「はい、どうも。らっぱ亭とおるです。」
「ているです。」
「さて、今回は宇宙舟歌の二回目や。快楽の星ロトファージから無事脱出したロードシュトラム一行やったけど、同朋キャプテン・パケットの宇宙艇が故障してしまい、どっか修理でける星探さなあかんようなった。ところが、近くにあるんは未開の惑星、ラモスだけやった。」
「住人がヒゲもじゃでサッカーばっかしやっとるんやな。」
「べたなネタはやめんかい。この星に住んどるんはグロル・トロル族っちゅう、野蛮な巨人族や。ところが、こいつらの喋る言葉は地球の古代北欧語とアイスランド語が混ざったやつや。」
「こいつやな。」
「そうや。こいつがトロル族の長、ビョルンや。ロードシュトラム一行に、ま、朝飯でも食おかって友好的に声かけてくる。」
「ええおっさんやな。」
「食うた後は、楽しく死ぬまで殺し合おかっていうんや。」
「やなおっさんやな。」
「当然、ロードシュトラムは、いや早う宇宙艇直さなあかんからって断ろうとするんやけど、ビョルンは、わしの息子が機械いじり得意やからまかせとけって言う。ところが、この息子の工具は石のハンマーだけや。こんなんで直せるかいって文句言うたら、いけるいけるっ!丁寧な仕事にはほれっ、てなめし革でカバーした石のハンマーを見せるんや。」
「職人の技ってやつやな。」
「あほかい。ハンマーで精密機械が直せるかってことや。」
「そやけど、パタリロはいつもハンマーでトンテンカンって精密機械を造っとるぞ。」
「なんでここでマンガの話なるねん。まあ、このトロル族、一見野蛮やけど、独特の科学文明をもっとることが判ってくるんや。例えば、これや。」
「空飛ぶ石盤かいな。魔法かなんかで動くんか?」
「いや、進んだ科学のたまものやそうや。人類は金属文明と電子工学の袋小路に入り込んでもて、進んだ科学が理解できんのやって、ビョルンの息子に説教くろてまう。」
「おお、ハードSFの世界やな。ほな、なんでこのでっかい石盤は飛べるんや?」
「静電気の斥力やそうや。」
「なんや、それ。プラスチックの下敷きこすったら、頭の毛が逆立つやつかいな。」
「そうそう。フェルトの靴履いて、石盤に乗っかって足を擦ったら、浮き上がるって寸法や。一行の科学者ブランブルは、空中を滑るように進む石盤の上で興奮して叫ぶ。魔法のカーペットや!むかしのアラブではほんまにこいつに乗っとったんや。乾いた岩と砂の世界では、こいつが作用するんやってな。ま、最後に、なんでこいつが動くんかはわからへんけどって呟くけどな。」
「ハードSFよりスチームパンクやな。」
「どこがや。それで、一行はトロル族の洞穴住居に招かれるんやが、山の上にあってえらい寒いんや。そこで、太陽はん、おいでって叫んだら、直径3メートルくらいの小ちゃな太陽がほいほいって入ってくる。」
「ペンギン村みたいなとこやな。」
「なんやこいつって訊いたら、そら太陽の息子や。地球の太陽にはおらへんのか?っていわれる。そやけど、ブランブルは科学者らしく分析する。おそらくは小さなアステロイドが特殊な環境下に捕らえられて、燃焼しているもんやろう。音声認識下に作動する機序は不明やけどってな。ま、最後に、やっぱしビョルンの仮説通り、太陽の息子と考えるのが最も適切やろうって言うんやけどな。そんで、この太陽の息子で雄牛を丸ごと炙って宴会となるわけや。」
「うわあ、美味そうやなあ。わても参加したいわ。」
「そやけど、その後は最後のひとりまで続く壮絶な殺し合いが始まるんや。」
「ほな、わては早抜けさせてもろて、先に二次会行っとくわな。」
「あるかいっ。それから、トロル族とロードシュトラム一行の戦闘シーンや。光線銃つかってねらい打ちしようとするんやが、空飛ぶ石盤に乗っとるトロルになかなかあたらへん。そうこうしてたら、石盤で押しつぶされてまう。まあ、いろいろ作戦練って闘っとるうちに、どっちの陣営もばたばた倒れてもて、とうとうビョルンとロードシュトラムの一騎打ちとなるんや。そんで、期限の日没間際に相打ちとなる。」
「一巻の終わりやないか。まだ、何十ページも残っとるのに、どうするんや。」
「ところが、次の朝、爽快に目覚めるわけや。死んだはずの連中もみんな元気に揃うとる。」
「まさか、夢オチやった、言うんやないやろな。」
「さすがにラファティはんにそれはないな。この世界は北欧神話でいうところのヴァルハラやったんや。昼間は死ぬまで闘いぬいて、翌日になったら元気に元通り。また、楽しく戦えるっちゅう寸法や。」
「永遠に闘い続けるちゅうわけか。朝飯だけならつきおうてもええけどなあ。」
「そんで、今日も元気に死ぬまで戦ろかってビョルンを振り切って、一行は脱出しようとするんや。宇宙艇も無事修理完了、まあまわりにいっぱい部品が残ってたけどな。残念そうに見送るビョルンやったけど、ひとつ交換条件つけてきた。わてら戦闘のプロやさかい、評判聞きつけて素人はんがぞくぞくやってきたら迷惑するから、この星であったことは内緒にしといてなってことや。まあ、もひとつおまけにロードシュトラムら一行は、身の毛もよだつ目に遭わされるんやが。」
「なるほど。ほな、ジャイアント馬場とアンドレ・ザ・ジャイアントとブルーザー・ブロディーにアンディ・フグつけて巡業に行ってこうかな。ま、しかし、今回は心温まる話やったな。」
「どこがやっ。」
「ラモスは巨人の星だけに、飛雄馬ニズムにとんどるっちゅうことで。」
「苦しすぎるわっ。」
(この項、つづく)