居住世界シリーズ
[The Humanly Inhabited Universe]
太陽系:ガイア(Gaea)(地球)
EarthまたはEretzとも
プロキシマ星(グリアの太陽)
ケンタウロン・ミクロン(Kentauron-Mikron)(豊穣世界, Bubbles When..., Sindbad the 13th Voyage)
ケンタウロン・ミクロンをひとことで言えば、快適な世界”World of the Amenities”だ。石の耳をもとろけさす、歌う鳥や魚や人びと。ケンタウロンの芳香に満ちた大気は瓶詰めにして輸出されている。ケンタウロンを訪れた画家は、その素晴らしき景色をどうしても画布に写しとることができず、ヒステリーをおこして筆をへし折る始末だ。ケンタウロンの羊歯や葉っぱや蕾はとびっきりの抗鬱剤としてあちこちの惑星で重宝がられているが、これは決して麻薬的な作用があるわけじゃない。ほかにも、頭のよくなる薬や、記憶増進剤も特産品だ。(Sindbad the 13th Voyage)
短編World Abounding(豊穣世界)では思春期の若者におこる”三天使パラドックス”という謎めいた記載がある。短編Bubbles When They Burstでは研究所のグレゴリーが企てた実験への協力先となる。
カミロイ(Camiroi)(カミロイ人の初等教育、カミロイ人の行政組織と慣習, Annals of Klepsis)
知的な惑星。文明はより機械的かつ科学的である。自然観は反復を嫌う性質のため、あらゆる事象が唯一無二であり、ありふれた風景が存在しない。カミロイの公民はあらゆる仕事に適格であり、くじ引きにより十人にひとりは世界大統領を務めることとなる。独特の教育システムを有し、カミロイの十年生(14歳)は世界政府の実習として、未開の惑星を三、四カ月の間統治する(おそらくは、長編Aurelia)。
アストローブ(Astrobe)(パスト・マスター, Annals of Klepsis)
長編パスト・マスターの舞台となる惑星。地球のエリートたちが植民して創りあげた黄金のアストローブは理想世界の夢を実現し、暗躍する機械仕掛けの殺し屋たちが秩序を保っている。都市部ではオットセイに似た現住生物アンセルやプログラム機械人たちが彷徨き、自然界ではエルサレム岩ダヌキがぴょんぴょん跳ねまわり、怪物ヒドラ、獰猛なポルシェパンサーやラザラスライオンが獲物を狙う。
ダハエ(Dahae)(Quiz Ship Loose、Annals of Klepsis)
別名、ペイルダー(Paleder)。居住惑星では最も進んだテクノロジーを有すると言われているが、閉鎖的であり近隣のアストローブやカミロイにも伝播していない。ジョン・チャンセルによれば、謎に包まれた世界とのこと。そのテクノロジーを手にいれるため数々の惑星から来訪者や略奪者が来るらしいが、まだ成功した者はいないのだ。ダハエの文明は高度に完成されており、総てにおいて完全で、優劣が存在しない。これは風景にも適用される。例えば、ダハエには山や丘はみられない。決して切り崩して平坦化した訳じゃなく、低地を盛り上げて惑星の総てを(文字通り)最も高いレベルで均一化したのである。ダハエの完全さは意識されないレベルで達成されており、それ自身は高揚感をもたらさない。ダハエの完全にコントロールされた天候は、地球人が「なんて、いい天気なんだろう!」って感嘆する天候とは別ものである。"最高かつ均一"こそがダハエのモットーであり、優劣も上下も存在しないプラトーに達しているがために、感嘆や高揚感と無縁の状態にあるのだ。これは、地球人からみれば高度な文明下に、あたかも夢遊病者やゾンビーが棲息しているような印象をももたらす。しかし、ダハエもあらゆる文明世界の例に洩れず、秘められた側面、血生臭い怪物性に溢れた未成熟なもうひとつの領域を有しているのだ...。
アルファ星系
スカンディア(Skandia)(千客万来)
ひとなつっこく多産なスカンディア人たちは極端に混みあった状況下に幸せを感じ、地球へと啓蒙にやってきた。不可解な方法で百億を越える人々がいっせいに出現し、彼らに銃器は通用しない(投票で効果を否決したからだと)。
プディブンディア(Pudibundia)(プディブンディアの礼儀正しい人々)
とびきり能率的な惑星。農業は驚異的な生産性を誇る。非常に礼儀正しい住人たちは常に七種類の色つき眼鏡を持ち歩き、決して裸眼でお互いを見つめ合うことはない。一見人類に類似した外見だが、実はカメレオンに似た皮膚構造により容易に外観を変化でき、人類に対する礼儀正しさから出会った人間の姿を模倣しているらしい。なぜか、この惑星の探査から帰ってきて無事でいる宇宙飛行士はいないのだが...。
アナロス(Analos)(蛇の名, Annals of Klepsis)
軽い大気には水中を思わせる光りの揺らぎと影があり、地球の水中植物に類似した植物相と併せて海底を歩く気分にさせられる。ガーゴイルに似た住人は進歩した機械文明を持ち、奇妙な倫理と刺激的な芸術を有し、洗練された語学の達人である。成熟した星アナロスにもはや罪の概念は存在しないのだが...。
プロアヴィタス(Proavitus)(九百人のお祖母さん)
(九百人のお祖母さんでは、大きなアステロイドと紹介された。)贅沢品の交易にもってこいの名産と珍品にあふれた星。ここの華奢な住人たちは両性ともある種の柔和さを備え、自分たちは死なないと言うのだが...。
パラヴァータ(Paravata)(山上の蛙、Annals of Klepsis、In Outraged Stone)
プロアヴィタスの二重星。山岳の世界で、地球の1.5倍の重力と酸素の濃厚な大気を有する。住人は尊者たるローアと愚鈍なオガンタで、かつて活溌であった文明は奇怪な停止状態に陥っている。三重山で猫ライオンのサイネク、熊のリクシーノ、コンドル鷲のシャソス、岩猿または蛙男のベイター・ジェノを仕止めることは、銀河系で最も危険な狩りとされる。(山上の蛙)好戦的なパラヴァータ防衛軍はクレプシスにスパイを送り込み、星間航法の謎を探っている。(Annals of Klepsis)この惑星を訪れ適応した地球人には、オガンタ同様に強靱な肉体性の獲得がなされ、身体の重量を自在に変化させるオガンタの特技も適応した地球人にはそのコツがつかめる。また、オガンタには奇妙なプラズマ球体が所属する。これは、無重量のガス状から非常に重い岩石状まで変化し、あるいは硝子球となってオガンタの豊かな白昼夢を移しとり記録するのだ。(In Outraged Stone)
スコカムチャック(Skokumchuck)(ブリキ缶に乗って, Annals of Klepsis)
シェルニの星。現住生物(シェルニ)はまぎれもないゴブリンであり、人なつっこくあけすけだ。三フィートたらずでいちばん老人でも七歳に満たない。三十年以上遡ったシェルニの遺体はみつからず、シンギング・ピッグ家庭食品カンパニーがいざなうブリキ缶に乗ってその未来もあとわずかだ。
ベータ星系
エンポリオン(Emporion)(Annals of Klepsis)
交易惑星。無法の星
アパテオン(Apateon)(Annals of Klepsis、Pleasures and Palaces)
交易惑星。倫理のない星
クレプシス(Klepsis)(Annals of Klepsis)
長編Annals of Klepsisの舞台となる惑星。海賊惑星。歴史のない星。なお、短編World Abounding(豊穣世界)ではクレプティス(Kleptis)と綴られ、万事につけておそろしく貪欲で情熱的な世界として言及されている。
アフソニア(Aphthonia)(豊穣世界, Annals of Klepsis)
豊穣世界。美しく心地よい大自然の外観を呈し、とほうもなく気前のよい肥沃な世界。特産品ゴルゴスは魔法の動植物ホルモンで成長誘発剤。発情と繁殖と繁栄と終末が急速なテンポで慈悲深い火山の活動を軸に展開する。
ベロータ(Bellota)(スナッフルズ)
大きさとしてはアステロイド級だが、現在もまだ創造中であり記録にあるサイズより遙かに大きいらしい。特異な重力(全周160kmなのに重力は地球の半分)が特徴で、15分おきに雷雨に襲われる。海はなくソーダ水をたたえたいくつかの湖が地表の三分の一を覆う。動植物はふざけた様相を呈し、熊のカリカチュアたるスナッフルズが一頭だけ住んでいる。
アラネア(Aranea)(むかしアラネアで)
通称、蜘蛛のアステロイド。見渡すかぎり金色に輝く蜘蛛の巣に覆われ、十二脚蜘蛛族が支配している。
小惑星(アステロイド)
ルーレッテンヴェルト(Roulettenwelt)(Space Chantey)
カジノの星
ケントロン・コスモン(Kentron-Kosmon)(Space Chantey)
世界の中心(らしい)一周5キロのちっぽけな小惑星。一日は一標準分に相当し、30秒毎に昼夜が交代する。
ヴェネナトス(Venenatus)(ゴールデン・トラバント)
伝説の黄金の小惑星、ゴールデン・トラバント(Golden Trabant)。歪な先細りの丸太ん棒みたいな形で、長径2500ヤード、短径1500ヤード、体積2立方マイルたらず。
ヒポダミア(Hippodamia)(Pig in a Pokey)
6マイルのちっぽけなアステロイド。平原に、径60フィートの謎のドームがひとつあるのみ。
その他
ホーキーの星(Hokey Planet)(Smoe and the Implicit Clay, 究極の被造物)
粘土細工のアニメーションみたいな世界にみえないインディアンたちとバッファローの群れがはびこっている。(Smoe and the Implicit Clay)東大陸の小さな町に住む娘が喋る声はほんとにひどいとの事。(究極の被造物)
グロルの星(Groll's Planet)(究極の被造物)
銀河の突き当たりまで行って左に曲がったところにある、ちっぽけで荒れ果てた辺境の惑星。生物学者の理解を超えた様相を呈している。住人は変なお魚族(Queer Fish)。
ファー・ターシシュ(Far Turshish)(Annals of Klepsis)
何処にあるのか誰も知らない伝説の惑星。ここの短尾人たちは星間航法の謎を握っているらしい。
どろぼう熊の惑星(Thieving Bear Planet)(どろぼう熊の惑星)
気候はほぼ均一に理想的、環境は平穏で生態学的バランスがとれ、自然はうっとり見とれるほど美しいが、(およそありえないほど愉快に)あらゆるものの調子が狂ってしまう惑星。”くすくす笑いの化物”と呼ばれるどろぼう熊(Ursus furtificus)がどこやらかしに進入してあらゆるものを盗んでいく。
ロトファージ(Lotophage)(Space Chantey)[ref]
永遠の午後の星、美しい人間しか受け入れない快楽の惑星。希薄な純酸素の大気と低重力と美しいhouriたちが訪れる者たちを倦怠と退廃の世界へといざなう。
ラモス(Lamos)(Space Chantey)[ref]
巨人トロル族が住む終わりなき戦闘のヴァルハラ。訪問者たちには豪快な祝宴の後に愉快で血生臭い戦闘が待っている。
サイレネカ(Sireneca)(Space Chantey)[ref]
海の惑星。たったひとつの小さな島の真ん中には生きた山があって、頂では唄うサイレンたちが死を招く。
ポリフェミア(Polyphemia)(Space Chantey)[ref]
緑なす草原の星。牧歌的な惑星で”羊”が飼われているのだが、この羊たちは二本足で歩いて人語を解するのだ...。(実はアミルスタン原産だったりして)
アエアエア(Aeaea)(Space Chantey)
魔女アエアエアの星。唄の魔力で人間を動物に変身させ家来にする。
イエロー・ドッグ(Yellow Dog)(Space Chantey)
ワールド・ライセンスを剥奪された惑星で、うさんくさい住人たちが住みついている。グィムバルデ・タウン(Guimbarde Town)には不気味な木造の百階建て以上のビルがたくさんあって、そのひとつには宇宙一閉鎖的なクラブがあるという。エレベーターもなくひたすら階段を登るしかない。というのも、空中からエアカーで近づくと怪鳥メガガスタ(Megagaster)にひと飲みにされるのだ。
ロビンソンネード(Robinsonnade)(The Forty-Seventh Island)
セルカーク(Selkirk)の太陽を巡る小惑星は47個、"小惑星の島々(Asteroid Islands of Selkirk)"と呼ばれている。これらは、Nietzsche(ニーチェ), Hegel(ヘーゲル), Darwin(ダーウィン) Huxley(ハクスレー)など高名な思想家や芸術家、Free Choice, Stamp the Rooster, Relatively, Situation Ethicsなどの概念やコンセプトに準じて名付けられている。Yellow Dog(臆病者の意も)なんてのもあるが、上記のSpace Chanteyに出てきた惑星との関連は不明。そのひとつ、ロビンソンネードは不毛な小惑星で、かのジョン・チャンセルをして"最も不毛で、交易に値するものはない"と評された。そのため、この星に商売や略奪を目的として訪れる者はいないのだが、その代わりといってはなんだが実体を持った幻の人びとや不思議な動物たちが跳梁跋扈している。また、ロビンソンネードは"透き通った雲"に覆われ、銀鱗の龍とも形容される。この雲は水晶のごとく透過性と拡大能力と鏡面性を併せ持っており、他の46の惑星はあたかも庭園を照らす賑やかな提灯(Japanese lanterns)のように上空に認められるのだ。そのうちのふたつの惑星、"Dog Robber"と"Truman"の間をみつめると、将来の結婚相手の顔が浮かび上がるという伝説もあったりする。(しかし、植民されて二十年しかたってない筈なんだけど...。)