「満漢絶席」。「一期一宴」「千客万来」「問答無量」などの四文字タイトル・シリーズに連なるこの秀逸なタイトルも樽本さんによるものです。このファンジン、木村航さんの書き下ろし短編、目黒考二さんや大森望さん、山岸真さん、牧眞司さんなどによるエッセイも満載で、好事家には垂涎の一品ですよ。
11/16 2006
先週末は京都SFフェスティバル(京フェス)の合宿に参加してきました。夕方にホテルに辿り着き、少し散歩して夕食はわらじやで鰻鍋と雑炊のコース。美味しゅうございました。
合宿にはオープニングの終了間際に到着し、古沢嘉通さん主催のワイン部屋に直行。手みやげコピー誌「タッツェル蛇の卵」を適当に配らせていただく。泡ものを中心にいただき(いつもご馳走さまです)、酔いのまわる前に国書部屋に移動。未来の文学・第三期(司会をされた才野さんの「話さないと伝わらない日記」にリンク)の予定が発表され、いくつかの嬉しい驚きがありました。
10/18 2006
ありゃりゃ、もう10月も半ばを過ぎてしまいました。幾つか更新を。
知久佳弘さんから短編ベスト3とコメントをいただきました。コメントの「全部ひっくるめてラファティ」というところに同感です。
久々に原書をちょっと追加。エッセイの"The Shape of the SF Story"初出のNickelodeon #1とRogue Raft初出のEdge, '73/Aut-Winです。前者はトム・リーミイらによる季刊誌で、"the exotic science fiction & fantasy quarterly"との副題がついています。ヒューゴー候補にもなったファンジン"trumpet"のリニューアルですね。ポール・アンダースン、先日物故したウィルスン・タッカーなどが寄稿し、スティーヴン・アトリーのなぜか全裸のグラビアにハワード・ウォルドロップが文章をつけています。(古書店からのコメントにも、「なんじゃこりゃあ? 注意しろよ、開けてびっくり、真っ裸だよ」なんて書いてありました)当時のリーミイを取り巻く熱い日々については、サンリオSF文庫の「サンディエゴ・ライトフット・スー」巻末のウォルドロップによる「トム!トム!−ある思い出」を。
京大SF研の「中間子」ですが、通販が開始されています。ラファティの新訳が4編も読めますので、どうぞ。
ラファティ・ネタを少し。R.A.Lafferty Devotional Pageの掲示板で、ラファティ写真トピックがたっており、ラファティにインタビューしたという方(Keith Purtell)のサイトで仕事場でのスナップがアップされています。ぐらぐらの小さなテーブルに置かれたタイプライター。窮屈そうな仕事場。何千冊もの蔵書と、資料やアイデアを書き留めた書類が詰め込まれた小さなスペース。こんなところで、長年執筆してきたのか、と驚くインタビュアー。
同トピックの書き込みから。ラファティの部屋の壁は、本が並んでないところは様々なコラージュでびっしりと覆われていたそうです。ラファティが入院した後に、すべて廃棄されてしまったのですが、仕事部屋のドアのみが救出されていたそう。ブログのコメントをみると、ラファティの相続人たちはかれの遺したものを保存し役立てようとしたのですが、せっかくの寄贈もタルサ大学の図書館はあまり興味を持っていないよう(けっきょく、タルサ大学にとってラファティはただのSF作家なんだ、と怒りのコメント) これが本当なら、せっかくのラファティ・コレクション(未発表作も多数含んでいる)が死蔵されてしまうかも。いや、最悪の場合は廃棄・散逸もあるかもと、心配になってきます。indexはこちら。これをみると、未刊行のIn a green tree四部作やコスキン・クロニクル四部作もすべて収録されているようです。多量の書簡(浅倉久志さんや牧眞司さんのお名前も!)もリストアップされており、ものすごく貴重な資料がちゃんと整理されて寄贈されています。ラファティの伝記に、アイリーン・ガンがアヴラム・デイヴィッドスンの次に取り組んでくれないかしら。(メリル言うところの「知性のかけらも感じられない」おなかの突き出た酔っぱらい爺さんの話なんて、誰も読みたがらないかなあ)
アヴラム・デイヴィッドスンといえば、殊能センセーによるアヴラム・デイヴィッドスン小伝(「どんがらがん」収録)を読んで、なかなか波瀾万丈な人生を送っているなあと思っていたのですが、SFM10月号のアイリーン・ガン・インタビューで、デイヴィッドスンの伝記を執筆中とあって、これは読みたいなあと思います。ネットで調べてみると、"Strangeness and Charm"(仮題)だそう。膨大なデイヴィッドスンの書簡や、レクチャーの録音などを元にしているとのこと。(The AVRAM DAVIDSON Websiteより)また、ユダヤ系の雑誌に掲載された作品を集めた"Everybody Has Somebody in Heaven"(Devora, 2000)にアイリーン・ガンによるbiographyが載っているとのこと。(持ってるが、当然読んでない) といことで、発掘してみました。
アイリーン・ガンの「深い井戸からの水」("Everybody has somebody in heaven"巻末の小伝"Water from a deep well")より。
殊能センセーによる「どんがらがん」巻末の小伝は、Henry Wessellsの"Something Rich and Strange"を参照されたとのことですが、こちらは、現在もアヴラム・デイヴィッドスンの伝記を執筆中のアイリーン・ガンが、手紙や録音、聞き書き等を元にまとめたもの。コピーライトは2000年となっています。生誕から順を追って述べていくという、オーソドックスな手法です。幼少時はSF雑誌にはまり、学生時代からユダヤ教に傾倒し、第二次大戦に出征。沖縄戦での凄惨な光景に強い印象を受け、終戦後の中国駐留時の体験は名作"Dagon"を生み出しました。
あと、いくつか目にとまった記載を挙げていくと、処女作とされる「恋人の名前はジェロ」F&SF, '54(実際は"The fisherman"が処女作だそう)は大好評を博し、ハードカバーのF&SF傑作選にも収録された。
グラニア・デイヴィスとの結婚披露宴ではスタージョンのギター弾き語りで盛り上がった。
殊能センセーお気に入りの60年代の長編作品だが、収入は一冊$750程度と当時にしても格安。華々しい受賞歴も収入には結びつかなかったようだ。
魔術師ウェルギリウスシリーズは下調べが大変だったそうだが、手っ取り早く収入を得るために下調べなしで書いた(すなわちこれまでに蓄えた知識と想像力のみで書いた)のがエステルハージィ博士シリーズだ。
ホロコーストの影は生涯つきまとっており、改名(海軍に入隊した頃Adolph AbramからAvramに改名。通り名はDaveだが、親しい友人や家族にはAvram。1974-5年にJames Abram Davidsonと正式な改名を行った)をはじめ、決してドイツ車に乗ろうとしなかったこと、ドイツ語への自作の翻訳を許可しなかったことなど。(割のいいドイツでの出版の話に、「わたしはパンを同胞の血に浸すのはいやだ」、と断ったそうな。さらに80-90年代に好景気にのったドイツ系企業に買収された出版社には自作の掲載を断っていったというから、筋金入りだ)
病気がちなアヴラム・デイヴィッドスンが天理教に改宗したのはご存知の通り。1970年に手術のため入院したアヴラムは、「天理教の牧師は癒してくれたが、ユダヤ教のラビには悪化させられたね」と語ったが、これはラビのたしなむ葉巻が原因のようだ。
今年の末にはいよいよTorから"Adventures in Unhistory"が再刊される予定。「うんちくと脱線だらけの澁澤龍彦・種村季弘風エッセイ」(『どんがらがん』解説より)非常に楽しみですが、果たして私の英語力で読めるのでしょうか?
今年は、なんとか京フェスに参加予定(たぶん合宿に顔出し程度かも)。古沢さんのワイン部屋目当て(笑)との説もありますが、いちおう手みやげ本を作成しました。20ページのコピー本です。収録作は、ラファティの「腸卜」とイドリス・シーブライトの「ヒーロー登場」。タイトルは浅倉さんの「グラックの卵」に敬意を表し、「ヒーロー登場」に出てくる伝説の"tatzel worm"の卵から、「タッツェル蛇の卵」としました。「グラックの卵」勝手に協賛企画として、ユーモアSF特集号です。いずれも、果たしてユーモアSFかどうかは保証の限りではありませんが。
8/9 2006
さて、「中間子」レビュウです。
天堂編・地獄編の二冊併せて100ページを軽く越える力作です。
まずは、ラファティ特集の載った天堂編から。 新人レビュー、テッド・チャンのネイチャー掲載ショートショート、ラファティ4編。
人間の自由意志を扱ったチャンの『予定調和』は、作品解説にも触れられているようにイーガンを思わせる掌編。SF的なガジェットやジャーゴンを排して語り直せば、星新一の作品と言っても通りそうな感じかな。
ラファティは初期作品3編と、82年の短編集Golden Gate初出の比較的後期の1編。 素人ラファティ訳者の先輩として、訳者が楽しみながらも四苦八苦しつつ訳したんだろうな、と想像できる。何で、ここにこんな文章があるんだ? この単語に何の意味が? ここまでキャラ紹介を引っ張ってきて、伏線でも何でもないのかよ! などなど。でも、それがなくっちゃ、ラファティにならないんだよね。(無駄がなければどうなるか、というのはゲイマンによるパスティーシュ『サンバード』を読めばわかるかも。上手すぎて、ラファティ愛に溢れた根っからのファンにはちょっと物足りないかな)ともあれ、翻訳お疲れ様でした。
『忌まわしい朝』はラファティお得意の「三の定式」と「夢」を扱った作品。ラファティ的悪女コーネリアとの絡みも楽しい。
『夢路より』はラファティが語る「怪談」。未訳ものでもけっこうホラー系統の作品があって、いずれもわりとストレートであんまりストーリーにひねりはないのだが、独特の語りにより「ラファティ」ならではのホラーとなっている。
『マクゴニガルムシ』は最もとっつきやすいSFかな。(If誌'60/Nov初出) 九百人のお祖母さんに収録されていてもおかしくない。地球の全脊索動物が不妊となって、人類の築きあげてきた叡智を遺産として受け継がせるために、ギボシムシの一種であるマクゴニガルムシに特訓を始めたって馬鹿っ話し。
『片目のマネシツグミ』は後期作。ラファティの好きな聖書と知られざる歴史ネタをからめたマッド・サイエンティストものだ。後期ラファティならではの難解さもあるが、全体として楽しい佳品となっている。
地獄編は、"ドキッ!レイ・ヴクサヴィッチだらけの超訳祭"と題して、短編集『月で会いましょう』から12編を訳出。ヴクサヴィッチについては、nanny mouse さんによる紹介が詳しく、私もこのレビュウを読んで早速注文かけたクチである。 ともかく「変な話」が好きなひとにお勧めだ。不条理あり、SFあり、ラブストーリーありと、ジャンル不問のけったいな話の数々。こんな短い作品ばかりなのに、なんでこーなるの?っていう予想もつかない展開に翻弄される快感。往年の吾妻ひでおファンも必読だ。
8/4 2006
「中間子」続報です。地方在住者や、夏コミ参加はちょっと...と言う年長者(笑)に朗報! 魚さんによれば、通販が決定したそうです。受付は夏コミ終了後となるとのこと。詳細はわかり次第、まだお知らせさせていただきます。
8/1 2006
さて、久々にラファティ関連のニュースです。京大SF研の正会誌「中間子」が夏コミで出ますが、部長魚さんの手になるラファティの翻訳4編(Beautiful Dreamer, Maleficient Morning, McGonigal's Worm, One-Eyed Mocking-Bird)が掲載された「天堂編」(他に、テッド・チャンのWhat's Expected of Usと新人マイベストレビュウ)と、ドキッ!レイ・ヴクサヴィッチだらけの超訳祭り(短編集Meet Me in the Moon Roomより抜粋して12編)の「地獄編」の二本立てとか。「京都大学SF研究会」のブース:8/13(日)パ-01aです。
ちなみに、魚さんは拙サイトでラファティ追悼企画を催したときに、最年少(16歳!)でエントリーしていただいた方。いまや立派なSF者として活躍中で、今後が非常に楽しみです。
7/21 2006
おやおや、7月ももう終わりかけています。国書刊行会から予告されている<短篇小説の快楽>という新シリーズでは『キャロル・エムシュウィラー短篇集/畔柳和代訳』が楽しみですが、刊行までに本サイトの姉妹サイト「キットとキャロルとマーガレット」更新をしようごちゃごちゃやっておりました。更新の詳細はこちら。
国書刊行会といえば、私の地元・徳島の紀伊国屋書店で夏のSFフェア!開催中(〜8/20)とのこと。「早川書房・東京創元社・河出書房新社・国書刊行会のSF担当編集者による手書きポップつき」とのことで、是非とも行かなくては。(フェア直前に行ったときにはまだポップはありませんでしたが、国書SFと河出の奇コレが平積みになっているのをみて、なんか感動しましたね)「その後、ブックファースト渋谷店、旭屋書店札幌店で開催予定」だそうですので、近隣のかたはお見逃しなく。
前回紹介したニール・ゲイマンの「サンバード」。ラファティ・オマージュと書きましたが、正確にはパスティーシュでした。ローカス短編賞受賞とのこと。ホームズのパスティーシュ『エメラルド色の習作』(2004年度ヒューゴー短編賞受賞作)もよかったけど、なんか他にもいろいろ書いていそうな気がしますね。
5/4 2006
本日よりシアトル出張。準備に追われ、今年もSFセミナーは泣く泣く諦めました。浅倉さん企画は聞きたかったなあ...。
さて、久しぶりにラファティっぽい話。SFM今月号のニール・ゲイマン「サンバード」を読んだ。 こ、これはどうみてもラファティ・オマージュじゃないか?! 冒頭の登場人物の紹介からネーミングから、いかにもラファティ風。クロウクラッスルなんて、もろラファティ・キャラだ。 ゲイマンはラファティの(特に短編の)ファンを自認してたし、これはもうオマージュ作なんだろうとぐぐってみると、ゲイマン自らこう書いてますね。
「何年か前、サンバードって作品を書きはじめて、上手くいかないんで放っておいたんだ。昨日読み返してけっこうおもろいなって思って、だいたい残りもできあがったよ。こいつはラファティ話だ。ほんとのラファティ作品にはおよばないけど、書いてて愉しかったよ」 原文はこちら
ところで、アヴラム・デイヴィッドスンのAdventures in Unhistoryですが、待ちかねた再版が今年末あたりに出そう。Amazon.co.jpでも予約開始しているので、早速注文をかけました。 ああ、10万円の旧版を思いとどまってよかった。Tor Booksから出る予定なんで、The Rose Pressみたいなことはたぶんないと思いますよ、殊能センセー。
4/1 2006
「特盛!SF翻訳講座 翻訳のウラ技、業界のウラ話」(研究社)
大森望さんの『翻訳講座』となれば、副題にある「業界のウラ話」系の話題がいっぱい(何せ、特盛だ)の軽妙なエッセイを期待してしまうのですが、実のところ本書はかなり実践的な翻訳講座でもあったのでした。
基本姿勢としての「読まれてナンボ」、「読者にウケる」翻訳は、まさに正鵠を射たもの。学術論文もエッセイも手紙も、あらゆる文章はウケをねらうべしとは、日頃論文や学会演題、研究費の申請書などをいかに通すか、という苦労をしているわたしも同感です。そして、「翻訳のウラ技」(いや、実際はかなりオモテ技に近い実用的なこともけっこう書いてあるんだけど、大森さんにはやはりウラ技が似合うような)、「業界のウラ話」をまじえつつ「地方在住のSFファンがいかにしてSF翻訳者になったか」が語られるわけで、読み物としても滅法面白いうえに、ためにもなってしまうという。これはもう、SFファンのみならず、あらゆる作家・翻訳家・編集者およびそれらの志望者必読でしょう。やはり地方在住SFファンだった少年時代のわたしに読ませてあげたいイチオシ本でもあります。(いまだ地方在住SFファンのままですが、英語があまり得意じゃなかったのも一因かなあ。学生時代にいっちょ原書でも読んでみようかって、たまたま買ったのがオールディスの「頭の中の裸足」。これで、ぼくにはやっぱり原書は無理だと20年ほどブランクがあいてしまった。若いSFファンへの助言として、最初に読む原書はちゃんと吟味して選びましょうね、と言いたい)
Intermissionとして、アンシブル通信から再録された西島大介さんによるインタビュー「大森望☆サクセスの秘密」も楽しい。暴走するインタビュアー西島さんのはじけっぷりは、アニマ・ソラリスでの殊能センセーインタビューのときに少し意識しましたね。インタビューされる側にまわっても相変わらず暴走する西島さんを冷たくあしらう大森さんという爆笑インタビューが掲載された今月号のSFマガジンも必読。この路線では以前の田中啓文さんインタビューも面白かったなあ。
3/11 2006
先月に引き続きお手伝いさせていただいた、アニマソラリスでのインタビュー。今回は殊能将之センセーの『どんがらがん』編者インタビューです。ちょっと私が喋りすぎているきらいはありますが、ともかくも殊能センセーによる『ナポリの読み方』は必読ですよ! SPPAD60の編者に聞くと併せてお読み下さい。
2/16 2006
前回更新でTerry CarrをCarとしていました。原書カバーのリンク先を含め、気が付いた範囲で訂正しました。(たぶん本HPのどこかにはCarのまま残ってるかもしれませんが) 牧眞司さん、ご指摘有り難うございました。
SF者もミステリ者も必読の『デス博士の島その他の物語』。ちなみに原題はThe Island of Doctor Death and Other Stories and Other Storiesというやたら長ったらしい作品集(正確にはこのタイトルの作品集からの抄訳+αだが、単なる抄訳じゃなくって、巧妙に作品の選択と配置がなされた見事なオリジナル作品集となっています。殊能センセーの『どんがらがん』とともにベスト編集賞もの)これは、ご存じの方にはいまさらでしょうが、....and other storiesというのがあちらの短編集のいわばルーチンな題名で、タイトルストーリーが「デス博士の島その他の物語」すなわち"The Island of Doctor Death and Other Stories"なので、このような作品集のタイトルとなった訳。いや、最初にこれを見たときは、上手いなあと思ったものです。それで、日本版のタイトルは『デス博士の島その他の物語その他の物語』がいいですよっ!なんてmixiでネタとしてつっこんだりしていましたが、これは当然『デス博士の島その他の物語』で正解でしょう。『デス博士の島その他の物語その他の物語』では一部の好事家を除いて、大半の読者や書店の方々に誤植かなんかと思われるのがオチでしょうし。原題のインパクトには残念ながら及ばないことを考えると、『デス博士の島その他の物語』でいいんじゃないかと。実際、あちらの短編集には"....and other stories"のヴァリエーションが多いですが、大昔に早川の異色作家短編集でボーモントの『夜の旅、その他の旅』を読んだときは気が付かずに、何か変なタイトルだなあと思っていました。
2/13 2006
おやおや、いつのまにか年が明けて、もう2月も半ばですよ。さて、次号のSFMには久々のラファティが。 浅倉さん訳による"Selenium Ghosts of the Eighteen Seventies"とのこと。
今、私達がみているテレビとは、別の原理で作動するテレビ。1870年代のアメリカでは、セレンを用いたテレビが発明され、世界最初のテレビドラマが放映されていた...。 (review)。'78のTerry Carrによるアンソロジー"Universe #8"が初出で、Year's Finest Fantasyにも再録された佳品。作品集としては、'92の"Iron Tears"に収録されています。いやあ、愉しみたのしみ。
そして、ラファティの『宇宙舟歌』は『SFが読みたい!』では堂々の5位。 4位の『どんがらがん』もよろしく。
お手伝いさせていただいた、アニマソラリスでの町井登志夫さん「血液魚雷」インタビュー。まあ、わたしのパートは雀部さんによるインタビューに少し放射線科医としてのツッコミを入れた程度ですが。
コンプエースvol.5に掲載の吾妻ひでお「うつうつひでお日記」('05.1.6〜1.24)でらっぱ亭奇譚集を取り上げていただき吃驚。そう言えば、このころに贈らせてい
ただいてたんだった。いや、しかし相変わらず萌え〜系の表紙はおぢさんには買いにくいです。
国書刊行会より『デス博士の島その他の物語』をご恵贈いただく。有難うございました。早くも今年一番の話題作決定とも言える傑作揃い。一挙収録の「島博士もの」シリーズに、幻惑の異国奇譚「アメリカの七夜」、旅する盲目の少年ティブの視るマジック・リアリズムに彩られたヴィジョンの数々から立ち現れてくる驚愕の現実と、感動的な結末の「眼閃の奇蹟」。そう、魔法の靴がなくっても、ぼくらの世界と夢の国とは地続きなんだから、きっと歩いてゆけるんだ。
12/8 2005
『どんがらがん』応援企画:今日のアヴラム・デイヴィッドスン『スロヴォのストーブ』
スロヴォのストーブとは、東欧からアメリカに移民してきたスロヴォ族が持ち込んだ不思議な調理器具のこと。
それは、黒と青の二枚の石板で、ラックにセットして鍋を置くと電磁調理器よろしく料理ができるのだ。まあ、簡単な煮炊きやお湯を沸かすくらいしか使えないのだが。
久しぶりに帰郷した主人公の青年フレッドは、幼馴染みの家でたまたまスロヴォのストーブを眼にする。
いったい、どういうメカニズムで動作してるのか?
気になって訊ねても、笑われるばかり。かれらにとっては、ごく当たり前のものなのだ。
「どうして熱くなるんだって? じゃあ、どうして若者と娘っこは恋に落ちる? どうして鳥は飛ぶ? どうして水は雪になり、また水にもどる?」
フレッドはスロヴォのストーブに憑かれ、調べ始める。そして、母国におけるハザック族とスロヴォ族の確執が移民先にも持ち越されていることがわかってくる。しかし、それはもはやカリカチュアとおきまりのジョークのレベルだ。移民がアメリカに同化していく過程において、おおもとの民族性は緩やかに失われていく。これは、そういう話だ。
再録された"The Avram Davidson Treasury"に寄せられたマイケル・スワンウィックの紹介文によると、アヴラムに本作を賞賛する手紙を書いたマイケルがもらった返事が引用されている。なお、マイケルの妻はルテニア人の系統だ。
チェコスロバキアからの移民に対する、アメリカ人の感覚はこんなものだ。チェコ人? いいやつらだよ。おかしな名前だけど、まあ、いいやつらさ。 スロバキア人? ああ、やつらはよく働くな。だけど、土曜の晩になると、飲みだすんだ。そして、女房やガキどもをぶちのめす。それに、やつらはちゃんとした帽子(hat)をかぶらないな。...縁なし帽(cap)をかぶってんだよっ。 えっ、ルテニア人はって? ははははははははは。(ルテニア人はって聞くと、笑わないやつはいないね。なんでそうなったのかは、さっぱりわからないが)
フレッドからすれば、摩訶不思議なスロヴォのストーブは未知のエネルギーで作動する素晴らしい道具であり、メカニズムを解明することにより新たなエネルギー革命をおこせる可能性を秘めたものだ。だが、スロヴォ族にとってはどうってことのない身近な道具のひとつだ。いや、ガスレンジや石油ストーブがある社会においては、ちょっとした料理しかつくれないスロヴォのストーブはもはや必要とされていない。せいぜい、おばあちゃんが夜中にちょっとお茶が飲みたいなって時に、部屋から出ずともお湯が沸かせて便利だなって程度。
さらに、若い世代にとっては、もう少し複雑な気持ちがある。身の回りのものだけをつめたナップひとつで移民してきたスロヴォ族は、貧困のなかスロヴォのストーブで煮炊きしつつ生き延びていた。若い世代にとって昔の窮乏生活を象徴するスロヴォのストーブは、むしろ羞恥の対象となり、破棄すべきものなのだ。
けっきょく、民族性(ethnicity)に価値や意味を見いだすのは、その民族自身じゃなくって、むしろ外からだってこと。これはけっこう普遍的なテーマだと思う。「伝統の文化」を勝手に「再発見」して、声高に守らなければって主張するのは、当の民族にとってはどうでもいいことだったり、あるいはいい迷惑だったりするのかも。(←これは本作のレビュウとしてはやや蛇足)
あと、「どんがらがん」続編の「バシリスク」も読んだが、これは、もう殊能センセーが解説で要約された内容そのもので、あえて付け加えることはないので紹介は割愛する。いや、面白いですよ。凸凹コンビの道中ものとして、是非ともシリーズ化して欲しかったなあ。悪辣な通行税吏スラッグの、言うこときかないと獰猛な犬たちをけしかけるぞって脅しに対し、ひるまず瞬殺するゼンバック・ピックス。何すんだよって怯える若マリアンに、おやおや、気づかなかったんですか、あの犬たちの唸り声はスラッグの腹話術ですよって得意げに解説するゼンバック。なあんだ、そうだったのかって旅を続けるふたりの耳に、腹話術だった筈の犬たちの唸り声が聞こえてきて青ざめるくだりなど、爆笑ものだ。
ぼちぼち、『宇宙舟歌』応援企画もやらなきゃなあ。
11/17 2005
『どんがらがん』が順調とはいえ、The Rose Pressのせいで疑心暗鬼になってらっしゃる殊能センセーですが、 "Adventures in Unhistory"の11/28発売はたぶんガセと思います。と言うのも、The Avram Davidson Websiteでは、2006年12月発売予定となってますから。まあ、Amazon.caおよびchapters.indigo.caはいずれも11月発売予定となっているので気にはなっていたのですが、Amazon.co.uk(まだ怒ってるんでリンクしてやんない)で懲りたので注文は控えています。(まさか、カナダ先行発売なんてことはないだろうな)
『どんがらがん』応援企画:今日のアヴラム・デイヴィッドスン『ダゴン』
殊能センセーによれば、「わざとわかりにくく書いてある」超絶技巧短編。1945年の中国を舞台とした、米軍人のたどる奇妙な運命が独白体で綴られる。
冒頭で、なにか不自由な境遇に陥っているらしい主人公が、語る。
あの老いた中国人の奇術師。かれは、金魚鉢を消しては、また出現させる。
西欧に火薬がもたらされた時、かれらは世界を征服しに行った。
だが、中国ではその遙か昔から火薬が知られていたのに。
いったい何をしていたのか? ずっと爆竹をつくってきたのだ。
いや、いまでもかれらは爆竹をつくっている。改良を重ねたそれは見事なものだ。
あるいは、アステカ族と車輪。
車輪を知らないアステカ族は、西欧人により征服されたという。
だが、それは間違いだ。征服の前につくられた証拠がある。
それは、粘土でつくられたおもちゃだ。アステカ人はたしかに車輪を知っていた。
西欧人は火薬と車輪で世界を征服した。
アステカ人はおもちゃを造り、中国人は爆竹をつくる。
そして、奇術師は金魚を消す。
騒音と暗転。
1945年の中国。喧騒と混乱の町に耽溺していく主人公。『ナポリ』のごとく、エキゾチックな異境の町を描くアヴラム・デイヴィッドスンの筆致は冴え渡る。奇妙な成り行きで現地妻を手に入れた主人公は、やがて不可思議な報いを受けることとなる。これは、異国情緒あふれる変身奇譚の系譜に連なる名品だ。主人公の語る奇妙な嗜好とイメージが絡み合って結末にいたるとき、冒頭に挙げた主人公の独白が腑に落ちる。
『どんがらがん』は、これぞアヴラム・デイヴィッドスンという優れた編集の技が愉しめる作品集ですが、さらなる深みにはまったファンにはまだまだ紹介されるべき作品があるんじゃないでしょうか。
それにしても、『ナイルの水源』って、ほんとラファティが書いててもおかしくない奇想小説だなあ。特にベンスン一家なんてちょっといじればラファティ・キャラそのものだし、まきこまれ型の主人公の造形は『第四の館』の主人公フレディみたい。
まあ、同根のアイディアが『さあ、みんなで眠ろう』になるのか、『ブリキ缶に乗って』になるのかってところが大きな違いかなあ。ラファティのハジケっぷりにちょっとついていけないひとでも、アヴラム・デイヴィッドスンだったら大丈夫。って、そこが長所でもあり、でも、弱点なのかもしれないね。
ところで、やっぱりよくわからないぞ、『ナポリ』。
原文で読んでも、わからないぞ、"Naples"
いや、ほんといい作品とは思うんだけど。
ナポリ。
11/14 2005
一時はどうなることかと思ってましたが、やっと届きました。 アヴラム・デイヴィッドスンの"The Scarlet Fig"。しかし、読むかどうかもわからない本に(なにせ、三部作の三作目。当然、一作目も二作目も読んでない)、アマゾンに催促メール書いたり、出版社に再注文かけたりと えらい手間をくった上に、7000円以上もかかってしまいました。 でも、ここで買い逃したら、"Adventures in Unhistory"みたいに、古書価が十万円近くまで跳ね上がってしまいそうだしなあ。
ちなみに、アヴラム・デイヴィッドスンはほぼ完蒐しましたが、 "Adventures in Unhistory"はさすがに高価なため買ってません。しかし、「うんちくと脱線だらけの澁澤龍彦・種村季弘風エッセイ」(『どんがらがん』解説より)なんて聞くと、我慢してたのが、また欲しくなってきました。 まあ、Torから再刊予定のはずなので、自重しておきましょう。
ところで殊能センセーは"The Scarlet Fig"をThe Rose Pressに再注文されたのかしら。
『宇宙舟歌』刊行記念の柳下さんと浅倉久志さんのトークショーに行けずにぼやいていたら、才野茂(STR)さんの素晴らしいレポートが。いや、ここまで全貌をレポートしていただければ、 無理しなくてよかった(笑)ような。 まあ、生・浅倉久志さんにお会いできなかったのは残念ですが。
11/5, 2005
SFファン交流会の10月例会「ラファティを語る〜『宇宙舟歌』の訳者を迎えて〜」に参加。みいめさんの進行のもと、柳下さん、林さんのお話に適当につっこみをいれながら、三時間愉しませていただく。詳細は11/10(木)の柳下さんと浅倉久志さんのトークショーが終わってからにしよう。(ほとんど忘れてしまいそうな気もしますが)
というわけで、ファン交に間に合うようまずは『宇宙舟歌』を読み始めたわけですが、一気に最後まで何の違和感もなく読み終えてしまいました。これは実にすごいことです。ラファティの神髄は文体にあります。若干の胡散臭さが漂う饒舌な語りは、けして流暢ではなく、ごてごてした大仰な単語や言い回し、どこから拾ってきたんだろうと思わないでもないペダントリックな単語が混在し、全体としてラファティらしさを醸し出す訳ですが、この原文で読んでるときの「ラファティな感じ」が訳文からも伝わってくるのです。平易でわりと今風の親しみやすい文体に混ざり込む文語めいた言い回しや単語。いや、是非次も柳下さん訳のラファティを読みたいと思いました。
そして、今は『どんがらがん』をいつも持ち歩いて、拾い読みをしている最中。けっきょく、『あるいは牡蠣でいっぱいの海』は、『あるいは牡蠣のいるどんな海も』じゃなくって、『さもなくば海は牡蠣でいっぱいに』となったわけですね。"Or all the seas with oysters"の訳として、内容的にはいちばんぴったしくるかも。
『ナポリ』は、実はさっと一読してさっぱり訳がわかっていないのですが、たいへん良い作品と思います。これが入ると、たしかに"Dagon"はちょっと入れずらいかな。いや、これも良い作品なんですけどねえ。「アジアの岸辺」「アメリカの七夜」あたりと通じる超絶技巧を駆使した異国情緒あふれる幻夢変身奇譚(何のことやら)。怪しげな中国の奇術師に金魚鉢の手品。いっそ高橋葉介によるマンガ訳ってのもいいかも。
ところで、緋色のイチジク、まだ来ないぞ。先日届いたカード明細ではきっちりと引き落とされていたぞ、7716円。たのむよっ、The Rose Press!
『不死鳥と鏡』と『エステルハージィ博士』シリーズを出せ!っと書いていたら、ファン交に元気なお姿を現されみんなを仰天させた大森望さんの『現代SF1500冊 回天編 1996〜2005』の『どんがらがん』評に同じことが書かれてましたね。まあ、みんな思いはひとつってことで。殊能センセーの語られる『エステルハージィ博士の事件簿』の魅力をどうぞ。
10/28, 2005
さて、明日は上京してSFファン交流会の10月例会「ラファティを語る〜『宇宙舟歌』の訳者を迎えて〜」です。国書刊行会の樽本さんから『宇宙舟歌』をご恵贈いただきました。どうも有り難うございます。拙サイトでも「勝手に広報部」ではありませんが応援ページを計画しております。これが売れたら、次も期待できるかもってことで、みなさん是非ともよろしくお願いします。私も解説の末尾に名前を入れていただき、舞い上がって親兄弟知り合いみんなに記念に買わせようと画策中。11/10(木)には柳下さんと浅倉久志さんのトークショーもあるとのこと。こちらはさすがに行けませんが、東京近郊の方はお忘れなきように。
殊能センセーからは、『どんがらがん』をご恵贈いただきました。どうも有り難うございます。こちらも解説の末尾に名前を入れていただき、舞い上がって親兄弟知り合いみんなに記念に買わせようと画策中。これが売れたら、次も期待できるかどうかはよくわかりませんが、最高傑作と名高い『不死鳥と鏡』や『エステルハージィ博士』シリーズなど、出るべき本はまだまだ山積みです。みなさん是非ともよろしくお願いします。
やっぱりというか何というか、"The Scarlet Fig"はまだ連絡なし。レセプトはすぐ来たんだけどなあ。心配しんぱい。
そうだ、国書刊行会から未来の文学第II期のパンフも送っていただいたのでした。それによると...やった! 浅倉さんセレクトでは、ネルスン・ボンドの"And, Lo! The Bird"が訳出されるよ。"伝説の究極的ナンセンスSF"『見よ、かの巨鳥を!』他、ジェイコブズの表題作『グラックの卵』、スラデックの『マスタースンと社員たち』、カットナー、テン、スタントン。一方、若島正さん編ではディレイニーの『ベータ2のバラッド』、エリスンの『プリティ・マギー・マネーアイズ』、キース・ロバーツ、ベイリー、カウパー。こちらも楽しみたのしみ。古沢嘉通さん編訳のプリースト短編集『限りなき夏』はドリーム・アーキペラゴシリーズを中心としたセレクション、ウルフのデス博士ものを中心とした『デス博士の島その他の物語』(さすがに、原著のように『デス博士の島その他の物語とその他の物語』にはしなかったのですね)、ベスターの『ゴーレム百乗』、ディレイニーの『ダールグレン』すべて必携ですね。
と言うわけで、明日の上京のため、今も延々と溜まった仕事をしています。ファン交中に居眠りしたらごめんなさい。
10/16, 2005
今月はやたら更新(当社比300%)していますが、これが書かずにいられるかって狂喜すべき出版予定の数々。
まずは、国書刊行会の出版予定。才野茂(STR)さんの京フェスレポから(10/11記載分)、キャロル・エムシュウィラー短篇集!!! 以前に企画のお話は聞いていたのですが、ついに! ああ、京フェスで樽本さんに具体的なお話を聞きたかったなあ。そろそろ、5年ほどほったらかしにしてあるエムシュのコーナーも更新せねば。それから、カルヴィーノにジャリにビオイ=カサーレスですか。浅倉久志エッセイ集と伊藤典夫評論集成も楽しみです。未訳ものはM.JohnHarrison,"LIGHT"とAlasdairGray,"LANARK"とか。
そして、昨晩寝る前にネット巡回していて飛び込んできた若島正さんのサイトで告知された早川異色作家短編集の新編集アンソロジーの驚愕のラインアップ!(読書日記10/15) アヴラム・デイヴィッドスン、スラデック、ラファティ、ライバー、ディッシュ、キース・ロバーツ、カーシュなどなど、すべて未訳短編とのこと。2007年春から夏刊行予定とまだ先の話ですが、いやあ楽しみ楽しみ。
『宇宙舟歌』と、『どんがらがん』は発売まで秒読みに入ってきましたね。ほぼ同時期(10/26)に発売される大森望さんの『現代SF1500冊 回天編 1996〜2005』にはなんとこの両方とも書評がはいっているとか。こちらも必読ですね。
10/10, 2005
"The Scarlet Fig"は、The Rose Pressから、「印刷中の残りが二週間以内に届く予定だから、この美しい本を発送するときまた連絡するよ」とのメールがきました。今度こそ、届くかな。
結局、京フェスは断念して、引きこもってずっと仕事してます。しくしく。それにしても、京フェスレポとか、あんまりあがってこないなあ。「未来の文学」企画とか、どんな新情報があったんだろうかなあ。やっぱりみんなmixiに行ってしまったのかなあ。←というように、ひきこもってると鬱になってくるんで、リベンジとして、SFファン交流会の10月例会「ラファティを語る〜『宇宙舟歌』の訳者を迎えて〜」にあわせて上京できないか画策中ですが、どうなることやら。
吾妻ひでおの「うつうつひでお日記」はコンプエースに移って連載中。ちょっと買いにくい表紙だなあ...。
10/6, 2005
さて、アヴラム・デイヴィッドスンの"The Scarlet Fig"ですが、業を煮やして先日Amazon.co.ukにメールで問い合わせ(去年の暮れに注文して、本も8月に出てるのに何で送ってこないんだ? 限定550部なんだから早くしてよプリーズ)したところ、すぐに返事が来て(すまなかったな、お詫びに送料無料にしてやるよ。詳細は2-3日後)安心しかけていたら、2日後に来た返事は、ごめんね、キャンセルになったよ、とのこと。原文は"We are sorry to report that the release of the following item has been cancelled..."で、リリースがキャンセルって出版が取りやめになったの?と思ったが、続けてさらに、ちょうどうちのマーケットプレイスに出品されてるからどうよ、だと。どういうことだよって出版社のサイトを確認すると、いつのまにかオンライン購入(PayPal経由)のページが整備されていて、Amazon.co.ukから買えるよって案内が消えているのを発見。何らかの理由でAmazonと決裂したのかも。まあ、自社のサイトでのみ販売した方が利益は大きいと判断したのかもしれませんが。
殊能センセーにも同文のキャンセルメールが届いたようですので、今頃Amazon.co.uk(ちょっと怒ってるんでリンクしてやんない)から予約していた方々はみんな頭にきてるんじゃないでしょうか。ともかく、しかたないんでThe Rose Pressのサイトから再注文をかけました。どうなることやら。
今週末の京フェス参加はほとんど絶望的。ああ、古沢さんのワイン部屋だけを楽しみにこの一年を過ごしてきたのになあ。本会企画の「SFファンのための世界文学入門」、合宿企画の「未来の文学」。ああ、行きたいなあ。
SFマガジンみていたら、SFファン交流会10月例会は「ラファティを語る〜『宇宙舟歌』の訳者を迎えて〜」。柳下毅一郎さんと林哲矢さんがゲストって、これ行きたいよっ!! 10/29(土)に東京...。まあ、無理だろうなあ。
とまあ、人生つらいことばかりですが、今月末には待望の『宇宙舟歌』と、『どんがらがん』が出ますので、よしとしましょう。
ところで、10/4にチャールズ・ハーネスが亡くなったそうで。(ローカス参照) えっまだ生きてたのか、と年齢をみると89歳! SFマガジンで追悼特集は...ないかなあ。『リタネルの環』とか、出ないかなあ。木戸英判さんの未訳作品紹介はこちら。
9/4, 2005
habuさんから短編ベスト3とコメントをいただきました。
国書刊行会から<未来の文学>第II期としてウルフの『デス博士の島その他の物語』、ベスター『ゴーレム100』 、プリースト『限りなき夏』、ディレイニー『ダールグレン』。浅倉久志編訳『グラックの卵』(ボンド、カットナー、スラデック、ジェイコブズ他)、若島正編『ベータ2のバラッド』(ディレイニー、エリスン、ロバーツ、ベイリー他)が告知されましたね。アンソロジー収録作の詳細が気になります。ちなみに、「グラックの卵」はハーヴィー・ジェイコブズの第一短編集表題作"The Egg of the Glak"ですね。ボンドはネルスン・ボンドの伝説のバカSF"And, Lo! The Bird"だったらいいなあ。
早川書房からは異色作家短編集がいよいよ再刊となるようで。スタージョンの『一角獣・多角獣』も出るんでしょうか。収録作では「熊人形」とかけっこう好きですね。そういえば、先に再刊されたアンソロジー『闇の展覧会』収録の「復讐するは…」もよくできた短編です。まだまだ短編集未収録のいい作品がありますが、晶文社ミステリの短編集第二弾はどんなラインナップになるのか愉しみです。
アヴラム・デイヴィッドスンの"The Scarlet Fig"、まだ発送の通知がこない...。The Avram Davidson Websiteでも発売中との告知がでたのになあ。殊能センセーは無事入手されたかしら。
8/9, 2005
ついに出たそうです。アヴラム・デイヴィッドスンの"The Scarlet Fig"。でも、Amazon.co.ukからはまだ発送の連絡こないなあ。
以前にリストアップしたまま忘れていた、短編集未収録の邦訳短編リストをアップしました。24作あるので、ぼちぼち短編集が出てもいいような。"大河の千の岸辺"や"田園の女王"、"昔には帰れない"といった名作が手軽に読めないのは寂しいです(と言っても、現在のところ"九百人のお祖母さん"ですら品切れ中という事態なので、こちらもなんとかしてもらいたいところ)。
7/12, 2005
ensemble.indexより。マイクル・コニイの"ハローサマー・グッドバイ"(サンリオSF文庫)(原題:Hello Summer, Goodbye, アメリカ版ではRax, カナダ版ではPallahaxi Tide)は入手困難な名作として最近でも時に話題にのぼりますが、なんと続編"I Remember Pallahaxi"の全文が著者のサイトにアップされています(194ページのPDFファイル)。著者のコメントによると、"ハローサマー・グッドバイ"はいろんな言語に翻訳され、長年にわたって驚くべき量のファンレターが届いているとのこと。また、British Science Fiction Associationでは70年代のベストに選ばれているそうな。(これについてはリンクが切れていて事実確認はできませんでしたが、このサイトでは1976年度のベストノベルに"ブロントメク!"が選ばれていますね) コニイは当初は続編を書く予定はなかった(主人公たちについて、書くべきことは書き尽くしたつもりだったから)が、ファンレターには続編の要望が強く(これはわかる気がするなあ)、かなり年数が経ってから執筆したとのこと。じゃあ、なんで出版されなかったのか? コニイによれば、執筆活動を止めてからかなり時間が経っており、コニイの作品を出そうとする出版社がなかったこと、また、すでに自分の作品がメインストリームから外れてしまったんじゃないかってことを理由として挙げています。実際、"ハローサマー・グッドバイ"ですら、再版されなかったそうです。だから、サイトで無償のダウンロードに踏み切ったんでしょうか。"ハローサマー・グッドバイ"も、"ブロントメク!"も読み継がれてよい秀作と思いますので是非とも日本での復刊を期待し、そこから続編の翻訳出版という流れができればなあ、と夢想する次第です。ちなみに、冒頭の数ページをざっと眺めてみますと、"ハローサマー・グッドバイ"の主人公カップルはいまや遠い昔の伝説となっています。そこでは、稀に顕れる茶褐色の眼は賛美される特質となっており、おそらくは伝説のブラウンアイズを想起させるからだろう、とのこと。ブラウンアイズ萌えの方には残念ですが、いや、まだ先を読んでみないことにはわかりませんぞ。レッツ・トライ!(←いつもながら、無責任だなあ)
アヴラム・デイヴィッドスンの"The Scarlet Fig"はまたもやまたもや延期の告知が。今度は7月下旬の刊行予定となっています。どんがらがんは9月予定らしいですが、どちらが先に出るのでしょうか。
7/1, 2005
殊能センセー編のどんがらがん、いよいよゲラがあがってきたとのことですね。豪華な訳者陣(浅倉久志、若島正、中村融、伊藤典夫、深町眞理子)には驚きですが、アヴラム・デイヴィッドスンの翻訳にはこのクラスの翻訳者が必要不可欠ということなのでしょう。SPRAD60にて公開中の殊能将之センセーの特別インタヴュー記事は必見!
ところで、今回の新訳では"Or All the Seas with Oysters"の訳題は「あるいは牡蠣のいるどんな海も」なんですね。筒井康隆の「あるいは酒でいっぱいの海」のようなパロディ・タイトルもいずれ通じなくなっていくんでしょうかねえ。
6/23, 2005
とべ、クマゴローの大熊さんからMusical Batonがまわってきました。せっかくですのでお答えさせていただきます。
1:Total volume of music files on my computer (コンピュータに入ってる音楽ファイルの容量)
12.87GB, 3651曲。iPodとシンクロさせてます。
2:Song playing right now (今聞いている曲)
このところはMoonridersの新譜P.W Babies Paperbackをヘビーローテーション中。K1氏の"親愛なるBlack Tie族様、善良なる半魚人より"がお気に入りです。
3.The last CD I bought (最後に買ったCD)
KraftwerkのライヴMinimum-Maximum
4.Five songs(tunes) I listen to a lot, or that mean a lot to me (よく聞く、または特別な思い入れのある5曲)
Moonridersは絶対外せません。一曲を選ぶのは難しいのですが、"Don't trust anyone over 30"を。30代も残り僅かとなった今、「24時間砂を食べていたい」気分が理解できるときも。
洋楽では、XTCを。学生時代に輸入レコード屋で12インチ盤(B面にしか収録されてない曲とかやたら多かったなあ)を血眼で漁ったのも遠い昔になりました。アンディの曲かコリンの曲か悩むところですが、アンディ・パートリッジの"Dear God"を。
いわゆるYMO世代の私は、学生時代は軽音楽部で坂本龍一なんか演っていましたが、実は細野晴臣派でした。アイドルからお笑いタレントまで幅広く名曲を提供してきた細野さん作品から一曲。なぜかCD化されていない(と思う)安野とも子の12インチ盤La Musique Exotiqueから、"SUR LA TERRA"。ホソノ・マジックの効いた、とにかく気持ちいい曲です。
女性ヴォーカルでは、矢野顕子を一曲。ハズレなしの名作アルバム"ごはんができたよ"から、"また会おね"。
ああ、あと一曲しか選べない。そうだ、たまの"ロシヤのパン"。イカ天(イカすバンド天国)という番組ではじめてこの曲を聴いたときは鳥肌がたったものです。
音楽に対する思い入れは、小説以上に説明が難しく、共感を得ることはさらに困難と思います。学生時代にバンドで演りたい曲を持ち寄ってあれこれ言い合っていた頃の気分を想い出しましたが、これはという一曲が好評をもって採用された時の嬉しさはたまらないものがありました。元来、自分の気に入ったものを人にもオススメしたくなる質ですので、今は気に入った作品を選んで翻訳して配ったりしているわけですが、好評をいただいた時の至福といったら!
話を戻して、5.Five people to whom I'm passing the baton (バトンを渡す5人)
これは難しい。もともと知り合い少ないし、だいたいここ読んでるひとってほとんどいないような。まあ、ラファティ・ファンサイトってことで、ラファティつながりでリンクさせていただいている方を挙げさせていただきます。ご無沙汰している方が多く申し訳ございませんが、ご興味なければスルーしていただければ、と。
林哲矢さん
加藤隆史さん
木戸英判さん
スーガク者の河本さん
雀部陽一郎さん@Anima Solaris
6/9, 2005
アヴラム・デイヴィッドスンの"The Scarlet Fig"はまたもや延期の告知が。今度は6月半ば刊行予定となっていますが、旧サイトのほうでは、「現在印刷中で、6/10に刊行予定」となっています。都合半年も延び延びとなってますが、今度こそ出るんでしょうかねえ。
6/2発売の『monoマガジン』では、山本弘さんが連載「SF者の本棚」で吾妻ひでお『スクラップ学園』を熱く語っています。SF者必読の名作マンガですので、是非とも一読を。
山本弘さんと言えば、早川書房より7月上旬発売の「火星ノンストップ」も愉しみですね。ジャック・ウィリアムスンの表題作をはじめ、マレイ・ラインスター「時の脇道」やC・L・ムーア「シャンブロウ」など、「トンデモ本? 違う、SFだ!」で熱く語られていたあの作品たちがSFMのバックナンバーを漁らずとも手軽に読めるのは何より。(ダニエル・F・ガロイ「今宵、空は落ち…」とかトム・ゴドウィン「発明の母」とかが入ってないのは残念ですが、続刊に期待したいところ) なお、アヴラム・デイヴィッドスンの「あるいは牡蠣でいっぱいの海」も「トンデモ本? 違う、SFだ!」でオチまで含めて詳しく紹介されています。殊能センセー編の『どんがらがん』収録予定ですので、未読の方は早まって読んでしまわないよう、気をつけてくださいね。
5/16, 2005
けんけんさんから短編ベスト3とコメントをいただきました。クレイグ・ストレート(らっぱ亭奇譚集その弐に訳出)検索から拙サイトにおいでいただいたそうですが、もっと紹介がすすんでもよい作家のひとりですね。
そういえば、ローカス5/3よりヨゼフ・ネスワドバの逝去を知る。享年78。「吸血鬼株式会社」が比較的良く知られているかな。なお、キエフ旅行中に倒れ人工呼吸管理となっていたロバート・シェクリーは回復中とか。(作品と作家は別とは思いつつも、昔に思い入れの深かった作家たちのニュースにはついつい反応してしまいます)
訃報といえば、F.M.バズビーの訃報は細井威男さんによるSFマガジン5月号の世界SF情報でも取り上げられていました。「邦訳数は少なかったものの珠玉の作品で日本のファンの心を捉えた」とのくだりには強く同意いたします。
SFマガジン5月号といえば、山本弘さんの掲載作解説のところで、クラシックSFアンソロジー「火星ノンストップ」がこの夏刊行との予告が。「トンデモ本? 違う、SFだ!」で熱く語られていたあの作品たちが手軽に読めるようになるのは愉しみなことです。(まあ、ほとんどの作品は実家か押入れかどこかにあるはずなんですが...)ところで、山本弘のSF秘密基地では、6/2発売の『monoマガジン』連載「SF者の本棚」で吾妻ひでお『スクラップ学園』をプッシュ!とのこと。こ、これは読まねば。私のオールタイムベストのSFマンガなのです。
吾妻ひでおといえば、失踪日記は10万部を越すヒットとなっており、comic 新現実での連載も快調ですが、谷山浩子作詞・吾妻ひでお作画の「輪舞」復刻版が「SFアラモード」より通販で買えるとのこと(5月下旬より)。早速、注文しようっと。
4/21, 2005
Tachyon Publicationsより刊行されたキャロル・エムシュウィラーの短編集"I Live with You"が届く。カバーイラストは亡き夫のエド・エムシュ。収録作は2002-2005に発表された近作ばかり13編。すべて、80歳を越えて発表された作品とは、いやはや、恐れ入ります。また、長編Carmen Dogも再刊されました。表紙が可愛いですね。この勢いにのって、主に50年代にF&SF誌等に掲載された短編集未収録のSF作品を復刻してくれないでしょうかねえ。
4/7, 2005
North Atlanticから刊行中のスタージョン短編全集。(若島正さんによる紹介はこちら。また、ありがたくも邦訳と対比した掲載作一覧はこちら)全10巻と思っていたのですが、最新の10巻"Man Who Lost the Sea"の収録作は60年代初頭まで。まだ続くのでしょうか。
Midnight Houseのライバーの短編集
Horrible Imaginingsが届いたのですが、完売したようです。ただ、最初に出た"The Black Gondolier"はペーパーバックで廉価版が出てますので、先に完売となった"Smoke Ghost"とも、ペーパーバック落ちするかもと期待中。
アヴラム・デイヴィッドスンの"The Scarlet Fig"はまたもや延期。なぜか旧サイトのほうで4/23刊行予定と告知が。(←本日夕刻に訂正しました。やっと出るみたいですよって誰に言ってるんだか)
吾妻ひでおの失踪日記(イースト・プレス)、売れてるようですね。「産直あづまマガジン」(3,4,増刊)も公式サイトから注文できるようになってますので、是非ともこの機会に。
3/13, 2005
木戸英判さんから、ソーニャ・ドーマンが亡くなったことを教えていただく。ローカス2/24の記事によると、2/14没。享年80歳とまあ大往生といえましょうが、最近のエムシュ(84歳!)の活躍や、キット・リード(73歳)、ル・グウィン(76歳)、アン・マキャフリー(77歳)、ケイト・ウィルヘルム(76歳)などなど、現役で頑張ってる女流作家たちをみていると、SF界でもっと活躍してもらいたかったです。活動期間は60年代から80年まで、F&SF誌を中心に20作あまりの短編を発表し、ジュブナイルの長編が一冊ありますが、短編集は刊行されていません。邦訳は二作(ぼくがミス・ダウであったとき、おかしな配属)のみですが、特に前者は忘れがたい作品です。追悼の意をこめて、そのうち一作訳してみようと思います。
何気にローカスを読み進めていたのですが、F.M. Busbyも2/17に亡くなっていたんですね。享年84。「ここがウォネトカなら、きみはジュディ」も忘れがたい作品ですね。
3/2, 2005
今週からECR(欧州放射線医学会)出張。例によって、準備はまだ終わらない...。
ところで、三月になりましたが、まだ"The Scarlet Fig"は出てないみたいですね。まあ、いつ読むか(いや、ちゃんと読むかどうかさえ)定かではないのですが。
ふと本屋で見つけたcomic 新現実 vol.3。特集・吾妻ひでおの「現在」としてインタビューに新連載「うつうつひでお日記」(先日通販で買った「産直あづまマガジン」増刊の続き)が掲載されています。更に、次号から「夜の魚」も新連載とのこと。3月上旬発売予定の「失踪日記」(イースト・プレス)も楽しみ。
古沢嘉通さんが洋書大処分予定とのこと。先日も段ボールいっぱい(15kg!)の洋雑誌を譲っていただいたのですが、また飛びついてしまいそうな...。(あ、でもまだ出張中かな)
2/11, 2005
SPRAD60で、殊能センセー入魂の『どんがらがん』解説からアヴラム・デイヴィッドスンの小伝が転載されていますね。はやく出ないかなあ。(なんか最近、ラファティの話題が出てないような...)
2/9, 2005
なかなか発送の連絡こないなあ、と思っていたら、アヴラム・デイヴィッドスンの"The Scarlet Fig"は「2月末刊行予定」と延期されていました。ちなみに、2月刊行予定だったファーマーの作品集は3月末に延期。
もひとつ通販。私はムーンライダーズの古参ファンなのですが、ギター担当の白井良明とヴァイオリンなど担当の武川雅寛のユニット「ガカンとリョウメイ」のDVD「江戸ィな僕らのコラボリズム・イカシタ三夜」。限定生産とのことで慌てて予約。
これもTrashCanExtra経由で知ったライバーの短編集
Horrible Imaginings。Cold Tonnage Books経由で注文しました。40年代からのWeird Talesなどに発表された単行本未収録作を中心とした作品集とのこと。
2/7, 2005
あいかわらず学会やら抄録やら原稿やら、〆切の嵐にへろへろとなっておりますが、こういう時はついついネットショッピングにはまってしまいます。
TrashCanExtra経由で買い逃していた吾妻ひでお「産直あづまマガジン」2-4号と増刊「うつうつひでお日記」が通販可能なことを知り、無事入手できました。ご参考までに、1冊1000円で、無記名定額小為替と送料の切手(1冊200円、2-3冊390円)、宛名カード同封で〒178-0064東京都練馬区南大泉2-13-14 アズママガジン社まで申し込みとのこと(2005/1/1時点での情報)。
唐沢なをきのパチモンへの愛情あふれる「パチモン大王」vol. 1, 2も入手。通販はこちらから。
通販といえば、アヴラム・デイヴィッドスンの"The Scarlet Fig"はいまだ"1月末刊行予定"のままですね。発行元のThe Rose Pressの新しいサイトから通販可能、もしくはamazon.co.ukから注文できます。現時点でブライアン・オールディスの新作長編"Jocasta"が発行済み。フィリップ・ホセ・ファーマーの"PEARLS FROM PEORIA"は2月末刊行予定。これは大部分が未発表の60以上の創作、実話、詩作、自伝等を集めたものだそう。
まあ、以上はそれほど高価なものではないのですが、先日ついつい17インチPower BookG4を注文してしまいまして...。いや、家で寝ころんでスライドを作成するのに大きな画面が必要だし...。欲しかったMacMiniもiPodShuffleも諦めたし...。(←誰に対する言い訳なんだか)
1/10, 2005
今週末は関西GURというマニアックな研究会(泌尿生殖器の画像診断に関する研究会)で、何でもいいから一時間喋れとのお達しがあり、『女性骨盤部画像診断のピットフォール −私が落ちてきた落とし穴たち−』という自虐的なネタを作成中。相変わらず年末年始もあったもんじゃない修羅場のまっただ中です。
アヴラム・デイヴィッドスンの"The Scarlet Fig"は、1月末発売予定。SPRAD60経由でAmazon.co.ukで予約受付中と知り、早速予約しました。送料込みで?40弱。8000円弱ってところか。高っ!
加藤隆史さんの似非SF系日記更新時刻にも捕捉された模様。
Tachyon Publicationsより、キャロル・エムシュウィラーの短編集"I Live with You and You Don't Know It"が4月刊行予定。カバーイラストは亡き夫のエド・エムシュだそう。他にも7月刊行のテリー・ビッスンの短編集"Greetings"とか、ティプトリー賞受賞作アンソロジーやオールディスの短編集とか。
1/7, 2005
遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
ささりんどうさんから短編ベスト3とコメントをいただきました。ヴェリコフ・ヴォンクのファンとか。うーん、渋いなあ。
12/22, 2004
ラファティを原書で読んでみようって方(←いるのか?)にひとつ警告です。R.A. Lafferty Devotional Pageのフォーラムで、Wildside pressから再刊された"Not to Mention Camels"に2ページの落丁(p196-197)があって、取り替えても同じだったとの書き込みがありました。私の所持している版でも同様の落丁が確認され、現在の版では総て落丁している可能性もあります。Bobbs-Merrill社の初版では落丁はなかったので、これから購入予定の方はネット古書で買う方が安全かもしれません。(今検索してみると、$7-8からけっこうでていますので、送料を入れても$16の再刊とあまり変わらないようですし)
フォーラムから拾ったラファティ逸話をひとつ。Michael CassuttがどこかのSF大会でラファティに会ったときのエピソードです。杖をついて、脚が不自由そうなラファティは、派手な赤いシャツを着た70過ぎの妖精じみた老人で、ロビーをゆっくりと歩いて、坐っているCassuttの前を何度となく通り過ぎて行きます。いったいどこに行ってるのか気になったCassuttが後をつけてみると、ホテルのバーに入ったラファティは苦労して椅子に座ると、ビールを一杯飲み、また難儀そうに立ち上がってバーを出ました。これを何度も何度も繰り返しているのです。不思議に思ったCassuttnはラファティに話しかけ、ファンですと自己紹介してしばらく談笑した後に、訊ねてみました。「何か、秘密の訳でも?」ラファティちらりと眼を輝かせて、曰く「いや、紳士はバーに長居するもんじゃないからね」
やや怪しい訳で申し訳ありませんが、酒好きのラファティらしい逸話です。原文はこちら。
12/13, 2004
原書リストに久々に一冊追加。"Long Teeth"初出のKeyhole Mystery Magazine。どのディレクトリに何が入っているのか既に把握できなくなってきており、更新も一苦労です。刊行年代順リストでみると、初期作品の掲載誌(New Mexico Quarterly Review、Literary Review、Husk Magazine、Artesian Magazine、Collage Magazine)など非SF系の雑誌や、ファンジン等はやはり入手困難です。(いや、私は別にマニアじゃないんで、総て集めようなんて思ってませんよ、古沢さん)
「らっぱ亭は健在なり」は京フェスで配りつくしてしまいました。掲載作「絶滅危惧種」(Endangered Species, Galaxy, '74/5)はらっぱ亭奇譚集その参(でるのか??)に再録予定ですが、どうしても早く読んでみたい、という奇特な方は、メールにてご連絡ください。
そういえば、アヴラム・デイヴィッドスンの"The Scarlet Fig"(550部限定)は、1月発売予定に延びた模様。 支払い方法はpaypalもしくはcheck(UK?/US$/Australian$)で、送料はsurface mail(4-8weeks)$5、airmail(7days)$12.5。(←誰宛の情報なんだか)
11/27, 2004
というわけで、京フェスに行ってきました。合宿に4時間ちょっと参加できたのですが、結局ずっと古沢嘉通さんのワイン部屋に居座り続けていました。国書刊行会の樽本周馬さんや才野"STR"茂さん、たこいきおしさんたちと部屋の隅でワインをいただきながら歓談しているうちにお開きの時間に。カエレコール(笑)もあり、なんとか完成した手抜きコピー冊子「らっぱ亭は健在なり」の残部を樽本さんに託して、早抜けさせていただきました。樽本さん、お世話になりました。ご挨拶できなかった方々、どうも申し訳ございませんでした。古沢さん、毎年ながらどうもごちそうさまでした。
そして、明日からは北米放射線学会。ずいぶん早くから準備にかかっていた筈なのに、私の指導分のポスターが完成したのはつい先ほど。実は、京フェス合宿を抜けた後もホテルの部屋に戻って朝方までインチキな英文をひねくりだしていたという。秋の京都観光もほとんどできませんでした(←自業自得)。
アヴラム・デイヴィッドスンの魔術師ウェルギリウスシリーズの最終作"The Scarlet Fig"(550部限定)は、The Rose Pressから12月発売予定で、価格は?29.95/US$49.95とのこと。詳細はここ。
ところで、以前に話題にしたラファティの未確認短編"Last Laugh"ですが、このたび「らっぱ亭は健在なり」に訳出した「絶滅危惧種」(Endangered Species, Galaxy, '74/5)がもしかしたら完成稿なんじゃないでしょうか。"last laugh"という単語が重要なキーワードとなる作品なのです。まあ、真相はタルサ大学マクファ
ーリン図書館のラファティ・コレクションで現物にあたるしかないような。
11/13, 2004
来週末は京フェス2004ですね。たぶん合宿のみ参加できそうですが、今年も2-3時間くらいかなあ。「らっぱ亭奇譚集その参」はやっぱり無理でしたが、ラファティ軽めのスラップスティック短編「絶滅危惧種」(Endangered Species, Galaxy, '74/5)を合間をみて翻訳中。手抜きコピー冊子「らっぱ亭は健在なり」、もし間に合えば古沢嘉通さんのワイン部屋に手みやげとして持っていけるかも。
11/1, 2004
殊能センセー選の「どんがらがん」が楽しみなアヴラム・デイヴィッドスンですが、'91に発行された短編集"Adventures in Unhistory"はネット古書でも品薄で、サイン本を500-1000ドル程度で見かける程度。とても手が出ません。以前にTor Booksから再発との話がありまして、検索してみるとなぜかアマゾン・カナダで予約が開始されていました。2005, 11/28 (ISBN:076530760X)とのこと。そういえば、今月は魔術師ウェルギリウスシリーズの最終作"The Scarlet Fig; or, Slowly through a Land of Stone"(550部限定)がRose Pressから発刊予定でした。予約しておいたほうがいいのかなあ。
10/20, 2004
古沢嘉通さんのTrash Can Extra経由で京フェス2004本会企画。「ウェアラブルコンピュータが変える世界」、「長谷敏司インタビュー」、「国書刊行会『未来の文学』企画」(いずれも仮題)。今年も何とか合宿(て言うか古沢さんのワイン部屋)には顔出しできそうですが、昼間はちょっと微妙かも。『未来の文学』だけでも聞きたいなあ。
ラファティ@2ちゃんねるをみていて、短編集未収録作の話題が出ていたので、ちょっとリストアップしてみました。(雑誌・アンソロジー収録作で、ファンジンは除く。カッコ内は訳者)
いなかった男、今年の新人、ゴールデン・トラバント、すべての陸地ふたたび溢れいずるとき、大河の千の岸辺、田園の女王、ファニーフィンガーズ、ファニー・フェイス殺人事件(浅倉久志)
崖を登る、行間からはみだすものを読め、素顔のユリーマ(愚者の楽園)、小石はどこから、そして、わが名は、月の裏側、パイン・キャッスル、ぴかぴかコインの湧きでる泉、昔には帰れない、楽園にて、忘れた偽足(伊藤典夫)
空(スカイ)(大野万紀)
何台の馬車が?(牧 眞司)
知恵熱の季節(柳下毅一郎)
恐るべき子供たち(深町眞理子)
ほとんど完全殺人(新津兼義/汀一弘)
以上、24作品です。新刊で入手可能と思われるのは、素顔のユリーマ収録のロボット・オペラ(4935円ですが...)と空(スカイ)収録の20世紀SF(4)くらいでしょうか。あと、SFマガジンの追悼特集号(2002/8)(月の裏側、すべての陸地ふたたび溢れいずるとき、ファニーフィンガーズ、何台の馬車が?、知恵熱の季節)はバックナンバーがあるようです。収録雑誌・アンソロジーは林哲矢さんの素晴らしい邦訳リストをご参照ください(と、つい手抜きをしてしまう)。
向井さんのSF系日記更新時刻Rに捕捉された模様。ちょっと嬉しい。
10/15, 2004
ラファティ特集@復刊ドットコムにジュディス・メリルの「SFに何ができるか」が登録されたのを知り、なんでかなと当該ページを見てびっくり。掲載された目次の第11章に「ディレーニイとラファティ」とあるではないですか。この本はたしかに買った記憶はあるのですが、当然ながら読んだ記憶はなく、本棚の奥か押入の中かはたまた実家に積み上げた段ボールの中か、まったく見当がつきません。何とか発掘しなければ。ちなみにイースターワインに到着は58票、悪魔は死んだは38票、子供たちの午後は37票。じわじわと伸びてはきていますが、なかなか100票までは遠いですね。
9/29, 2004
tontataさんから短編ベスト3とコメントをいただきました。
若島正さんの東大での集中講義「英米のSF短篇を読む」では、ラファティ「町かどの穴」が選ばれたとのこと。ディレイニーのコロナ、スタージョンの海を失った男、スラデックの古カスタードの秘密など全18編のレシピはこちら。受講したかったなあ...。
9/20, 2004
ケロちゃんアンテナを設置するも、ReviewWikiとかblogmapとかはカウンタ等の更新をひろってしまうようで、もう少し設定が必要か。abaiaさん、大熊さん、えに熊さんあたりはケロちゃんからSFマガジン特集やその他の作品まで分析が進んでいっており、目が離せませんね。なお、若島正さんと柳下毅一郎さんのケロちゃんトークショーが掲載されたeとらんす10月号は必読。
9月初旬はスーガク者の河本さんの浪速オフに参加。大熊さん、アレクすてさん、はるひさん、小林泰三さんが参加されたのですが、話上手な小林さんと聞き上手なアレクすてさんの会話に聞き惚れるだけでほとんどしゃべらずに4時間が過ぎ、別用があって先に辞させていただいたのですが、聞くところによればさらに3時間も盛り上がっていたという、いやはや恐れ入りました。愉しかったので、また機会があれば参加したいです。
大量蔵書処分中の古沢嘉通さんから、F&SF誌やアシモフ誌のバックナンバーを小さめの段ボール4箱分譲り受けてしまいました。有り難うございました。埋もれた傑作を発掘できるかしら(←本当にちゃんと読むんだろうな)
SFマガジンウルフ特集号掲載のアメリカの七夜は浅倉久志さん訳ですが、浅倉さんと言えば文源庫から遊歩人に訳載されたショートショート集「ミクロの傑作圏」が一冊にまとまっています。(以前は小冊子で第一集が出ていたのですが、第二集分と併せてハードカバーとなっています)ここから注文できます。SFマガジンの「浅倉久志セレクション」も好調で、嬉しいかぎり。もっとラファティも訳していただきたいものです。
8/20, 2004
R.A. Lafferty Devotional Pageで、短編リストの更新があったのでチェックしてみました。びっくりしたことに、聞いたことないような作品名がずらり。"Ahoy the Whale"、"Dig a Crooked Hole"、"The Eight Minds of Doctor Caper"などなど、それらしいタイトルばかりです。慌てて、とりあえず"The Eight Minds of Doctor Caper"でぐぐってみると、以前にも紹介しましたタルサ大学マクファーリン図書館のラファティコレクションのページが引っかかってきました。いつのまにか内容の細かいリストがアップされており、'79にラファティから寄贈されたリストに、2001年の追加寄贈分が多数追加されています。未刊行の作品集や短編群、コスキンシリーズやIn a green treeシリーズの未刊行分、書簡等(浅倉久志さんや牧眞司さんの名も。また、"Tanaka Yoshiyuki"さんがファンジンへの翻訳をちゃんと連絡されていたことを知り感服)。受賞トロフィーの項にはヒューゴー賞や世界幻想文学生涯功労賞に混じって星雲賞のもちゃんと所収されています。ああ、閲覧しに行きたいなあ。
ざっと見てみますと、未刊行分としては以下の通り。
コスキンシリーズの未刊行分(Sardinian Summer/First and Last Island)
"Glad Rags and Rimes"(209P: Dottyからの抜粋、 In a Green Treeからの詩(rime)抜粋、エッセイなど)
In a Green Treeシリーズの未刊行分(Deep Scars of the Thunder/Incidents of Travel in Flatland, アナウンスされていなかった第5部1978-1990のタイトルはIn the Akrokeraunian MountainsまたはIn the Thunderbolt Mountainsだそう。完成してなさそうですが)
"The Man Underneath: Stories Out of the 'Ocean'"(他人の目、何台の馬車が?等々、比較的初期の作品が収録されている)
"Six Fingers of Time"(時の六本指、スナッフルズ、レインバード等を収録。"One Minute Before", "Before It Be Gone", "Saecula Saeculorum.”, “Barefaced Dream.”, “Mater Inventorum.”が未知のタイトル)
"The Stranger from Beyond the Sky"(詩集:表題作の他、All the Boundless Ocean"など)
それから、作品のリストには聞いたこともないようなタイトルが続々と出てくるのですが、これはエッセイや詩も含んでおり、タイトルが変更された作品の旧題も挙げられています。個々の作品について完成日時や旧題(例えば、「アダムには三人の兄弟がいた」の旧題は“Is He a Wreck.”)が記載されています。
未刊行中篇としてはCIVIL BLOOD.(中篇164P)と、THE GREAT RATCHET OF SUMATRA.(Sharon Scottとの合作)。未刊行短編(断片や未完を含む)のタイトルを列記しますと、“Ahoy the Whale.”, “The All-Star Series.”, “And Fungo Wood and Crackerjacks.”, “And Seven Scenes from Sheol.”, “Blood Off A Knife.”, “Bridlegoose.”, “The Case of the Moth-Eaten Magician.”, “Chombo.”, “Chromancy Story.”, “Claudius and Charles.”, “Club Mentiros.”, “Communion of Saints.”, “Condition Quick, a Dialog for Two Dia-Persons.”, “Dig a Crooked Hole.”, “Dutch Master.”, “Dynamized Today.”, “The Eight Minds of Doctor Caper.”, “The End of the End.”, “End of the Line.”, “Fish-Hooks of Hesebon.”, “Get Off the World.”, “Girl of the Month.”, “Give It Back.”, “Glaciation.”, “Good Creatures, But So Slow.”, “The Grand Carcass.”, “Great Green Goat.”, “Green River Cave.”, “Hand of the Potter, An Idyll.”, “Handful of Fire.”, “Haunter of Moons.”(C. J. Cherryh, Stephen Kimmelとの合作), “Hooligs.”, “How Long Yet.”, “I Don’t Like You.”, “Johnny Crookedhouse.”, “L H.”, “Last Laugh.”, “L’Avare.”, “The Long Afternoon.”, “Men Who Didn’t Believe In Magic.”, “Milly.”, “Needle.”, “Nostos.”, “Old Wineskin.”, “Other Kind of Animal.”, “Out of the Molasses Trap.”, “Pamponia.”, “Panic Flight.”, “Poor Man’s Guide to Hell.”, “Reach Out, Reach Out.”, “Red Headed Furture.”, “The Rod and the Ring.”, “The Saving Grace.”, “Seven Talents.”, “Sex and Sorcery.”, "Snake Cabin", “Symposium Two.”, “T. F.58 1/2.”, "Tell It Funny, Og", “There’ll Always Be Another Me.”, “These Hopeful Treasons.”, “Thousand Dollar Melon.”, “Three for a Quarrel.”, “Three Men in the Morning.”, “Told As Twilight Falls.”, “The Vanquished.”, “Vestige.”, “Werewolf’s Right of Passage.”, “Whittle Come Back.”
そそられるタイトル群ですねえ。謎なのは、“The Grand Carcass.”で、'74に著作権取得の短編とあり、'62の“This Grand Carcass Yet.”とは別作品のような記載となっています。また、“Symposium Two.”は“Symposium.”の続編かとも思われますが、三行のみの断片のようです。
それから、タイトルの変更や改稿は以下の通り。
“And There Confuse.”(“A Special Condition in Summit City.”)
“Of Sunderd Men.”(クロコダイルとアリゲーターよ、クレム)
“Coals of Fire.”(“Tom Shanty and the Aura.”)
“Who Needs You Now?”("Crocodile")
“Crowded Where They Come From.”(千客万来)
“Let the Horse Out.”("Of Laughter and the Love of Friends.")
“Pantofag.”(ブタっ腹のかあちゃん)
“Sundown on the Roads.”(われらかくシャルルマーニュを悩ませり)
“The Taste of Pharmacopoeia-Five.”(“Gray Ghost: A Reminiscence.”)
“Tell and Gahn.”(この素晴らしい死骸)
“Teresa.”(究極の被造物)
それと、九百人のお祖母さんは、ノコマの九百人のお祖母さん(“The Nine Hundred Grandmothers of Nokoma.”)が元タイトル。これはノコマを取って正解と思いますね。
長篇では、Archipelagoの元サブタイトルは “A Fantasy at 3700 Angstroms” 。Reefs of Earthは、"The Raft"から改稿された“Or Altered World.”が元タイトル。短編“All Orbs and Oysters Lost.”は“The Shape We’re In.”に改稿され、最終的にArrive at Easterwineに組み込まれたとのこと。
作品の企画メモで、“Antonino Vescovo.”、“Hell to Pay.”、“Loup Garou.”、“Quest and Question.”、"Sommerville"、“Spongetown.”、“The Square Hills of Quintana Roo.”、“Purgatorio.”(7作収録の作品集)。ルー・ガルーって人狼ものでしょうか。スポンジタウンってのも気になるなあ。あと、ジョーク集の企画“The Twenty-Ninth Joke.”や、コンピュータ・プログラムの企画“Traitors of Tarnish.”なんてのも。
長々と書いてきましたが、いずれ別ページに整理します。ああ、疲れた...。
8/18, 2004
久々に原書入手。「このすばらしい死骸」初出のAmazing誌('68/11)です。原題"This Grand Carcass Yet"が、初出時はYetがない"This Grand Carcass"と判明。この情報のためだけにでも、40ドル(送料込み)は高くない。高くないんだったらっ!
8/12, 2004
青月にじむさんのサイトで、高橋源一郎の『文学王』にラファティの『シンドバッド、十三回目の航海』の紹介があったことを今更ながら知り、慌ててネット古書店を検索して取り寄せました。(青月にじむさんによる『文学王』紹介はこちら) おおっ、これはすごい。「ラファティの作品を紹介する文章」を読んで、「ラファティらしさ」のツボを押さえつつ、本当に面白そうだ、読んでみたいなあと思うことは残念ながら滅多にないのですが(拙サイトの紹介文が良くない典型ですね...)、流石と言いましょうか、あますところなくラファティ作品の魅力を伝えつつ、ラファティをあまり知らないひとでも読んでみたくなるような文章です。一部訳出もまじえて紹介されていますが、短い作品(全158ページ)だし、全訳していただけませんでしょうかねえ。
ケロちゃんこと『ケルベロス五つの首』のネット書評もいろいろと出そろってきましたね。文章の細かなところまで疑問点や問題点をcheckする詳細な分析も愉しめる作品と思います。(もちろん、分析しなくても愉しめるのですが)なかでも、ultan net: 新しい太陽の書のabaiaさんによる分析や、とべ、クマゴローの大熊さんによる分析。いずれもまだ途中ですが、先が楽しみです。
私もメモを取りながら第一部を再読してみましたが、細かな解釈についてはお手上げです。最も気になった点は、「わたし」がクローンとすれば、幼少時から麻酔療法検査を施して、いかなる情報が得られるのだろうか、ということ。「自己探求」のために質問に対する自己のクローンの反応をみる、という意味はあるかもしれませんが、尋問に対する長い「語り」(それもその後の「夢」の内容とリンクしているとすれば、「船」のシーンのような経験していない筈の経験を)引き出すことがあり得るかどうか。そこで、思いついたのですが、果たして、本当に「わたし」はクローンなのか?ということ。 「自己探求」の手段として、クローニング(通常のクローン、雌性のクローン)、「機械的」シミュレーション、生殖(デイヴィッド)と様々な方法がとられています。もし、これらがケルベロスの首に対応すると考えると、「父」メートルがクローンとして、さらに単なる代替わりのクローンとして「わたし」をつくる意味があるのか? さらなる首に象徴されるのは、「アボ」による「生物学的」シミュレーションとしての「わたし」ではないだろうか?
「第五号」の解釈のヒント(あるいは目眩まし)として、P33のジーニー叔母による「その数字は少なすぎもせず多すぎもしない。生きているのは、あの人とわたし、それにシミュレータも数に入れているんでしょう。」というセリフがあります。オリジナルを第一号として、シミュレータが第二号、父メートルと叔母ジーニーが第三・四号として、わたしが第五号とすれば、計算があうようです。ところで、ここは原文では「That number's either far too low or too high.」 私は「あまりにも少なすぎる、あるいは多すぎる」と解釈していました。売り飛ばされた多数の「失敗作」を勘定すればあまりに少ないし、父・叔母・シミュレータにわたしを足しても四人でひとつ多すぎる、という意味のセリフと考えたわけです。(いずれにせよ、第五号までが、五つの首と一対一で対応するかどうかは別問題ですが)
なお、不器用で道具がつかえないのがアボの特徴とすれば、「わたし」がアボと考えるのにも難がありますが、そうすればアボが人類になりかわったというヴェールの仮説自体成り立たないでしょう。ともあれ、私では、細かく分析してあるかも知れない「作者の意図する真相」に到達するのは無理そうです。
ミステリ者でなく、中途半端なSF者としての私がウルフを好きなのは、一読したあとの、足下が揺らぐような何ともいえない奇妙な感覚であり、「デス博士」「取り替え子」「In the House of Gingerbread」などが好みの作品なのです。その意味では、第一部はウルフの最良の短編のひとつとして私を魅了しましたが、第二部・第三部は第一部をより楽しませるための仕掛けとしての機能が大きく、連作としての「ケルベロス」は完成度が高い傑作と思いますが私的なオールタイムベストからは外れてしまう作品です。(←決してけなしているのではなく、私の趣味が一般的じゃないだけということ)
今日は殊能センセーの新作『キマイラの新しい城』で愉しいひとときを過ごしました。石動ものでは『黒い仏』と同じくらい好きかも。しかし、日記をみてたらいつ仕事しているんだろう(←大きなお世話)と思ってしまいますが、当然「書かれていないこと」が多いのでしょう。WEB日記もまた、一人称で綴られた「作品」なのですから。
8/8, 2004
ケロちゃん読了。殊能センセーによるこれはネタバレではない。なぜならこんなネタなどないからだ。とか、yama-gatさんによる『ケルベロス第五の首』トークショー・レポとか、書評Wikiとかで補完中。
いやあ、それにしてもいい時代になったもんだなあ。「未来の文学」第1期ではワトスン「エンベディング」、スタージョン「ヴィーナス・プラス・X」、ラファティ「宇宙舟歌」、ディッシュ短編集「アジアの岸辺」。第2期では、ウルフの「デス博士」シリーズ、ディレイニーのダルグレン(たぶん)、ベスターのゴーレム百乗(おそらく)、ティプトリーの長編、スラデックの短編集など、河出書房新社の奇想コレクション第2期では、ベスター、スタージョン、アヴラム・デイヴィッドスン、ヤングの短編集、晶文社でもスタージョンとイーリイの二冊目。
こうなると、どんどんと妄想は膨らんでいきます。まずはラファティ「第四の館」、そして山形さんによる「アーキペラゴ」(これは結構期待できそうな気が)、そして伊藤典夫さんによるオリジナル短編集(これは予定ありだそう)。
殊能センセー選の「どんがらがん」が楽しみなアヴラム・デイヴィッドスンはやっぱり「エステルハージィ博士」シリーズと、SPRAD60でイチ押しの「不死鳥と鏡」あたりを。
また、今秋の「乱視読者の新冒険」の刊行が楽しみな若島正さんのライバー短編集が流れたのは残念ですが、なんとか企画の復活を願いたいもの。それと、9月の東大での集中講義「英米のSF短篇を読む」を本に纏める予定はないのかしら。
それから、ロボット・オペラに柳下毅一郎さんによる「ロデリック」の抜粋が載ったのをきっかけに、ロデリック全訳と、他のスラデックの長編たとえば「機械生物」あたりを。
あと、女流SF作家短編選集(エムシュ、キット・リード、セントクレア、ケイト・ウィルヘルム、オクティヴィア・バトラー、パット・キャディガンなど)はどうかなあ。
7/28, 2004
ケロちゃんこと「ケルベロス第五の首」の発刊にあわせて、SFマガジン10月号はジーン・ウルフ特集! 待ちかねた"Seven American Nights"が浅倉さん訳で読めるっ!! そして、短編は"Against the Lafayette Escadrille"と、"In the House of Gingerbread"...ほとんどの方がお忘れでしょうが、一昨年の京フェス明けに予告したらっぱ亭その参で訳載予定とした作品です。ああ、訳さないでいてよかった...。(←ヲイ)いや、しかしツボをついてくるセレクトだなあ(柳下さんかしら)。6月には最新短編集「Innocents Aboard」も出たし、Amazon.co.jpでは9/30にEndangered Speciesも再発予定!!! ちなみに、邦訳短編では「取り替え子」(ザ・ベスト・フロム・オービット (上))と「デス博士の島、その他の物語」(20世紀SF4 1970年代 接続された女)が個人的に大好きな作品です。ファンサイトはこちらとか。
いや、しかしこのところバッティング多いなあ。エムシュの「ロージー」は半分くらい訳したところで翻訳出たし、ラファティの「何台の馬車が?」も取りかかる直前に載ったし。これは、私が訳しかけると、ちゃんとした訳が出るっていう特殊能力が身についたってことでしょうか。よし、次はデ○レ○ニ○のダ○グ○ンを...。
7/21, 2004
と言うわけで、短編リストのEurema's Damの項にロボット・オペラを追加。ついでに、こっそり「素顔のユーリマ」となっていたのを「素顔のユリーマ」に訂正。カタカナ表記って難しいなあ。
7/19, 2004
また、気がつけば二ヶ月がたっていました。相変わらず主たるコンテンツの更新はありませんが、ラファティ関連としては瀬名秀明さんの『世界最大のロボット・アンソロジー』ロボット・オペラに、「素顔のユリーマ」が収録されたのがニュースですね。この本には他にも、イドリス・シーブライト(マーガレット・セントクレア)の「胸の中の短絡」、キット・リードの「オートマチックの虎」、スラデックの「ロデリック」(抜粋)となかなかのセレクションです。
2ちゃんねるSF板のラファティ・スレッドは現在こちら。
本決まりとなった殊能センセー編の「アヴラム・デイヴィッドスン選集・どんがらがん」。1971年以降の作品も収録可となったもようで、大好きな「そして赤い薔薇一輪を忘れずに」が選ばれたのが嬉しいです。未訳のNaplesも楽しみ。
殊能センセーといえば、いよいよ7/25に発売となるジーン・ウルフの「ケルベロス第五の首」支援の「ケルベロス第五の首:勝手に広報部」。8/5に訳者の柳下毅一郎さんと若島正さんのトークショーが開催されるそうです。行きたいなあ...。
若島正さんといえば、9月に東大の集中講義でSF講座が予定されているとのこと。第8回のラファティはどの短編が選ばれるのかしら。聴講したいなあ...。
上記のイベントでは、「幻の傑作SFについて語られる」、とのことですが、これはケルベロス以外の未訳SFについても言及されるのでしょうかねえ。幻の傑作、といえば、AztecCabalより、スピンラッドのBug Jack Barron。ムアコックによるあとがきの抄訳が掲載されています。なんか、いいなあ。(情報元:ヘリコニア談話室より)
さらに、幻の傑作と言えば、古沢嘉通さんによると、ジョン・クロウリーのAEgyptは、いずれ早川書房から出版予定とのこと。また、『デ○レ○ニ○のアレが翻訳されるらしい』って、まさかアレってアレですか???
古沢嘉通さんといえば、「奇術師」愉しませていただきました。The AffirmationとThe Separationの出版企画が通りますように。
5/14, 2004
前回、2ちゃんねるSF板のラファティ・スレッドが落ちた、と書いたのですが、nocさんからメールをいただき、落ちていないことを教えていただく。サーバ移転に際して私が見失っていただけだとわかりました。現在はこちら。詳細は秘しますが、書き込みの316は必見。
Mint Julepから。イベント/海外文学メッタ斬り!(2004年5月11日)で大森望さんの発言を引用すると、『あと、隠し球といえば、既にウェブをよく見ていて勘のよろしい方々はうすうす勘付いてると思うけど、殊能将之氏がアヴラム・デイヴィッドスンを翻訳するかも』とあります。いよいよ殊能センセーの「アヴラム・デイヴィッドスン選集・どんがらがん」が実現しそうですね。
5/9, 2004
積み上げている原書や雑誌の山からアヴラム・デイヴィッドスンの旧作を掘り出し、12篇ほどコピーして殊能センセーに送りつける。当然、自分では全く読んでないので、短編考課表を見て、いずれ拾い読みする予定。そうかあ、どんがらがんに続編(Basilisk)があったのか。
どんがらがん、といえば以前に国際磁気共鳴医学会というMRIの学会がスコットランドで開かれたとき、余興のセッションとしてMRIの音をサンプリングして音楽や映像でプレゼンするって企画がありました。日本からは私がテクノポップ風の曲を出させていただき、タイトルは「どんがらがん」こと「Bumberboom」。「私の最も好きなSF作家のひとり、アヴラム・デイヴィッドスンの作品にちなみました」とコメントしたのですが、聴衆の中にわかったひとは果たしてひとりでもいたものやら。
学会といえば、この4月に横浜であった日本医学放射線学会のフィルムリーディングセッション(珍しい疾患のCT、MRIなどの画像をみて病名をあてるクイズ形式の企画)を当てられたのですが、2ちゃんねるで予想のスレッドがたっていたので、キャプチャした画面を引用したところえらくウケを取れました。放射線科医にも潜在的2ちゃんねらーが多い模様。
2ちゃんねると言えば、SF板のラファティ・スレッドは落ちてしまいました。宇宙舟歌の出版まで、ネタが続かなかったようですね。ちょっと残念。
5/2, 2004
ゴールデンウィークですが、自宅と大学を往復しながら〆切の過ぎた原稿執筆中。SFセミナー行きたかったなあ。アンサンブル会誌VWB10(Sci Fiction特集)にも寄稿したかったなあ。「犬は勘定に入れません」も「奇術師」も「フェッセンデンの宇宙」も手つかずだなあ。そういえば、「スペシャリストの帽子」も「ふたりジャネット」も「夜更けのエントロピー」も積ん読中だなあ。そういえば、ホームページの更新も翻訳も長いことやってないなあ。そういえば、本やCDの整理もやってないなあ。そういえば...。
私の荒んだ生活はさておき、最近の愉しみといえば、殊能センセーの河出書房新社・奇想コレクション企画案「アヴラム・デイヴィッドスン選集・どんがらがん」。実現するといいなあ。また、若島正さんもアヴラム・デイヴィッドスンまとめ読み中だとか。スタージョンの例もあり、二冊同時刊行!なんてことはないかなあ。(ゴーレム、あるいは牡蠣でいっぱいの海、どんがらがんと、目玉作品が限られてきそうなのでちょっと難しいかも。エステルハージィ博士もので一冊ってのも手かな)
国書刊行会からは、いよいよ6月より「ケルベロス第五の首」からはじまる「未来の文学」が刊行なるとのこと。若島正さんの推薦文が掲載されたパンフレットを請求すれば送っていただけます。ラファティ「宇宙舟歌」はいつになるかな。紹介文を転載します。「偉大なる〔ほら話〕の語り手:R.A.ラファティによる長篇第二作は異星をめぐって次々と奇怪な冒険をくりひろげる宇宙版『オデュッセイア』!SFというジャンルを飛び越え、どす黒いユーモアと幻想的ロマンティシズムに彩られた完全無欠の奇天烈な世界が展開する傑作」ISBN4-336-04570-4。
ストレス解消のため、を口実についつい通販にはまるこの頃。まずは、遊歩人に掲載中の浅倉久志さん編訳になる「ミクロの傑作圏1」。アート・バックウォルド、アラン・E・ナース、エドワード・D・ホック等の手になる12篇のショート・ショート集。ここから注文できます。最近はSFマガジンでも浅倉久志セレクションとして新旧の短編SFの翻訳が始まりましたが、思えば少年期の私が海外短編小説の面白さに目覚めたのも浅倉さんのおかげ。いまなお、こうして珠玉の作品を私たちに紹介していただける情熱とエネルギーには感服するしかありませんね。
「いちご実験室」が気に入ったので、山名沢湖さんの「ミズタマ」を購入。コミティアの通販ページから。
林哲矢さんの掲示板で知ってしまったNHKみんなのうたDVD12巻。知ってしまったからには...買ってしまいました。戸川純のラジャ・マハラジャを耳コピして大学祭で演奏したのも、もう20年前になるんだなあ。
横浜美術館ミュージアムショップでは、奈良美智グッズが有名ですが、私的にはボス、ダリ、ブリューゲルなどのリフティング・イメージがそそられるラインナップです。ダリの聖アントニウスの誘惑より足長の象さんモデルを注文してしまいました。気に入ったら、どんどん追加注文してしまいそうです。燃えるキリンも出ないかな。
4/4, 2004
大学院のK君がサーバーを入れ換えてくれました。これまではMacのパフォーマで、週に一回は爆弾マーク(いまどき!)が出てフリーズするという超旧型マシン+旧OSで細々とやっていたのですが、非常に安定性も良くなったようです。アクセス解析もできるようになり、検索語のチェックをしてみると...最多のものが"Playboy"。ラファティの"Rangle Dang Kaloof"収録の'72のプレイボーイ誌の書影にアクセスしてきていました。期待に添えず申し訳ないです。あと、"レースのパンティ”などでも。これはキャロル・エムシュウィラーの"peri"のレビュウですね。重ねて、申し訳ない。
若島正さんのサイトでは、読書日記のコーナーで「インファンテを読む」と題して連続講義がはじまりました。全篇駄洒落のHoly Smokeを課題として、翻訳トライをしてみたいひとは乱読掲示板に書き込むという形式です。まあ、山の賑わいにでもとトライしてみましたが、いやあ難しいです。解答をみるのが愉しみのような、こわいような...。
掲示板といえば、「文学賞メッタ斬り!」が面白すぎで、「犬は勘定に入れません」も楽しみ(Bellwether もでないかなあ)の大森望さんの新新大森なんでも伝言板では、「奇想コレクションへのリクエスト」というスレッドが盛り上がっていました。ライバー、セントクレア、スラデック、エリスン、ウルフ、アヴラム・デイヴィッドスン、ロバーツなどなど、私好みのリクエストが多々あるなかで、AMEQさんのエムシュとキット・リードのリクエストが嬉しかったのですが、大森さんによれば2-3000部の世界でしょうとの返答が。そんなものかなあ...。リサ・タトルとかどうですか?などと書き込もうかと思ってたのですが。あと、ケイト・ウィルヘルムはプリーストの「奇術師」刊行も楽しみな古沢嘉通さんのReview IKA #2刊行を気長に待ちましょうか。(らっぱ亭その参はどうなってるの?とのツッコミも入りそうですが...)
3/16, 2004
ふと気が付くと、また二月ほど更新が滞ってしまいました。木戸英判さんのホームページが移転とのご連絡をいただき、リンクを更新。拙サイトへのリンクもしていただいています。
1/20, 2004
何と、ラファティへのトリビュート・コンピCDが存在したっ! 360'recordsのエレクトロ部門ドリフタ−レーベルから"R.A.LAFFERTY TRIBUTE"のタイトルです。当該ページの紹介を転載させていただくと、『ドリフターレーベルが最高にリスペクトしている、R.A.ラファティへのトリビュート・エレクトロ&ファニーエレクトロニカ作品集。無人島おもちゃエレクトロニカのPIONY、女性音響作家<エレクトロ狂曲作家 ユーリカ、初期ゲームマシン音響エレクトロニカ プーカ、カチャマイでもアルバムリリース予定のスッポコスクラッチ音響エレクトロ パピコンゴが参加。「どろぼう熊の惑星」や「900人のお祖母さん」にインスパイアされまくった、というか一瞬で野人化する遊園地が呆然と視界に入る驚愕のエレクトロニカ集となってます。』とのこと。早速入手してみました。私のお気に入りはユーリカですね。また、360'records主催の虹釜太郎さんから、マイ・ベスト3をいただきました。コメントを追加させていただきます。
1/11, 2004
新年早々から講演やらポスター作成やら論文の翻訳チェックやらとあいかわらず修羅場なのですが、右手首を痛めてワープロ打ちもままなりません。発作的にラファティについての記事、エッセイ、序文、書評等をリストに纏めてみました。(逃避というよりは、やけになっているようです)まだまだ抜け落ちが多そうですし、未入手のものが多くやや信頼性に欠けるところもありますが。
12/28, 2003
「Thackery T. Lambshead Pocket Guide to Eccentric & Discredited Diseases」についてですが、アンサンブルのMLでHPがあることを教えていただきました。お遊びではじめたら話がどんどん大きくなってこんな本ができてしまった、というありがちな話だそう。
今年は公私ともにやけに忙しく、本サイトの更新もほとんどできませんでした。翻訳・原書読みどころか、日本語の読書もままならず、海外SFファンと名乗るのもおこがましい生活です。ファン活動としては、かろうじてアンサンブルの会誌VWBにエムシュのレビュウを書かせていただいたくらいでしょうか。(と言いつつ、拙サイトのエムシュの項は三年近くまったく更新していないという体たらく。ネビュラ受賞や新作発表など、ニュース満載の年でしたのに...。)
ラファティ関連で今年の総括を。国内では、柳下毅一郎さんによる「宇宙舟歌」の刊行予定(国書刊行会SF『未来の文学』)が告知されました。あとは、大きな動きはありませんでしたが、とりこさんの「竹本泉とラファティがお好きなら、レッツトライ」とのお勧めで、山名沢湖さんの「いちご実験室」を購入したのが少なくとも三人(私と内田昌之さんと、拙サイト経由であともうひと方)。ラファティの潜在的影響力を物語るエピソードでしょうか。内田さんの、『紹介文に「ラファティ」という単語をまぎれこませるだけで、その本の売上は自動的に百冊くらい増えるわけですね。今度のソウヤーはラファティっぽいぞ!(あ、予定がなかった……)』はよかったなあ。
復刊ドットコムのラファティ特集は現在イースターワインに到着44票、子供たちの午後28票、悪魔は死んだ27票。ちょっと伸び悩んでいますね。2chSF板のR.A.ラファティは細々と続いている模様。(最終書き込みは12/10)
海外では、YAHOO!のフォーラムで、ラファティ談話室が開設。英語のみ対応で、現在のところ23名が参加。元Crank!の Bryan Cholfinの書き込みもあり、一時はラファティとキリスト教との関係などディープな議論(たぶん。私はついていけなかったのですが)がかわされていました。
ラファティのファンサイト@ドイツのR.A.Lafferty Devotional Pageがリニューアル。特にBBSがフォーラム形式に一新され、旧BBSの投稿も移植されています。面白いところでは、ラファティ写真集。「痩せているのは顔だけだったのだ!」ってのがわかるやつもあります。また、人気投票では現在のところ宇宙舟歌がトップ!(全5票中の3票ですが)私はイースターワインに投票し、あと悪魔は死んだにも一票入っています)
ラファティを原文で読んでみたいんだけど、買ってまではちょっと...という方には、SciFi.comで無料で四作読めます。九百人のお祖母さん、巨馬の国、せまい谷、超絶の虎。レッツ・トライ!
12/8, 2003
北米放射線学会(シカゴ)から帰国。Bordersは結構SF・ファンタジー系が充実している本屋ですが、残念ながらラファティは在庫なし。(現時点で入手可能なラファティはほとんどがオンデマンド再刊本だから仕方ないのでしょうが) ティム・バートンの「オイスター・ボーイの憂鬱な死」原書と、Jeff VanderMeer 編の「Thackery T. Lambshead Pocket Guide to Eccentric & Discredited Diseases 」を買いました。後者は80年前に医学界のインディ・ジョーンズことラムシェッド医師が世界中を冒険して蒐集した奇妙な病気の解説本との体裁で、ニール・ゲイマン、マイケル・ムアコック、チャイナ・ミーヴィル、ジェフリー・フォードらが寄稿したイラスト満載の面白本。まあ、鼻行類や平行植物みたいな感じだと思うのですが。ちなみに、ジェフ・ヴァンダーミーアといえばLeviathanシリーズの編者ですね。アンサンブル系の方々に聞いてみようかな。
Serpent's EggがWildside Pressから再刊。Amazon.co.jpで入手可能(本日は¥1741)ですが、なぜかWildside Pressのリストにはまだ載っていません。なお、Wildside Press復刊本の何冊かには、以下続刊としてSerpent's EggとGolden Gate and other storiesがリストアップされていましたので、急がない方は後者についても待ってみるのも手かと(責任は持てませんが)。
11/12, 2003(京都SFフェスティバル2003)
京フェス本会は午前の若島正さんと大森望さんによる"シオドア・スタージョンの世界"を拝聴。若島正さんによれば、残念ながら、ライバー短編集はお蔵入り(理由は、アベレージは高いが決定打に欠ける、とのこと)。かわりに、やな話ばっかり(笑)のディッシュ短編集を予定されているのは楽しみです。最近は古いSFを読み返している、とのお話に、具体的な作家名を質問してみました。挙げられたのはアヴラム・デイヴィッドスン、キース・ロバーツ、ジョン・スラデック! 期待が高まりますね。(←私だけか?)
午後は伊勢丹で差し入れのチーズとかを買い込み、ホテルの冷蔵庫に放りこんだ後に南禅寺あたりを散策するも、紅葉には時期尚早でした。日没後はライトアップ
された永観堂へ。合宿に辿り着いたのは九時過ぎ頃でしょうか。古沢嘉通さんのワイン部屋に直行するも、もう全種目制覇はなくなりましたね、とのお言葉。泡→白→赤のコースはすでに白に入っていました。ワインの味をSF作家に例えると?という趣向に、変わった風味だからラファティ味(どんな味だ)などとの意見も飛び交い(結局、エリスン味に決着)、去年に引き続き楽しい時間を過ごさせていただきました。古沢さん、ご馳走様でした。
今年は企画にも参加。アンサンブルによる海外未訳短編の部屋です。企画がはじまるまでは、加藤隆史さんと、首都圏と地方におけるSFファンの温度差の話など。企画では、東茅子さんの話術に圧倒されつつ、みなさん未訳・既訳あわせて、よく読んでおられるなあと感心。私はどちらも70年代でほぼ止まっている状態なので、まったく口を挟めず聞き入るのみでした。終了後、ワイン部屋に戻ると、すでに撤収後。古沢さんと深山めいさんにご挨拶をして、二時前にホテルに戻りました。めいさんと林哲矢さんにはまたも「らっぱ亭奇譚集」の委託をお願いしてしまい、ありがとうございました。(熟睡している林さんの枕元にお願いのメモをつけた本を放置するという失礼に、メールで早速に心優しきお返事をいただき感謝きわまりないです)
翌日は昼前まで爆睡、四条河原町で買い物の後にぶ々屋でお茶漬けの昼食。八坂神社〜円山公園をぶらつき、鍵善でくず切りとあわ善哉。(泡善哉ってどんなのかと期待してたら、粟善哉でした。注文する前に聞けばよかった) 今年は記憶も飛ばさず宿酔いにもならず、無事に帰徳いたしました。
11/7, 2003
さて、京フェスですね。本日の深夜に京都到着予定。合宿は何時頃から参加できるかまだわかりませんが、二十四本のワインがわたしを待っている〜♪(←こればっかりや)
10/22, 2003
息も絶え絶えにJRS秋季大会を乗り切って、JRS総会の抄録やら科学研究費の申請やら試験問題やらその他諸々の書類の山をばたばたばたっと仕上げて、ほっと一息。まあ、11月末には北米学会が待ちかまえているのですが。
というわけで、京フェス。本会は午前中の"シオドア・スタージョンの世界"のみ参加できそうです。合宿は2-3時間くらいかなあ。古沢嘉通さんのワイン何本飲めるかしら(←懲りてない)。
Iron Tears初版をやっと入手。マイケル・スワンウィックによる序文が付いていました。あと、ネット検索でSFレビュウ誌"Quantum"にラファティが執筆しているらしいとの情報を得て、取り寄せてみると表紙に「Gene Wolfe on R. A. Lafferty」という紛らわしい記載があって、ウルフによるEast of Laughter評。この改稿が先日取り寄せた初版本に掲載されている"Scribbling Giant"とのことで、骨折り損でした。
10/4, 2003
JSAWIはなんとか乗りきりましたが、あいかわらず、切羽詰まってます。来週半ばからはじまるJRS秋季大会でリフレッシャーコースがあたっていまして、準備が...。
京フェスの日程にあわせて、上洛予定。同行者が非SF者なので、どの程度参加できるかは未定ですが、本会の"シオドア・スタージョンの世界"と、古沢嘉通さんのワイン部屋だけでも、と交渉中。
9/8, 2003
京フェス本会企画で、若島正さんと大森望さんによる、"「人間的」SF−シオドア・スタージョンの世界"が予定されています。何とか聞きに行きたいなあ...。
原書リストに、Crank! #4追加。
来週末は淡路でJSAWIのシンポ。準備のために今週後半は夏休をとっているのですが、しばらく休んでいた翻訳の虫が疼きだしてきています。いや、本当に洒落にならないくらい切羽詰まっているんですが。
8/17, 2003
Serpent's EggとEast of Laughterの限定版を入手。いずれも、通常版は定価10.95ポンド(英国にて出版)ですが、限定版は各々、27.5ポンドと35ポンド。前者はGray Ghost: A Reminiscence、後者はThe Story of Little Briar-Rose, A Scholarly Studyとジーン・ウルフによる後書き"Scribbling Giant"を含むのですが、それにしてもこの値段の差は...と思っていました。実際は、造本も異なっていて、カバーは同じながら本自体はいずれも布装で、後者はスリップケース入り。それなりの違いはあるようです。(ちなみに、ラファティ完蒐への道で、amazon.co.jpで入手可能かも、としていましたが、本日検索してみると在庫切れと表示が変わっていました)
なんとか、京フェスに参加して、古沢嘉通さんのワイン部屋でノルマ4本を胃袋に収めるべく、冬にかけての仕事の予定をたててみました。 うーん........。
何か、気が滅入ってきたので、逃避モードに。いつまでたってもコンテンツが完成しない本サイトですが、今後の予定とか。
企画としては、まずバイオグラフィ。インタビューやエッセイを中心に、少年期や戦争経験の作品への影響をまじえて、まとめてみたく思っています。(ああ、でも先にIn a Green Treeシリーズを読まなきゃ)
やりかけて放置してある企画だらけですが、キャラ事典はアップグレードを予定中。錯綜するキャラをエクセルに入力して整理しようと思っているものの、いつになることやら。サンダリーオティスのレビュウも放ったらかしだし。一周忌に追悼企画第三弾もやりたかったんですけどねえ。
宇宙舟歌の出版決定の嬉しいニュースがあれば、九百人のお祖母さんがまさかの目録落ち、とまあいろいろあるわけで。復刊ドットコムのラファティ特集では、イースターワインに到着が41票と、じわじわ票をのばしてきています。ウェブ古書店では二万円近い値をつけているところもあり、そろそろ復刊されてもいいように思うのですが。
8/1, 2003
作品リストを、刊行年代順に並べ替えたものをアップしました。長編・中短編集・その他と短編・詩篇・エッセイ・インタビューです。
7/30, 2003
と言うわけで、The Reefs of Earth再刊を購入。原書リストに追加しました。恐るべき子供たち再録のBest Detective Stories of the Year, 1972 26th Annual Collectionも入手。ちなみにタイトルは引用符(" ")つきの、"Enfants Terribles"でした。それから、Paul Walkerによるインタビューが収録された、Alien Critic #6も入手。名前の由来や生年月日などについても語っています。詳しくは後日。
その他、リストやリンク等をちょこちょこと手直し。
サンリオSF文庫の書影付き完全リストが素晴らしい銀の知識人たちで、未刊行作品のリストがアップされています。これは、私も以前に作成しようと思ったのですが、未入手本がけっこうあるため断念したことがあり、有り難い企画です。
7/14, 2003
原書リストに追加(Wildside Pressの再刊二冊)。これで再刊も完蒐かな...あっ、The Reefs of Earthがまだだった。
Yahoo!のラファティ・フォーラムから。ラファティの未刊行作についての質問があり、元Crank!のBryan Cholfinが幾つか興味あるコメントをしていました。まず、ふたつの未完のシリーズ(注:"In a Green Tree"と"Coscuin Chronicles"と思われる)は完成している。イルカ小説"Fair Hills of Ocean, Oh"は「イルカ探偵小説」とのことだが、Cholfinの意見ではいまイチ(weak)だそう。眼を通した中では、"Esteban"が最も良いだろう、と。確かに、スピンオフしたTongues of the Matagordaは佳作である。短編については(題名は失念としているが)なんじゃこりゃっていう非道いのも出版されているという意見で、知る限りは全短編が出版されており、少なくともエージェントの手持ちはゼロとのことだそう。ラファティの原稿については、タルサ大学のマクファーリン図書館に集められているのだが、そこのリスト(おそらく、これ)に未刊行作は無いとのコメント。だが、ここのリストには謎の作品"Last Laugh"が含まれているのだ。「 "Last Laugh."ccTMs, 13p.」AMsは自筆稿(Autographed Manuscripts)だから、おそらくTMsはTypewritten Manuscriptsで、ccはカーボンコピーだろうかと思う。(このあたり、手持ちの辞書やweb検索でもはっきりとはわからなかったが)気になるので、フォーラムに"Last Laugh"について知りませんか、との投稿をするも今のところ反応はなし。
アンサンブルの会誌VWBにエムシュの短編集"Report to the Men's Club"とネビュラ受賞短編"Creature"のレビュウを寄稿させていただく。次号には長編"The Mount"のレビュウを予定しているが、今年は本業が超多忙なため、SF系の活動はそれで限界となりそう。「らっぱ亭奇譚集」の翻訳は合間でやっていこうと思ってますが、年内刊行は多分無理でしょう。京フェス参加も、北米学会の準備ともろかぶりでかなりやばそうです。せめて、古沢嘉通さんのワイン部屋だけでも...(←って去年はずっとそこで記憶とばすまで飲んで居座っていただけじゃねーか!)。
5/24, 2003
未訳短編内容紹介にLove Affair with Ten Thousand Springsを追加。これでアルゴ神話シリーズの数編を除いて、ラファティの短編は完読です。
原書リストに追加(Odyssey, Fantasy Book, Annals of Klepsis再販)。
5/3, 2003
ラファティ完蒐への道に、「さらなるマニアへの道」として若干の追記。
原書リストにHands of the Man収録のInfinity oneを追加。古沢嘉通さんに「マニア気質」と評されたこともあり、くすぶっていた収集熱が再燃してきました。とりあえず、買い残していたアンソロジーを幾つか検索注文したのが、ぼつぼつ届きつつあります。
5/2, 2003
ラファティ完蒐への道で、Grasshoppers & Wild Honey, chap. 1-2を「激レア」と書いていたのですが、牧眞司さんからメールにてまだ版元に在庫があることを教えていただく。SF専門メイルオーダー書店なのでAmazonでは扱っていないかもとのこと。訂正させていただきます。牧さん、有り難うございました。ちなみに、検索してみるとドラム社(Chris Drumm/Chris Drumm Books)のサイトがあり、最終更新3/30/99なので現時点での状況は不明ながら、Four StoriesとThe Man Who Made Models and Other Stories以外は総て在庫ありと記載されています。定価が$1-3.5$で、Grasshoppers & Wild Honey, chap. 1-2のみ$4.5。トライしてみる価値は十分にありそうですね。(サイトトップにe-mailアドレスがあり、注文受付ますとのコメントがついています)
4/29, 2003
久しぶりの新企画ラファティ完蒐への道です。そもそもは、古沢嘉通さんが掲示板に書き込まれた『(前略)しかし、ラファティの単行本を「ほぼ」完蒐している人間は、日本に何人いるんだろうね』とのコメントを眼にしたところから。古沢さん、牧眞司さんといったところが思い浮かびますが、大森望さんや柳下毅一郎さん、若島正さんあたりもけっこう揃えていそうな気がします(←あくまで推定)。まあ、皆さん原書買いのプロばかりですが、いわゆる「一般の方」の中にも、もしかしたら原文でもいいからラファティを読みたい!って奇特な方がおいでるかもしれないと思い、本企画を思いつきました。さあ、あなたもラファティ完蒐をめざしてみませんか?
3/26, 2003
DeepSouthCon(南部アメリカのファンダムが開催するSF大会)'79(ニューオリンズにて開催)にてラファティは「つぎの岩につづく」でフェニックス賞を受賞したのですが、At the Sleepy Sailor: A Tribute to R. A. Laffertyというブックレットが記念刊行されました。このタイトルはSpace Chanteyからで、Vaughn Bodeによるキャプテン・ロードシュトラムのイラストもあります。ラファティ・キャラが愉しげに集う酒場の表紙絵はDany Frolichの手になるもの。内容は、ラファティ作品としては短編Rainy Day in Halicarnassusの他、A Poem on Himselfという五行詩とHow I wrote "Continued on Next Rock"という受賞エッセイ。Robert Whitakerによるインタビュー(完全版がCranky Old Man from Tulsaに収録)、ポール・アンダースンとハーラン・エリスンの短いエッセイ、Apocalypses書評、作品リストなど。(エリスンは「せまい谷」にまいってしまったとのこと) 刊行予定として挙げられたSnake in His Bosom(Frights収録予定との記載、実際にはOh Tell Me Will It Freeze Tonightが収録)は没をくらったとのことでしょうか。上記について、作品リストに若干の追加をしました。
Whitakerによるインタビューは、Cranky Old Man from Tulsaの記載ではDeepSouthConのプログラムに掲載とありました。(プログラムは未入手のため、確実ではありませんが)、これはこのブックレットのことだと考えられます。入手するまでは、At the Sleepy Sailorが"A Tribute to R. A. Lafferty"という副題のついた「まるごとラファティ本」だとは思ってもいませんでした。一次資料にあたることの重要性をあらためて認識した次第です。
3/18, 2003
Rqさんのベスト3を追加(集計外)。「断崖が笑った」「レインバード」「七日間の恐怖」です。コメントはこちら。
3/14, 2003
予想通りビール腹になって、ドイツ〜オーストリアより帰国。なんとかサンダリーオティスも読了し、近々レビュウを更新できそうです。ウィーン滞在ということで持っていったムジカ・マキーナも一気読み。たいそう面白うございました。でも、フランキーには是非ともハリウッドへ行って欲しかったなあ。
「尿管の画像診断」とか、「正常境界域の骨X線アトラス」とか、「膵臓の稀な腫瘍と嚢胞性病変」とか、またしてもマニアックな本を数冊買い込む。ドイツの出版社直売本が安いからと何冊も買ってトランクに詰め込んだのが失敗で、重量超過で三万円強もの追加請求を。手荷物への詰め替えもだめとのことで、泣く泣く支払うはめに。ううう...。
まあ、発表は例のごとく質疑応答まではなんとかなったのですが..。フランス人の座長も親切にフォローしてくれたのですが...。ということで、その日はワインをひと瓶空けてしまいました。結局、約一週間でワイン四瓶とビール十数杯くらい飲んだ勘定に。殊能センセーがときどき作られるカレーヴルストとビールの立ち食いなんかもしてて、ベルトの穴ふたつ分成長しました。当分は節酒とダイエットに励まねば、と思いつつ、古沢嘉通さんのワイン在庫消化に協力したいなあ。(←懲りてない)
3/4, 2003
内田昌之さんも、とりこさんの「ラファティがお好きなら」で「いちご実験室」を購入されたと知り、嬉しくなってしまいました。ラファティ風かどうかはともかくも、お勧めできる一冊であることは間違いないところ。内田さんの、『紹介文に「ラファティ」という単語をまぎれこませるだけで、その本の売上は自動的に百冊くらい増えるわけですね。今度のソウヤーはラファティっぽいぞ!(あ、予定がなかった……)』に爆笑。
明後日から欧州(オーストリア〜ドイツ)へ学会出張。ポスター展示のみの予定が、口頭発表もする羽目になり、ちょっと憂鬱。以前、「肝癌のMRI画像における金属イオンの影響」なんてマニアックな発表をした時に、「ぺーらぺらぺら、ぐらいこなんとか、ぺらぺら」と質問されて、なんだ、ぐらいこって??と凍り付いたことを想い出す。アメリカ人だったら、こちらがもごもご言ってると肩をすくめて「おーけーさんきゅー」とすぐに打ちきられるところ(←若干の偏見あり)、律儀なドイツ人(たぶん)は三回も質問を繰り返してくれて、そこでやっと「ぐらいこじぇん」がいわゆる「グリコーゲン」と理解できてなんとか答えた、というやな想い出が甦ってくる。そういえば、こないだの英国の学会では、日本人演者がやはり質問が聞き取れず立ちすくんでいたところ、見かねた議長が「だれか、会場の日本人の方、助けてあげてください」と。当然、私は聞こえない振りをしていたのだが、どこかの親切な女医さん(おそらく)が丁寧に訳してあげて、一安心と思いきや、演者はいきなり明瞭な日本語で「今後、症例を重ねて検討したいと思います」と言いきって壇を降りた。いいのか? 真似しても、いいのかなあ。(←いけません) 私と英語のつらい闘いの一部は、十年ほど前に大学祭パンフに寄稿したエッセイもご参照を。
話題が大幅に逸れてしまったが、何を言いたいかといえば、このところ開店休業中の本サイトのコンテンツが、久しぶりに更新できるかもということ。海外出張の往復の航路は、原書をじっくり読める久々のチャンス。忘却の彼方に埋もれた読みかけのサンダリーオティスを今度こそ、と思っています。
航路といえば、いまさらながら読了(←強引)。ソープオペラタッチの前半は、リアルトホテルでっぽくて好み。翻訳が出そうもないベルウェザーも読んでみたくなる。後半は、ふと筒井康隆が書いたら面白いんじゃないかって思ったが、現実サイドがめたくたに浸食されそうな気も。(そうなったら、ユービックになるような。)
訳者あとがきで、"Distant Call"に触れられていましたが、おお、なんとこの短編集未収録・未訳の作品が手元にあるではないですか。ラファティのやはり短編集未収録・未訳作"In Deepest Glass"収録のBerkley Showcase vol.4。早速読んでみようっと。(←そんな暇あるのか?)
2/18, 2003
原書リストに追加(The Pani Planet収録のWorlds of Tomorrow誌'65/1)。「パニの星」の英文テキストをやっと入手できた次第。ついでに、アーサー・ポージスの"The Mirror and other strange reflections"も購入。あの「一ドル99セント」も収録されている五百冊限定本(Ash-Tree Press)。
エムシュのCreature (F&SF, Nov01)はネビュラ短編部門ノミネート作に決定されましたね。頑張れ、スーパーおばあちゃま! (そういえば、P・K・ディック記念賞ノミネートの短編集"Report to the Men's Club"の冒頭を飾る"Grandma"は、かつてスーパーガールだったおばあちゃんと暮らす孫娘の話。老いてなお元気に大活躍するスーパーおばあちゃんって話じゃぜんぜんないところが、いかにもエムシュらしいのですが)
2/6, 2003
YAHOO!のフォーラムで、ラファティ談話室が開設されました。英語のみ対応で、現在のところ10名が参加。まだ手探り状態ですが、いずれ濃い話題になることを期待しています。
1/17, 2003
伊藤典夫さんから年賀状をいただき、今年の初感激。SFマガジンの塩澤編集長に御仲介いただいて「らっぱ亭奇譚集」を贈らせていただいた御返事です。塩澤さん、有り難うございました。
1/11, 2003
と言うわけで、久々に未訳短編内容紹介に一編追加。Hound Dog's Earです。
ネビュラ賞のpreliminary Ballotに、短編部門でキャロル・エムシュウィラーのCreature (F&SF, Nov01)がノミネート。昨年出版の長編"The Mount"と短編集"Report to the Men's Club"はいずれもP・K・ディック記念賞にノミネートと、1921年生まれですから80歳を越えてなお元気に活躍しているわけで、いやもう凄いひとですね。
気になっていた山名沢湖さんの「いちご実験室」ですが、とりこさんの「竹本泉とラファティがお好きなら、レッツトライ」で購入決意。今日、買いにいこう。そういえば、スーガク者の河本さんが「ラマヌジャンはラファティだ」と書かれているのをみて、数式だらけの(泣)ラマヌジャン書簡集(シュプリンガー・フェアラーク東京刊・4700!円)も反射的に注文してしまったなあ...。
1/8, 2003
遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
やっとのことで、Hound Dog's Earを読了。大判とはいえ、たった13ページの作品に何週間かかっていたのやら。ファンジン(と思う)Starange Plasmaに掲載されたためか、メタっぽいファン・サービス作品で、あの"Space Chantey"の連中が30年ぶりに帰ってきた!って話。"Space Chantey"を読んでないひとには、何が何やらわからないと思うが、両方読んでいるひとって本国でもどれだけいるのやら。"Space Chantey"邦訳のときには是非とも巻末に追加すべきでしょう。(レビュウは後ほど)さあ、残るは"Love Affair with Ten Thousand Springs"。どなたか、お持ちでありませんか?(←しつこく、他力本願)。
復刊ドットコムのラファティ特集、順調に票をのばしていますね。そのあたりと、林哲矢さんのコンテンツなどを中心に、ラファティ・アンテナを作成。(なぜか拙サイトの更新履歴(このページ)は、なかなか更新を拾ってもらえないけど)